その1
俺はずっと見ていた女性がいた。
彼女はいつも1人で本を読んでいる。
木陰の小さなベンチで。
時々嬉しそうな顔をしているところを見ると楽しい本或いは恋愛ものでも読んでいるのだろうと想像出来る。
近寄りたいが、邪魔をする気にはなれずにただ遠くから眺めているだけの日々だった。そんな日常が変わったのは今からちょうど一週間前のこと。
いつものようにベンチに腰掛けてるのを見ると誰が彼女に声をかけている。
彼女は途端に顔色を変え、その場から足早に立って走っていくではないか。
そんな彼女の後ろ姿を見てつい追いかけてしまった。
今は任務の最中だと言うのに。
俺はシュナイダー。
仕事は刑事だ。
相棒も今は任務の最中だ。
任務とは身辺警護。
SPである。
「おい、シュナイダー!任務中にどこにいくんだ?」
「悪い。野暮用ができた。他のやつを護衛につける。だがすぐ戻る。」
それだけ言ってその場を離れた。本来はやってはいけないことだ。
警護対象から離れる事は許されないが、頭から離れないこの感情がなんなのかはまだわからなかった。
だが1つだけ言えるのは彼女のことが気になるという事。
本来の自分は私情を挟むことなどしない。
それだけ仕事に誇りを持っているのだ。
だが今回だけは違った。
いつもみる彼女の事が気になって仕方がなかったのだ。
彼女の後を追いかけてやってきたのは小さな駅だった。
人もまばらだ。
だが、例の男がいた。
彼女はその男を無視して駅構内へと入っていく。
俺も後に続いた。
どこへいくのだろうか?
だが彼女はベンチに腰掛けて動こうとはしない。
男はその彼女のそばまで来るとニヤニヤしながら近寄る。彼女は悲鳴をあげた。
俺はとっさに彼女の元へと走り、男を後ろから羽交い締めにした。叫びを聞きつけて駅員もやって来る。
「どうかされましたか?」
「俺も今来たところだからな。彼女の悲鳴を聞いた時、近くにこいつがいたから捕まえた。」
「そうでしたか。であなたは彼女とは知り合いですか?」
「いや、知ってはいるが素性は知らない。」
そう答えると駅員は疑ってかかった。
だが、自分はSPであると答えると疑いは晴れたようだ。彼女のSPと勘違いしてくれたようなので、そのまま勘違いをさせておくことにした。




