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ワイルドギース  作者: 黄昏のオメガ
第1章 傭兵軍団
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第17話 闇のオークション

翌日…。


バンゲールホテル

正面玄関前



「随分デカイ宿だなぁ~。」


リックは軍用輸送車アルマディロの運転席から見上げながら言った。ホテルなんだがどっちでもいいだろう。


「それもそうよ、200年近い老舗の宿だもん。」


隣に座るアリシアが双眼鏡を見ながら言った。荷台にはラルクを含めた7人が乗っていた。レズンが荷台の武器ケースの上にホテルの見取り図を出している。


「今あたしたちが居るのはここ、ホテルの裏口に行くにはこの正面玄関の中を入らなくちゃいけないのよ。」


「警備はどのくらいだろうか?」


「そうねぇ…昼間は一般の警備員だけど夜は重武装した傭兵が裏口を固めているわ。馬車も同じく。」


「このトラックじゃ中に入ることができないな。どうするんだレズン?」


ラルクが地図を見ながら言った。


「ふふん、それは問題ないわ。アリシア!」


レズンが運転席にいるアリシアを呼んだ。アリシアは運転席の荷台の小窓から顔を覗かせた。


「何?」


レズンは笑顔で。


「貴女のスキルを活かさせてもらうわよ。」


「え?」


アリシアは何だろうと疑問に思った。私のスキルを活かす?何だか嫌な予感がする気がしてきた。






その夜。



夜のラビア王国は夜景が美しい街でもある。中でもムアグアイ港は200万ルドの価値が有るほど幻想的な風景が広がる。その一望を見る事が出来るのがこのバンゲールホテルだ。


今日も多くの客がホテルには出入りしていた。その裏口には別の目的で来た客達がいた。


「何で私がこんなことを?」


胸元を強調した黒いドレスを着てアリシアは少し困った。男が見たら一発でノックアウトだろう。それとは別にレズン、ターニャの二人は商人風の服を着ている。


「似合ってるじゃないアリシア。あたしが男だったら押し倒してる所よ。」


軽く親父発言のレズン。


「似合っていますよアリシアさん。猫人族の女性らしさがUPです。」


ターニャは素直に褒めてくれた。アリシアは内心ちょっと嬉しかった。それに反応してかアリシアの黒い尻尾が揺れた。


「それじゃステップ1ね。さっきも話したけど貴女はとある貴族の女性として中に入ってもらうわ。」


「貴族の女性?」


「ナヒブーンの奴等には貴女はあたしの紹介で奴隷を買いに来た客として言ってある。ほら、これが招待状よ。」


レズンが肩に下げたバックから赤い羊皮紙を出した。まるで血に染まったように赤黒く、不気味な手形が押されていた。


「悪趣味…。」


アリシアは招待状を気味悪く見た。招待状の手形の下には名前が書いてある。マーリ・レバーと書かれていた。


「マーリ?この名前は何かしらレズン。」


「貴女の偽名よ。会場ではその名前を使いなさい。」


「わかったわ。貴女達はどうするの?」


「あたしらは入口までは一緒に付いていけるわ。でも会場は客と奴隷商人は別々の席になってしまうの。」


「そうなの?」


「でも安心して。中にはもう一人潜入しているから大丈夫だから。」


「もう一人潜入してるの?誰?」


「それは秘密ですよアリシアさん。会ってからの楽しみです。」


ターニャが言ったがアリシアは疑問に思ったが今は少女の救出が優先しなければならない。一刻も早く少女の安否を確認しないと。


「それじゃ行きますか。」


三人は裏口に向けて歩き始めた。裏口の前には二人の傭兵がいた。警戒しているのか腰に付けた剣に手をかけている。


「用件は?」


傭兵の一人がレズンに聞いた。


「今日はお客さんはつれてきた。支配人は?」


「申し訳ありませんが、予約のない方はお断りしています。またの日に予約…。」


傭兵が言いかけてる途中で裏口の扉が開いた。少し太った犬族の中年が出てきた。


「馬鹿者!この方はVIPだぞ!直ぐにお通ししろ!」


傭兵は驚き態度を変えて横に下がった。中年の男はレズンを見ると謝罪した。


「申し訳ありませんレズン様。」


「いいわ、支配人は居るの?」


「もちろんです。支配人は会場で他のお客様と商談中です。おや?そちらの猫人の女性は?」


「前回話したお客さんよ。中に入れてもいいかしら?」


「どうぞどうぞ、お入りになって下さい。さあ。」


犬はそう言うと扉を開けて三人を中に入れた。入ってみると中の部屋は薄暗く、多くの客がいた。受付らしい所に客が並び招待状を確認している。あの薄気味い羊皮紙を出している。


