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想定内の回収
赤色灯が、近づいてくる。
今度は、はっきりと。
パトカーの音だ。
恒一は空を見上げた。
――少し早い。
突風。
川辺での騒ぎ。
理由はいくらでもある。
逃げる理由は、ない。
懐に手を入れ、印も符も紙もすべて奥に収める。
その場に留まった。
パトカーのライトが、彼を照らし出す。
「君、ちょっといいかな」
落ち着いたが警戒を含んだ声。
恒一は頷いた。
「こんな時間に、何をしてた?」
少し考える。
説明はできない。
誤魔化す必要もない。
「調査です」
間。
「……年はいくつ?」
「十五です」
空気が、一段変わった。
「学生だろ。こんな時間に一人で、ここで何をしてる」
正論だ。
恒一は反論しない。
「補導だな」
その言葉に、恒一は小さく息を吐いた。
想定内だ。
むしろ、遅かったくらいだ。
「分かりました」
抵抗もなく、指示に従う。
パトカーの後部座席に乗せられ、ドアが閉まる。
赤色灯が、再び回り始めた。
夜は、ようやく一区切りを迎えた。
――あとは、朝を待つだけだ。




