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神罰の英雄たち  作者: Anon
西の大陸編(前編)

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149/197

神罰の町

148話目です。

神罰の町。


オリバーがそう呼ぶ町に名前はない。


名付ける必要がないからだ。


人々はそこを町だと思っていない。


使いものにならなくなった木偶の坊をただ捨てる為の場所だ。


捨て置かれた木偶の坊たちにも意思がある。


生きるしかなかった。


必死で、必死で。


手を取り合い、助け合いながら、命からがら。


その者たちは絶望しながらも前を向くしかなかった。


必死で生きた。


死ぬ勇気もなかったからだ。


人のことなんて考える余裕は無くなった。


手は取り合わない、助け合わない。


自分がその日生き延びれればそれでいい。


目の前の一分一秒を刻むだけだった。


他人の呪いなんて気にしていられない。


願うことを奪われた。


他人の願いなんてどうでもいい。


生きる術を奪われた。


理不尽に、時には合理的に。


生きる気力などない。


生があるから生きるだけ。


死ねばそこまで。


どこを見ているかわからない。


全員が同じ仮面を被っているように表情を合わせていた。



オリバーたちは絶句した。


自分たちが笑いながら楽しみながらここまで旅を続けたことを、

そしてこの町へ軽い気持ちで訪れたことを、

心の底から後悔していた。


「もう、絶望すらしていないのね…」


「生きる気力も死ぬ気力もない。といったように見受けられるな」


「なんで…みんな…こんな顔してんだよ…」


「私は…わかります…」


「俺だって…わかるぜ…。

ま、明るく振る舞えるだけマシだけどな…」


『………これが…神罰か…』


「命を奪わず、生を奪う。

神様ってのはこうも残酷なのかよ…」


『クラウンもまさにそんな感じだよ』


「ま、そうだな。

この首飾りも神罰を受けてっからな…」



オリバーたちは町民に話しかけてみたが、

誰にも答えてもらえなかった。


誰一人、何も認識していない。

動いているがほとんど空っぽだ。


『この町では何も聞けそうにないね。

宿も商店も何もないし…これからどうするかな…』



「お主たち、誰にも相手にされなかったようだな…?」


『誰だ!?』


「すまない、驚かせてしまったようだな。

こんな町…集落に何の用だ。

見て分かっただろう?

ここには本当に何もない」


その老人はオリバーに気づかれることなく背後に立ち、

オリバーに声をかけてきた。


(この人…気配がわからない…?いや、ないのか…?)


「まあ、驚いただろうな…。さ、こちらへ来なさい」


老人はそう言いながら近くの民家を指差した。


「なんだ…?家ん中、けっこう綺麗じゃんか」


「外の様子とは全く違うわね。

外は誰も掃除してなさそうだったもん」


「この家の中はいつも掃除をしているのでしょうね。

奴隷として家事全般していたのでわかります」


「まあ、あまりジロジロ見ないでくれ。

これはワシの性格でな。

それよりさっきの質問だが、ここに何をしにきた?」


『神罰を見に…ね』


「神罰……見世物ではないぞ?

それに見たとて何もない。嫌な気持ちになるだけだ」


「う、うん。確かにそうだったわね…」


「俺たちもさ、ここの人たちと似てんだよ」


「お主らも神罰を受けておるのか…?」


『僕以外は全員ね』


その後、オリバーは、老人に旅の経緯を少し説明した。


「神罰を受けても尚、強く生きれるのならそれに越したことはない。

人の不幸など見るものではない。

幸福も不幸も人それぞれだ。

正解などないのだ。

お主らの旅はお主らにしかできぬのと同じ。

ここの連中はここで生きながら死ぬしかないのだよ」


『そうか…。そもそも知る必要なんてなかったのか…』


「わかったか。

わかったなら話は早い。

ここを去れ!二度と来るでない!

もし来たいなら何もかも空っぽにしてからこい!

わかったな!?さあいけ!」


「そこまで言われたら……やるしかねーよな…!」



「とは言ったが……この町にいるだけで疲れたろう?

この家の中なら一息つけるはずだ。

ゆっくりしてから行くといい」


「じゃあ、お言葉に甘えましょ!みんな!」

オリバーたちは2階に上がり小さな部屋で休むことにした。




その夜。


1階ではオリバーを待つかのように老人が座っていた。


「少し…話をしようか」


『え?』


「ワシも久しぶりにまともな人間に会ったんだ。

少し話したっていいだろう?」


『そうだね。

話聞かせてもらえる?』


オリバーと、とある老人の深く短い夜が始まった。

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