36話
数多いるモンスターを倒し、この場にいるのは、悪魔に取り憑かれたジェイのみとなった。
「さすがにこれだけ倒したら、復活するのに翌朝までかかるだろ」
「もう、君には盾になるものはいない。覚悟するんだね」
リーフはジェイの首筋に剣を向ける。
「ちっ」
大きく舌打ちをする。
「せっかく、勇者の魂を喰らうことのできるチャンスなのに、見過ごして、逃げるなんてできるか!」
ジェイの体を黒いもやが包んでいく。
「このダンジョン中のモンスターを使役できたのは、本で倍増した魔力によるもの。この女自体には大した魔力はないが、それでも贄にすれば、マシだ」
もやはダンジョンの天井まで上っていく。
手足が辛うじてあるのが分かり、顔と胴体がつながったシンプルな土人形のように見える。
「牢屋にぶち込みたいのに、姿変えるなよ」
「いいんじゃない。こうなったらもう手遅れだし、楽にさせるのも優しさだと思うよ」
オリビアとリーフは見上げながら、話す。
「いや、ジェイは絶対生かしてみせる。俺たちならできるだろ?」
オリビアは、な?と握った拳をリーフに向ける。
「しょうがないな」
ふっと、軽くため息をつく。
「オリバーと僕に不可能なことなんてないんだから」
リーフも拳を受け、グータッチする。
「セレストたちはどう?」
後ろを振り返ると、座り込んでいる3人がいた。
「ごめーん、魔力切れだよー」
「あの数はさすがに疲れるね」
はあはあと息を切らしている。
「付き合わせて悪かったな。攻撃が当たらないところでゆっくり休んでいてくれよ」
「それは構いませんが。…もう、隠す気はないのですのね」
「あー…」
気まずそうに、頬をかく。
「終わった後、全部話すよ」
「ええ、楽しみにしてますわ」
カメリアの笑みを背にし、もやに対峙する。
「勇者の魂は俺のものだ。その力を糧に国中の魂を集めてやる」
「リーフの魂も身体もお前に二度とやるかよ」
オリビアは剣を向ける。
「違うよ、オリバー。勇者は僕じゃない。今もオリバーのまま」
「違えよ。ずっと勘違いしてたんだ。勇者はリーフだ」
「そんなはずない。オリバー」
「言い争っている時間ないよ」
カナリーが声を張り上げて、2人をなだめる。
「2人とも勇者でいいじゃん。W勇者がいるなんて、このパーティー最強だよ!」
セレストの発言で2人の口論は止まった。
「ま、俺たち2人で勇者ならいいか」
「うん。勇者の僕とオリバーの魂も身体も僕らのものだよ」
「あー、うん…」
オリビアは歯切れが悪かった。
(俺本体はともかく、俺の魂が入っている身体は別人だけどな)




