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夢だと思っていたら現実だった件 ~死にたくないのでソウゾウリョクを駆使して全力で抗います~  作者: 神子島 航希
第2章 動き始める日常

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29.見るともなく見る

 2人が遠間になった時に声を掛ける。


「ちょっといいかな?」


「「は、はい!」」


「あぁ、そんなに緊張しなくて良いよ。えーと、小太刀の君・・・」


「小竹です!」


「うん、小竹君か。小竹君は立ち会う時、何処を見て立ち会っている?」


「えっと、武器の先とか、打ち込みたい所です。」


 やはりそうか。


「よし!じゃあ今度は先生を見ながら立ち会ってみようか。」


 そう言って、槍使い君の後ろに立つ。


「先生のこの辺りを常に見てるんだよ。」


 そう言って、自分の胸辺りに指で円を描く。

 戸惑う2人に「はじめ!」と掛け声を掛けて促す。戸惑いつつも、立ち会いだした2人は、槍使い君が先に気を持ち直して、右左に体を振る。


 俺は槍持ち君から大きく離れないように、後ろに付いて立つ。小竹君も気を持ち直してきたが、少し遅かった。隙を付いた槍持ち君が大きく振りかぶって面を取りに行く。


 さっきまでであれば、それで一本だったろうがそうはならなかった。小竹君が左の小太刀で易々と受けて、右の小太刀で逆に面を取ったのだ。2人とも呆気に取られている。


「さて、なんで今は槍を受けられたと思う?」


「えっと、先生を見ていたんですけど、目の端に屋永が槍を振り上げるのが見えたので、思わず左で受けて、面が空いてたので打ち込みました。でも、さっきまでは槍が怖くて、目を瞑ってたのになんで?」


「うん、じゃあ答え合わせしよう。人は迫り来る物には恐怖を感じて、硬直したり、目を瞑ったりするものなんだ。勿論、感情なんて人それぞれだから、怖いと思わない人もいるけど、怖いと思う事は恥ずかしい事じゃない。逆に危機管理能力が高いとも言える。だけど、そこで硬直したり目瞑ってしまったら、元の子もない。だから俯瞰して見るようにするんだ。」


「「フカン?」」


「あぁ、ちょっと難しいか。君達はテレビとかスタジアムに行ってスポーツ観戦はするかい?」


「サッカーは偶に見ます。」


「あ、僕も日本代表くらいは見るかも。」


「うん、例えやすくていいね。テレビでサッカーを見てる時、遠くから映してフィールド全体が見える時があるだろう?あの状態を俯瞰して見るって言うだ。その状態で観ていると、「アソコのスペースに空いてる味方がいるのになんでパスしないんだろう」って思う事無いかい?」


「あ、あります!お父さんも偶にビール飲みながら観ていて文句言ったりしてる。」


「それは、俯瞰して見ているから分かるのであって、フィールドでプレーしている選手には分かり辛いんだ。」


「そうか!だから自分達を俯瞰して見れば迫ってくる武器も丸見えだし、怖く無いのか!ん?でも自分を俯瞰して見るってどうするの?目はここにあるんだし無理じゃない?」


「そう、目はココにあるから主観でしか見る事は出来ない。それが出来たら天才か達人だ。まさか、目玉を外す訳にはいかないからね。」


「それでさっきの立ち会いだ。小竹君は先生を見ていたから、屋永君に集中していなかった。でも別に屋永君を見ていなかった訳じゃない。人間は周辺視野って言って、集中して見ている周りの視野でも見えているんだ。周辺視野で見えているから動きがあれば分かる。普段よりも集中して剣先を見ていななかったから恐怖心も和らいだんじゃないかな。見るともなく見る。矛盾した言い方だけど、そうする事で擬似俯瞰で見る事が出来るんだ。」


「ただ気を付けなければいけないのは、擬似俯瞰はあくまでも大きな動きに気付けるのであって、さっきも差し面をされていたら対応出来なかっただろうね。擬似俯瞰を上達させれのは訓練が必要だ。」


「訓練ってどうやれば良いんですか?」


「そうだねー。まずは相手の面の奥を見るように焦点ズラして練習して見てごらん。何回も練習する内に、相手の隙が見えてきたりするようになるよ。」


 まあ、そうなる為には気の遠くなるような訓練が必要だが、それは言わないでおく。


「さあ、皆も練習再開しようか。」


 いつの間にか集まってきていた小学生に声を掛けて、練習を再開した。

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