「呪い」
19話目です。
オリバーは目を覚ました。
ここがどこかも分からず、ぼんやりと天井を見つめていると――
ガッツ「お! 起きたのか!」
勢いよく扉が開き、ガッツが飛び込んできた。
ガッツ「おいオリバー!
お前、三日も目を覚まさなかったんだぜ!?
もう死んだかと思ったよ! あー、マジでよかった!」
心の底からの喜びが伝わってくる。
どうやら、ここは学院付属の治療棟のようだ。
オリバー「何がどうなったの? わかる? 教えて?」
自分の体よりも、例の事件の方が気になって仕方がない。
ガッツ「演習場の調査をしていた人が言ってたのはなんか
"魔法の残滓"が歪で"呪い"の類かも知れないって言ってた」
オリバー「呪い?それってガッツと同じの?」
ガッツ「わかんねーよ。呪いにも種類があるんじゃねーのか?」
オリバー「種類か……。ちょっと書庫に行ってくるよ」
ガッツ「おい!ちょっと待て!ここにいろ!怪我人だろうが!」
ガッツは出ていこうとするオリバーを必死に引き留めた。
オリバー「調べたいことがあるんだ」
ガッツ「今じゃなくていい!!元気になってからだ!!」
「そうだよ。行かなくていい」
静かな声が、部屋の入り口から響いた。
「エリオット…」
オリバーは思わず目を見開く。
そこには、整った制服姿のエリオットが立っていた。
エリオット「僕が君の立場なら、
きっとすぐ調べに行くだろうと思ってね。だから――
持ってきたよ」
ドサッ。
ベッドの上に、分厚い書物がいくつも積み上げられた。
オリバー「これは……?」
エリオット「今回の事件に関する資料だ。
"呪い"が関係しているらしい」
その言葉に、オリバーは無意識にガッツの方を見やった。
三人は、事件現場での調査記録や古い神話書を読み解きながら、
断片的な情報を繋いでいった。
そして浮かび上がったのは―――
・"呪い"とは、神が直接下す罰。
・生まれ持つ者と、後から与えられる者がいる。
・"呪い"の形は一人ひとり異なり、その者の願望に深く関わる。
オリバーはハッとしたようにガッツを見つめた。
オリバー「ねえ、ガッツ。
騎士になりたいって思ったのは、いつ?」
ガッツ「んー、覚えてねーな。気づいたらそう思ってた。
だから俺が騎士になるのは運命だと思ってる!」
オリバー「……やっぱり、そうか」
「やっぱりとはなんだい?」と、エリオットが問う。
「騎士になることは、ガッツの"宿命"なんだ。
だけど――その"願い"を奪うために…
呪いは剣を持つことを禁じたんだよ」
エリオット「そうか…。
"呪い"とはその者が一番強く願うものを奪うってことなのか…
でもなぜ、神はガッツにそんな罰を…?」
オリバー「それは…わからない…。
今回のミルドの件はどうだろう…?」
オリバーは少し考えてから首を傾げた。
オリバー「僕を殺すこと? いや、違うな……」
「きっと、"家の繁栄"だろう」
エリオットの声は静かだった。
エリオット「ガラード家と使用人たちは全滅した。
ガラード一族がここで終わったんだ。
ミルドも、ガラード氏も――
心の底から"商会の繁栄"を願っていた。それが、奪われた」
オリバー「……確かに、そう考えるのが一番しっくりくる」
「神罰――つまり神に背いた結果、願いそのものを封じられる。
誰にとっても、それ以上に残酷な罰はないね」
三人の間に、静かな沈黙が流れた。
外では風が木々を揺らし、遠くで鐘の音が鳴っている。
「それを伝えに来たのがひとつ」と、エリオットが言った。
オリバー「え?」
エリオット「もうひとつは―――」
彼はゆっくりとオリバーを見据える。
エリオット「君の回復次第で、
もう一度試合を行う。正式に、だ」
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