「アリシアこの列に並びなさい。受付でさっきの羊皮紙を出せば指定されている席に案内されるわ。」


レズンがアリシアの猫耳に小声で言った。


「わかったわ。」


「じゃ、目標を確認次第、無線機で言って。あたしらはコイツらの親玉会ってくるわ。」


「ええ。」


二人は犬の後に付いていった。残ったアリシアは客達の並ぶ列に並んだ。アリシアが猫耳の中にある小型イヤホン式無線機のスイッチを入れた。


《俺だ。》


無線機越しにラルクが返答してきた。


「私よ。ラルク、中に潜入したわ。」


《わかった。レズン達は?》


「二人はこのオークションの支配人に会いに行ったわ。私はこのままもう一人と合流する。」


《了解、合図があればいつでも突入するぜ。無理すんなよ。》


アリシアが微笑む。


「私は元特殊工作員よ。心配しないで。」


アリシアは無線機を切り、再び前を見た。ちょうど自分の番が来た。受付の男に招待状を渡すと一人の男が歩いてきた。男は黒い布を被り姿は隠れている。男は付いてこいとアリシアに手招きをし、受付の隣にある通路に案内された。そこは今いた部屋よりも暗く、所々に蝋燭が置いてあるだけ。


黒い布の男は階段を下がり始め、地下に行く。階段を下がり終えると赤いカーテンで締め切られた入口がみえた。男は入口の脇で止まる。男がカーテンを開けると劇場のような広い空間が広がっていた。


(地下にこんな空間が広がっているなんて…。)


そこには大勢の客がいた。全員が今日のオークションに来た貴族や商人だろうか。男はアリシアに手招きをし、入口の左端を歩いていく。歩いていくとそこには他の客達の席より豪華な装飾をされたテーブルや椅子が置かれている。


どうやら特別席らしくそこには貴族らしい客が何人か座っている。男はひとつのテーブルの前で止まりアリシアにここだと指差した。見ると一人の緑のローブを着た客が座っている。アリシアはその男の隣に座る。


アリシアはさりげなく隣の男を見る。男はフードを被り素顔は見えない。アリシアはもう一人潜入した人物を探した。


「誰かお探しかい?お嬢さん。」


裏から自分に声を掛けてきた。ふと裏を見た。隣の男が喋り掛けてきた。相変わらずフードは被ったまま。


「ええ、友達が中で待っていると聞いたので。」


「待ち合わせか…どうだい?俺と一緒にオークションを楽しまないか。」


この男ナンパ?アリシアは少し警戒した。だがこの男の声どこかで聞いたことがある。アリシアが溜め息をすると。


「胡散臭い芝居は止めたら?トーリャ。」


「なんだよ…バレちまったか。」


緑のローブの男はフードを外すとそこには犬顔と長く垂れた耳が出てきた。


「他の人を騙せても私の目は誤魔化す事はできないわよ。」


「やれやれ、昔みたく出来ねぇか。」


指摘されたトーリャは残念そうにしていた。彼の名はトーリャ・バル・サージュ。彼もワイルドギースに所属している魔導士だ。ムーモーン族と呼ばれる魔術に長けた種族である。


「貴方が潜入してたの?」


「レズンにあんたが適任って言われたからな。しかし俺様みたいな凄腕の魔導士はもっと簡単な仕事をくれないかな。」


不満を言いながらワイングラスを持ち、酒を飲み干す。


「調子に乗らない。貴方、死刑にされそうになってた所をボスに助けてもらったんでしょ?」


「冗談だよ。俺様は恩は必ず倍にして返す男だぜ?今さら仇を返す真似なんてしねぇよ。」


(仇を返しそうなオーラ出してるように見えるけど。)


内心で思ったが今はよしておく。


アリシアは本題をトーリャに切り出した。


「トーリャ、奴隷の人達はどこにいるの?」


「あぁ、奴隷の女達はこの会場の隣にある収容区画にいるぜ。」


トーリャが左の方を指差す。アリシアがその方向を見るとカーテンで仕切られた入口があった。


「中に入る事は可能かしら?」


「警備してる人数が桁違いだぞ?見つかったら終わりだぜ。」


「でも…。」


アリシアは少し焦った。少女の安否を一刻も早く確認したかった。それを察したのかトーリャがアリシアに話し掛けた。


「アリシア、何も出来ないわけではないぜ?」


「え?」


「俺様の作戦を聞くかい?」


トーリャは不気味な笑みを浮かべながら再びワインを飲む。























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