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最初の言葉

 夜更け。


 亮は、コンビニの帰り道を歩いていた。


 理由はない。

 ただ、家にいると落ち着かなかった。


 街灯の下。

 アスファルトの上。


 いつもと変わらない夜。


 なのに。


 「……は?」


 足が、止まった。


 胸の奥で、何かが“咬み合った”感覚があった。


 不快ではない。

 むしろ——楽だ。


 ——そうだ。


 ——お前は、間違ってない。


 声ではない。


 頭の中に浮かんだ考え。

 ずっと前から、自分が思っていたことの延長。


 「……だよな」


 亮は、独り言のように呟いた。


 ——殴ってこなかったのは、

 ——強いからじゃない。


 ——逃げてるだけだ。


 その言葉は、不思議としっくりきた。


 胸の奥の、ざらつきが、少しだけ滑らかになる。


 ——お前は、普通だ。


 ——お前の感覚は、正しい。


 ——あいつが、異常なんだ。


 亮は、知らず知らずのうちに、口角を上げていた。


 「……だろ?」


 誰に向けた言葉でもない。


 だが、肯定される感覚が、確かにあった。


 ——怖かったんだろ。


 ——理解できないものが。


 ——だから、無視した。


 ——それだけだ。


 亮は、足を進める。


 夜の空気が、少しだけ軽く感じられた。


 怒りは消えない。

 だが、形を変えた。


 「……次は」


 声が、低くなる。


 ——次は、違う。


 ——今度は、お前が立つ番だ。


 そこまで考えて、亮はふと首を振った。


 「……何考えてんだ、俺」


 自嘲気味に笑って、それを振り払う。


 その背後。


 街灯の影と影の間で、何かが、静かに“馴染んだ”。


 まだ、欲望は煽らない。


 ただ、正当化だけを与えた。


 それで十分だった。

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