呪い
20話目です。
オリバーは目を覚ました。
ここがどこかも分からず、ぼんやりと天井を見つめていると――
「お! 起きたのか!」
勢いよく扉が開き、ガッツが飛び込んできた。
「おいオリバー!
お前、三日も目を覚まさなかったんだぜ!?
もう死んだかと思ったよ! あー、マジでよかった!」
心の底からの喜びが伝わってくる。
どうやら、ここは学院付属の治療棟のようだ。
「何がどうなったの?」
自分の体よりも、例の事件の方が気になって仕方がない。
「演習場の調査をしていた人が言ってたのはなんか、
"魔法の残滓"?が歪で"呪い"の類かも知れないって言ってた」
「呪い?それってガッツと同じの?」
「わかんねーよ。呪いにも種類があるんじゃねーのか?」
「種類か……。ちょっと書庫に行ってくるよ」
「おい!ちょっと待て!ここにいろ!怪我人だろうが!」
ガッツは出ていこうとするオリバーを必死に引き留めた。
「調べたいことがあるんだ」
「今じゃなくていい!!元気になってからだ!!」
「そうだよ。行かなくていい」
静かな声が、部屋の入り口から響いた。
「エリオット…」
オリバーは思わず目を見開く。
そこには、整った制服姿のエリオットが立っていた。
「僕が君の立場なら、
きっとすぐ調べに行くだろうと思ってね。だから…。
ほら、持ってきたよ」
ドサッ。
ベッドの上に、分厚い書物がいくつも積み上げられた。
「これは……?」
「今回の事件に関する資料だ。
どうやら"呪い"が関係しているらしい」
その言葉に、オリバーは無意識にガッツの方を見やった。
三人は、事件現場での調査記録や古い神話書を読み解きながら、
断片的な情報を繋いでいった。
そして浮かび上がったのは、
・"呪い"とは、神が直接下す罰。
・生まれ持つ者と、後から与えられる者がいる。
・"呪い"の形は一人ひとり異なり、その者の願望に深く関わる。
オリバーはハッとしたようにガッツを見つめた。
「ねえ、ガッツ。
騎士になりたいって思ったのは、いつ?」
「んー、覚えてねーな。気づいたらそう思ってた。
だから俺が騎士になるのは運命だと思ってる!」
「……やっぱり、そうか」
「やっぱりとはなんだい?」と、エリオットが問う。
「騎士になることは、ガッツの"宿命"なんだ。
だけど――その"願い"を奪うために…
呪いは剣を持つことを禁じたんだよ」
「そうか…。
"呪い"とはその者が一番強く願うものを奪うってことなのか…
でもなぜ、神はガッツにそんな罰を…?」
「それは…わからない…。
今回のミルドの件はどうだろう…?」
オリバーは少し考えてから首を傾げた。
「僕を殺すこと? いや、違うな……」
「きっと、"繁栄"だろう」
エリオットの声は静かだった。
「ガラード家と使用人たちは全滅した。
ガラード一族がここで終わったんだ。
ミルドも、ガラード氏も…。
心の底から"商会の繁栄"を願っていた。それが、奪われた」
「……確かに、そう考えるのが一番しっくりくる」
「神罰…つまり神に背いた結果、願いそのものを封じられる。
誰にとっても、それ以上に残酷な罰はないね」
三人の間に、静かな沈黙が流れた。
外では風が木々を揺らし、遠くで鐘の音が鳴っている。
「それを伝えに来たのがひとつ」と、エリオットが言った。
「え?」
エリオット「もうひとつは―――」
彼はゆっくりとオリバーを見据える。
「君の回復次第で、もう一度試合を行う。正式に、だ」
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