6 見上げた先には勇者。筋肉の化け物から逃げた先。
メイズは追い詰められていた。目の前には聖装を持った筋肉隆々の化け物。周りには聖具を持った妖艶な美女達。魔王城の広間を逃げ回り、そしてついに隅に追い詰められた。仲間はいない。随一の実力者たるシャランが中心となっているようだ。奥には元勇者、ジャナサンも居る。顔には凶悪な笑みを見せながら。
「ほらほら、メイズ怖くないぞ。ちょっとくすぐったいだけだ。」
「いやいや、シャランさん。僕にだって男としての矜持がありますから。」
メイズの言葉は誰が見てもただの強がりだった。それでもメイズは諦めず、身体強化の魔法を最大まで上げて、美女達の隙間を走り抜ける。
「わっぷっ…。」
しかし、筋肉に阻まれてしまった。そして、遂に捕まってしまう。
「ほらほら、メイズが言いだしっぺの上、女装コンテスト前年度の優勝者が出ないと盛り上がらないぞ。」
シャランはそう口ではいい、メイズを聖装に着替えさせてしまった。真っ白な清潔感溢れるワンピースに。
「次は私ねぇ~ん。動いちゃだめよぉ~ん。」
筋骨隆々の男だが、顔には薄く化粧が施され、口紅すら塗っている。服装は女性物の裾のながいスケスケの布きれ。商店街奥の花見街に存在するオカマバー店長フタハ=サイゴーが聖具、化粧品を持って迫ってきた。その間にランを筆頭とした花見街のお姉さん達にカツラを被せられ、櫛で梳かされている。
「ぶっ、くくくく、もうだめだ。わははははははははははははっ!!」
笑うのを我慢し、それでも笑みが漏れていたジャナサンが遂に爆笑しだした。腹を押さえて、体を二つに折り曲げ、文字道理笑い転げている。
「ジャナサンさん、そこまで笑う事ないでしょう。」
「うっ、うお。まっ、待て。悪かった。俺が悪かったから、上目使いはやめろ。」
小柄なメイズが、体格のいいジャナサンの目を見て話すと、自然と見上げてしまう。ジャナサンからすれば、上目使いになるのだ。しかも、女装コンテスト前年度優勝という美少女っぷり。引かれたルージュで唇はプ二プ二だし、余程女装が嫌だったのか涙目である。
メイズ、男だと分かってても、それでも内心欲情してしまった事にジャナサンは死にたくなった。
「やっぱり、完璧にするべきよ。メイズちゃん、ここまでかわいいんだから。」
フタハが取り出したのは、女性用の下着。それを持ってフタハと美女軍団は迫ってくる。
「やっ、やめて。いやぁ――――――――。」
その腐腐腐な空気に思わず外に逃げ出したメイズ。そのまま、外に逃げるはずだったのだが、何か固い物にぶつかってしまった。尻餅をついたまま見上げれば、金髪青眼の細身の青年が驚いた顔でこちらを見ていた。
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