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傲慢な男子と焼きそばパンの交換(前編)

この学園には珍しく、俺のクラスに新しい男子生徒が登校してくるようになった。


名前はタクヤ。

元からこのクラスだったようだが、しばらく学校を休んでいたようだ。


彼はこの男子が極度に少ない世界でちやほやされて育ったせいか、あるいは元々の性格なのか…他の気弱な男子生徒たちとは違い、とにかく傲慢そのものだった。


「んふふ、久しぶりタクヤ♡おっぱい当たってドキドキしちゃった〜?」


「ふざけるな!触るなこのド貧乳が!当たる胸なんてぶら下がってねぇだろ!ブス!」


リエの公式配信コメント欄:

『リオン君が喜ぶからって他の男子にやっちゃダメだろwww』

『リオン様のせいで女子側の距離感完全に壊れてるからなwww』

『レアな傲慢男子だ!』

『ああいう男って性欲強いんでしょ?』

『それにしても暴言酷いな…』

『リオン君が聖男すぎるから余計』



うわぁ、またやってるよ…あいつ暴言の引き出し多すぎだろ。

と、呆れていたその時。


背後からぬっと伸びてきた腕に抱きかかえられ、俺の後頭部が「ふにゅっ」と柔らかい感触に包み込まれた。


「リオンくん♡当たっちゃったね♡私、ケイコ。よろしくね♡」


同じクラスの女子、ケイコさんが、後ろから俺の頭を抱きしめるように胸を押し当ててクスクス笑っている。


当たってるどころの騒ぎじゃねぇ!

後頭部が柔らかすぎて脳みそ溶ける!!

落ち着け俺、理性を保て!

歓喜で顔を緩めたらリエに変態扱いされるぞ…


必死に表情筋を固定し、真面目そのものの清らかな瞳で振り返る俺。


リエの公式配信コメント欄:

『リオン様!心の声ダダ漏れ!!www』

『脳みそ溶けるは草www』

『顔は真顔なのに脳内がスケベ全開すぎるwww』


そんな俺たちのやり取りを見て、タクヤが不機嫌そうに鼻で笑った。


「なんだぁ?お前、リエだっけ?まだ配信なんてしてんのかよ!辞めちまえよ、この底辺配信者が!がはは!」


俺は大好きなリエが馬鹿にされて、黙っていられなかった。


「んなっ!ちょっと、お前リエに謝…」


「リオン! いいから、行きましょ」


「なっ…リエ」


「リオンが男子に強い言葉使うの、聞きたくないの…」


「リエ…」


悔しくて拳を握りしめる俺の手を、リエが優しく包み込んだ。



◇◇◇


昼休みの購買前。

タクヤは大威張りに腕を組み、周りの女子生徒たちを顎で使っていた。


「おい!パン買ってこいよ!遅ぇんだよブス!売り切れたらどうすんだ!」


「は、はいっ!すぐ買ってきます!」


女子生徒たちが申し訳なさそうにペコペコと頭を下げ、人込みの激しい購買へと走っていく。


タクヤはフンと鼻を鳴らし、それが当たり前かのように威張り散らしていた。


…この世界の男ってカップル配信のトモヤみたいな気弱な男が多いんだよな?

アイツは甘やかされすぎてあんなになっちゃったのか?


俺は引いた目でその光景を見つつ、自分のクラスの女子のもとへ向かった。


今日はケイコが購買に走ってくれたのだ。


「ほらリオンくん♡スペシャルメロンパンだよ!」


「それって競争率高いんだろ?タクヤが喰えなかったら悪いよ。アイツは…」


その時、購買のほうからタクヤの怒鳴り声が響いた。


「なんで焼きそばパンなんだよ!使えねぇな!俺は甘いパンしか食べないのくらい覚えとけよな!」


せっかく買ってきてくれた女子生徒を怒鳴りつけるタクヤ。


俺は居ても立っても居られなくなった。


「ケイコさん、これタクヤのと交換してもいいかな?」


「なんで?そんなに優しいの?」


「優しくなんてないよ。ただ…あの子の心がが平和な方がいいだけ。ちょっと行ってくるよ」


「リオンくん…」


俺はタクヤのところへ歩み寄った。


「タクヤくんだっけ。俺、焼きそばパンが食べたかったんだ!スペシャルメロンパンと交換しないか?」


「なんだぁ?お前、女みたいなの喰うのかよ!がはは!ほらよ!」


タクヤは焼きそばパンを投げつけるように渡してきた。


それを見ていたケイコさんが、顔を真っ赤にして怒りを露わにする。


「リオンくん…あんな事言われて悔しくないの!?私がガツンと言ってくる!」


「大丈夫。ケイコさんが悲しむ顔は見たくないし、俺、焼きそばパン好きだから」


「もう、焼きそばパンなんかじゃなくて…私を食べちゃいなよ♡」


そう言って、ケイコさんは俺に顔を近づけて挑発するように微笑んだ。


うおっ、距離近い!

でも、俺がタクヤにバカにされたのを本気で怒ってくれてたんだよな…


自分のために憤ってくれたケイコの優しさが嬉しくて、俺は彼女の頭をポンポンと軽く撫でながら、真面目な瞳でそっと微笑みかけた。


「ケイコさんは俺のために怒ってくれて、優しくしてくれて…心から、ありがとうな」


「っ♡頭撫でっ!?真顔で感謝っ!?」


「本当に俺が食べちゃうぞ♡なんてね」


「くっ♡♡♡」


挑発していたはずのケイコさんは、一瞬で顔面を真っ赤に染め上げ、胸を押さえてその場に崩れ落ちそうになっていた。


潤んだ瞳で俺を見上げ、蚊の泣くような声で呟く。


「…もう、ずるいよ…リオンくん保健室…行こっ♡」


…あれ?

冗談のつもりが、またその気にさせちゃった?

でも焼きそばパン美味いな。

ありがとうケイコさん、ありがとう貞操観念逆転世界…


シズカの裏配信コメント欄:

『ケイコの焼きそばパン(隠語)www』

『また保健室での空白の時間が発生確定で草www』

『タクヤの暴言・横暴に対するリオン様の神対応が眩しすぎる!』

『次話でタクヤの自滅・ザマァの流れキターーーーー!!』


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