因果
141話目です。
「あんた…だったのか…!」
「はぁ…はぁ…。
あんだ?兄ちゃんじゃねぇか。
お前らも俺を追ってきやがったのか?」
「別にあんたを追ってたんじゃない…!
今までの事件を…追ってきただけだ…!」
既に辺りは夜の帳が下りようとしていた。
黒いコートを身に纏い、
黒いフードを被っているその男の姿は、
仄かに見えていた。
その男の胸元から青く照らされていたからだ。
「兄ちゃんたちには関係ねぇだろ?
これは俺の因果だ。
お前たちもコイツらの関係者だって言うんなら、
話は別だがな…」
「もう事件を見ちまったんだ!
関係ねーことねーだろうが!
なんでこんなことするんだよ…!」
「お前に言う必要はねぇな。
なんだ?言ったら裁いてくれんのか?慰めてくれんのか?
ちげぇだろうがよ。
何もできねぇ奴が正義ヅラしてんじゃねぇよ」
「くっそ…!お前…!」
『ガッツ!!』
オリバーの一喝がその場を鎮めた。
力が入るのと同時に自然発生した風の魔法が、
オリバーを中心に激しく渦巻いた。
『ガッツ、この人の言う通りだよ。
僕たちに口出しする権利はない。
この人の"因果"についてはね』
「仮面の兄ちゃんはちょっとは頭がキレるんだなぁ。
だが、それでも口出しはさせねぇ。
それにもう…終わったからよ」
『…荒野の町で、とある集団と仲良くなったんだ。
一緒に遺跡に行こうって。
その約束をする前に少し駆け引きはあったけどね。
次の日にはもう燃やされてた。
約束を果たせなかったんだ…』
「…そうかよ。そりゃ悪かったな。
だが、こんな奴らと仲良くするこたぁねぇよ…っと、
喋りすぎるところだったな。
ほら、もう行きやがれ。用は済んだろ?」
『済んでないよ。
僕の悲しみは君が解決してくれないと。
それに"もう一つ"聞きたいこともある』
「ほーう。武器を手にしたってことは、お前も覚悟できてんだな?」
ガイコツ仮面の男は、腰に携えていた"トゲ付きメイス"を取り出した。
その"トゲ付きメイス"には、
まだ新しい血が付いているように見える。
「かかってこねぇならこっちからいくぞ…!」
その男の動きは速かった。
その長身からは想像もつかない速度で、
オリバーに肉薄した。
メイスの振りも並外れた速度だった。
各事件では、集団が一方的に惨殺されていた。
よく考えれば相当な手練であることがわかる。
だが、オリバーも成長している。
その高速のメイスによる一撃を……。
「コイツ…!ナイフでパリィしやがった…!」
何度もメイスを振り下ろしたが、全て完璧に弾かれた。
「はぁ…はぁ…。てめぇナニモンだよ…」
『ただの旅人だよ…!っと!』
風魔法で五体を操作し、高速で移動した。
その男は、かろうじてナイフ攻撃をメイスで弾いたが、
二撃目の重い蹴りをしっかりと食らってしまった。
『君……体、どうなってるの…?』
「ハッハッハッ!気づいちまったか…。
そうだよ……ほら!この通りだぜぇ!」
その声と同時に黒いコートを広げた勢いでフードも落ちた。
『そ、その体……。え…?』
骨だった。
ガイコツの仮面だと思っていたその顔は、
仮面ではなく本物のガイコツだった。
そのガイコツの胸の真ん中で、何かが青く輝いている。
「…驚いたろ?安心しろ、俺もだ。
好きでこんな姿をしてるんじゃねぇぞ?」
『じゃあ……なんで……?』
「そうだな…。
俺に勝ったら教えてやろうか?」
『それなら今教えといたほうがいいよ。
ちゃんと負ける前にね』
「口の減らねぇ野郎だなぁ…!
お前もコイツらと同じ目に合わせてやろうか…!」
ガイコツ男はメイスを何度も何度も振るった。
『本気で振ったほうがいいよ。
そんなんじゃ僕には当たらない』
軽やかに躱し、完璧に弾き、細かく反撃を入れていった。
「チッ…。やっぱ急造のコイツじゃ、話になんねぇか…」
ガイコツ男はそう言いながらメイスをその場に捨て、
ジャグリングを始めた。
『…僕はそんなじゃ油断しない』
「今更そんなつもりはねぇよ。
なあ、仮面の兄ちゃん。
名前はなんて言うんだ…?」
『オリバーだ』
「オリバーか…。
久しぶりに人と正面から…いや、人に…だな。
正面から向き合ってもらった。
そんな恩人の名前を聞いておきたくてよ」
『じゃあ君の名前は?』
「それも俺に勝てたら教えてやる…!」
ガイコツ男のジャグリングの球が光り始めた。
赤や青、黄色や緑といった様々な色の球が、徐々に光を強めていく。
『魔法か…』
「……喰らいな」
ジャグリングの球から魔法が放たれる。
球はいつの間にか手から離れていたが、
それでも尚、回り続けている。
ガイコツ男は、捨てたメイスを拾い上げ、
魔法球による攻撃とメイスによる攻撃でオリバーを追い込む。
オリバーは、魔法攻撃を躱しながら、"術式改変"の魔法を使い、
メイスによる激しい連続攻撃も全てナイフで弾いていた。
「お前…!強いじゃねぇか…!」
『この程度なら頭が回るからね。
そろそろ反撃していい?』
「言わせておけば…!」
円を描くように回っていた幾つもの魔法球は散り散りになり、
オリバーの四方八方取り囲むように配置した。
だが、その魔法球から魔法が放たれることはなかった。
「な、なんでだ…!どうなって……」
オリバーはその隙にガイコツ男の首にナイフを当てていた。
『これで終わりでいいかな?
君を殺す義理はないからさ』
「だーーー!!俺の負けだよ!!
この頑固野郎がーー!!」
そう叫びながらその場に大の字で倒れた。
「あーぁ。負けたのいつぶりだろ。
……星が綺麗だなぁ…」
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