その17
リジーはそれでも気丈に振る舞った。
登録されているサミーの携帯に電話をかけてみた。
コール音がなるけど電話には誰も出ない。
「お願い。電話に出て!」
願いは聞き届けられることはなかった。
シュナイダーはすぐに行動に出た。
イヴァンと共に動いたのだ。その間リジーはホテルで待機。
それが1番だった。
部屋から出る2人を見ているものが影でいたのは誰も知らない。
リジーは部屋の中をウロウロとしていた。
だから部屋のすぐ前に謎の人間がきていた事など気づくはずもなく、でも何かを感じて歩みを止めるとドアの小さな窓から外を眺めようとした。すると知らない人間の目とあった。
「ひーっ?!何?今の…。」
再度小窓から眺めてももう見える場所にはいなかった。
リジーは直ぐにシュナイダーの携帯に電話をかけた。
今のこの現状、このままでいいのか分からない。
私も狙われているのはわかってはいるけど、まさかホテルの部屋の前にいるなんてはずがないもの。
誰にも部屋番号、教えてないし。
リジーは部屋に設置されている電話に手をつけた。
何度目かのコール音後、受付の人間が出た。
外に電話をかけたい旨を話すとすぐに外線にしてくれた。
シュナイダーの番号を震える手が押し続ける。
そしてつながったと同時にドアをガチャガチャする音が聞こえ、受話器を持ってドアにチェーンをかけに行った。
すんでのところでドアが数センチ以上開くことはなかったのだが、手が中に入ってきて鍵を外そうとする。
その時シュナイダーに電話がつながった。
「シュナイダー!今この部屋の前に誰かいるの。鍵を開けようとしてるわ。どうしたら…。」
「何だって?わかったすぐ向かうよ。今まだ一階にいるからどうにか時間を稼いでくれ。受話器はそのままにしてくれ。」
「分かったわ。」
リジーはそう言うと受話器をそばに置いて、何か武器になるものはないかと探すと、ちょうど玄関に傘が置いてあったので手にして振り下ろした。
「うぎゃ!」
そう言って手を引っ込めたのは男性のようだ。
男の悲鳴が聞こえたから…。
リジーは慌ててドアを閉めた。
【ガチャガチャ。】
ドアを開けようと男がドアノブを回している。
リジーは気が気じゃなかった。
奴らがここまでやって来たと思ったから。
そこにシュナイダー達がやって来てドアの側で何かぶつかり合う音が聞こえた。
何かあったのかもと不安になりながらドアの小窓から外の様子を見ようと覗き込んだが、視界には何も入っては来なかった。
しばらくして静かになるとピンポーンとチャイムが鳴った。
小窓から覗くとそこにはシュナイダーの姿が。
慌ててドアを開けるとシュナイダーのそばにやって来た。しかし知らない男がいるのを見ると体が固まった。
「この人は誰?」
「こいつか?こいつはただのストーカーさ。」
「ストーカー?誰の?」
「君だよ。リジー。」
「え?私の?」
「ああそうさ。どうやら数日前から君の事を見ていたようだ。」
「マイハニー!こいつらはなんだい?僕らの仲を引き裂く悪魔か?」
「あなた誰?」
「もう忘れたのかい?あの日の事を。」
「あの日の事?」
「僕らは運命的な出会いをしたんだよ?あの展示会で。そして一目で僕は君に恋をしたんだ。君もだろ?だってあんなに必死に自分の作品を僕に見せてくれたじゃないか。だから僕らは出会うべくしてであったんだよ。」
「ちょっと何言ってるのか分からないわ。私はただ作品を買ってもらおうと説明してただけ。他のことなんか何もないわ。あなたおかしいんじゃないの?」
「な、何言ってるんだい?マイハニー。」
「私はあなたのハニーじゃないわ。シュナイダー、この人警察に連絡できる?」
「ああ、できるよ。すぐに連絡して来させよう。」
「何言ってるんだ!僕とハニーの中を裂く気か!」
「何度も言うけど私はあなたのことこれっぽっちも知らないわ。迷惑よ!」
「10分ほどしたら仲間が来ることになった。それまではこいつを見張っとかないとな。イヴァン!」
「分かってるよ。見張り番だね。それくらい朝飯前さ。」
「なら頼むぞ。俺は例のやつらを探りに行くからな。」
「なっ、何なんだよ。僕はハニーと一緒になるために来たってのに。何なんだよこれは…。」
「君は彼女とは全く関係のない人だったんだね。よかったね〜。これで心置きなく留置所に行けるね。」
イヴァンは楽しそうにクスクスと笑っている。でもね、目が笑ってないの。
初めて気づいたわ。
「イヴァン、シュナイダーは1人で大丈夫かしら?」
「ああ、彼なら大丈夫さ。僕みたいなヘマはしない。」
「あなたがヘマするの?」
「ああ、そうだよ。これでも繊細な人間なんだけどな〜。っと、逃げるなよ。」
イヴァンは両手でしっかりとストーカーを握りしめていた。しばらくするとシュナイダーが言っていた通り警官が3人やってきた。
2人は両側からストーカーを挟み込み、もう1人はイヴァンから状況を確認している。




