35話
(あの時喰われた剣が何で戻ってきたのかは分からないけど、考えるのは後回し。今はこいつら倒さないと)
オリビアは鞘から剣を抜く。
「準備はいいな、リーフ!」
「…もちろんだ!」
リーフとオリビアは背中合わせで、剣を構えた。
「自己強化魔法、発動!」
「全てを燃やしつくせ、ファイア!」
リーフは魔法、オリビアは炎をまとった剣をモンスターに向けて、切りつけていく。
背中合わせなので、お互いの死角もカバーしている。
「聞きたいことは山ほどあるけど」
「彼らに任せきりにする訳にはいきませんわね」
「私たちもやるよ!」
カナリーは二丁拳銃を構え、確実に脳天や心臓を打ち抜いている。
セレストは、たくさんの武器を召喚する魔法で、モンスターの頭上から落としていく。
カメリアは、拳や蹴りを強く打ち込み、首の骨を折り、絶命させていく。
ダンジョン全てのモンスターはどんどん数を減らしていく。
リーフは戦いながらずっと考えていた。
自分の剣で戦うことができる興奮で、口調が荒っぽくなっているオリビアを見る。
それが記憶が無くなる前のオリビアの素の姿なのではないかと。
随分前からその片鱗は見えていたから。
でも、それだけとは思えなかった。
こうやって、背中合わせで戦っていると、『オリーフロード』で、オリバーと戦っていたことを思い出す。
モンスターと相対している、戦うことが楽しくて仕方ないギラギラした笑顔がオリバーと重なる。
考えていて、少し気がそれていたのか、モンスターの攻撃を受けそうになる。
その勢いで尻餅をつく。
それをオリビアがかばった。
「わ、悪い。オリバー」
思わず言ってしまった言葉に、口を手で抑えた。
(他人のことを重ねるなんて、嫌だよな)
「ったく、油断すんなよな、リーフ」
ほら、と手を差し伸べる。
その手を取り、リーフは立ち上がる。
(否定しなかった…)
再び戦いを始める。
(やっぱり、オリビアはオリバーだったんだ!)
リーフの心の中は歓喜で沸き立つ。
ジェイが企むずっと前から、オリバーはオリビアの中にずっといた。
(さすがに気づかれたか)
オリバーもそのことが分かり、内心あせっている。
(今絶対オリバーって口走ってたし。俺もとっさのことで否定できなかったし)
5人の共闘でダンジョンのモンスターの姿は全くなくなっていった。