30話
黒いオーラが消えた。
リーフが魔方陣の上で目を閉じて、立っている。
ジェイがリーフのそばに近づいていく。
その隙に光の輪が消えたセレストたちがオリビアのもとに行き、手を縛っていたロープを外す。
「痛いところはない?」
「はい、大丈夫です」
(俺、この娘のままだ)
魂がリーフに引き寄せられる感覚もなかった。
失敗したのだろうか。
状況が分からないので、様子を窺うしかない。
リーフが目を開いた。
手をグーパーと握り開いている。
「おかえりなさいませ、オリバー様」
とろんと蕩けたような表情を浮かべる。
「ただいま。ありがとうな、ジェイ。こうして、生きる身体を手に入れられた」
(いや、俺はここにいるけど)
「その、お礼といっては何ですが、ジェイをあなたの妻に…」
体をくねくねと動かしている。
「そうだな。たっぷり、お礼をやらないとな…」
リーフの体は手を伸ばす。
そして、ジェイの首をしめた。
「ぐはっ」
苦しそうな声が漏れる。
「よくも俺を置いていってくれたよな。そのせいで、俺は死んだんだ。苦しみを倍で返してやるよ」
その悪意のこもった表情は誰も見たことなかった。
最初はリーフがオリバーのフリをしているかと思ったが。
「そいつ、リーフでもオリバーでもない!」
「分かった」
そう言った途端、カナリーは銃口をリーフに向け、首をしめている手に弾丸を放った。
「ぎゃー!」
手を撃たれたリーフの体は、叫び声を上げる。
ジェイはその勢いで落とされた。
ごほごほ、咳をしている。
「…本当に早いですね」
「まあ、最悪を考えてたからね。あいつの手を見て」
撃たれた手は、火傷でただれていた。
「弾に聖水をまぶしたんだ。普通の人間には何も起きない。でも、火傷しているってことは…」
「悪魔…」
「はあー」
悪魔は大きなため息をついた。
「まさかこんな早くバレるとは予想外だったな」
「あなた、ジェイにオリバー様を蘇らせる方法を教えてくれた悪魔よね。何であなたがいるの!オリバー様はどこ!?」
「知らねえよ、バーカ!」
悪魔は、リーフでは見たことのないあくどい笑いをして、ジェイを見下していた。
「勇者なんて、最高に美味しい魂。知っていたら、俺が食べてえわ。せっかく、勇者が死んだから、魂いただけると思ったのに、見つからねえし。むしゃくしゃするから、代わりにこの街中の魂喰ってやろうと思ってな。そのため、自由に動ける体が必要だったんだよ」
「ジェイを騙していたのね!」
ジェイは慟哭する。
「俺の言う通り、動いてくれて助かったぜ。でも、お前は用済みだ。消えな」
悪魔はジェイに手をかざした。




