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配信切り忘れ、深夜の甘い独り言

ホラーゲーム配信(という名のASMR)が終わり、すっかり夜も更けた頃。


「お疲れ様。お腹減ったろ?簡単にだけど、何か作ろうか」


「えっ!リオンが、手料理を!?」


「うん、パパッと炒め物とスープくらいだけどね。リエちゃんは座っててね」


(※なお、配信のブラウザはバックグラウンドで起動したままであり、マイクは部屋の音声を拾い続けている)


『手料理!?!?』

『男子の手料理を食べられる人生線どこ???』

『包丁トントン叩く音だけで白飯食える』

『包丁の音が優しすぎる……』


出来上がった料理を「美味しいっ!」と涙目で頬張ったリエは、そのまま緊張と満腹感、そしてホラーゲームの疲れが一気に押し寄せたのか、リビングのソファでスースーと寝息を立て始めてしまった。


「あ、寝ちゃった。まあ、ゆっくり休みなよ。冷えたら大変だから毛布かけよう」


俺はそっと彼女に毛布をかけると、自分は先にお風呂を済ませることにした。


◇◇◇


数十分後。


俺は風呂から上がり、バスタオルで濡れた髪をゴシゴシと拭きながら脱衣所から出てきた。


暑かったので、上半身は裸のままだ。


「ん、さっぱりした。あ、リエちゃんまだ寝てるな」


ソファへ近づいた俺を、ふと目を覚ましたリエが出迎える。


「ん…リオン?…っ!?はだか♡」


濡れた髪、バスタオル、そして目の前に広がる…男子のしなやかで引き締まった生々しい上半身。


「う、あ…あ…あっ♡」


「え?リエちゃん顔赤…あっ、倒れた!?」


あまりの刺激にリエは、そのまま白目を剥いてソファーに倒れ込み、気絶してしまった。


一方、画面に映像すら映っていないリスナーたちは…部屋に響く『衣擦れの音』『髪を拭く音』『リエの謎の悲鳴と倒れる音』から察して、コメント欄で狂乱していた。


『いまの音ナニ!?!?』

『風呂上がり!?!?』

『髪ゴシゴシ拭く音すんな!!!』

『リエが声にならない悲鳴上げて倒れたぞwww』

『直視して気絶したなあの女!!www』

『ずるい!!映像映せよ!!!見せろ!』


そんなリスナーたちの叫びも知らず、俺は気絶してスヤスヤ眠るリエの顔を覗き込み、ポツリと独り言をこぼした。


「…はぁ。まったく、リエは可愛いよな」


『っ!!!!???』

『可愛い……!?』

『直球すぎない!?』


「…女の子が無防備に男の部屋で寝るなよな。もし俺が襲ったりしたらどうすんの?俺のこと、信用しすぎだろ」


部屋に響く、俺の少し呆れたような、でもどこか甘い低音ボイス。


その瞬間、配信のコメント欄の速度が測定不能を起こした。


『襲ってくれる男子なんて…最高すぎるだろ!!!!』

『信用しちゃう♡♡♡』

『いつでも襲って!!!今すぐ家教えて!!!』

『「襲ったら」とか男側から言う世界線どこ????』


俺はそんなコメント欄のパニックなど知る由もなく、彼女の頭にそっと手を置いた。


「…頭、撫でていいか?おやすみ、また明日ねリエ♡ふふっ♡可愛いな」


さらりと撫でてから、俺は自分の寝室へと向かった。


深夜の静かな部屋に、マイク越しに届いた最後の甘い吐息。


画面の向こうにいた数万人の女子リスナーたちは、その夜、全員揃って悶絶死することとなった。


『はわわ……頭撫でられた♡』

『おやすみ……っ!』

『おやすみリオン様♡♡』

『おやすみ……明日も生きていける♡』

『絶対いい夢みれりゅ♡』


〜こうして、配信を切り忘れた夜の切り抜き動画は、翌朝には『伝説の聖父ASMR』としてネット空間を完全に支配していた〜


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