第63話 友誼
気がつくとマーズの騎士や魔国の騎士も加わり、アオイを中心に輪ができていた。何故か食べ物も運ばれて来ている。そこへミツイ班も合流した。
「おいおい、マーズ伯爵に怒られるぞ」
「いやー。アオイさんに無理矢理飲まされているんだ」
「そうか。じゃあ仕方ないな」
そう言うとミツイも酒を飲み始めた。
「ヒスイさん。ルカさんに大変に助けられました。とてもすごい風の使い手でした」
その言葉に反応したのはマオである。
「そうでしょ、そうでしょ。僕のルカはすごいでしょ!」
「マオ班長。恥ずかしいのでそのくらいで…、それとあなたのルカではありません」
ルカの抗議などマオは聞いていない。
「いーや、僕のルカは本当にすごいよ。魔法では僕もかなわないもんね!」
「あなたのルカではありません。とにかく、班長…魔法が下手じゃないですか…」
マオはルカに、冷静に分析される。そこへアオイも追い打ちをかける。
「マオは脳筋だからね」
「アオイさんまで、そんなこと言わないでー」
アオイに取りすがって抗議するマオを無視して、ルカはミツイに向き合った。
「こちらこそ。差し出がましいことをしまして」
「いえ、是非また、ご一緒させていただきたいものです」
◇
アオイもヒスイも、とてもうれしい気持ちだった。三年前には敵だった相手とこうして酒を飲めることが。
「ヒスイ、楽しいね」
「はい、アオイ。楽しいです」
そこへダスティスとマーズが会場へ入ってきた。
「もう飲んでいるのか?」
不機嫌な様子のマーズへジルバが答えた。
「は!アオイ殿に無理矢理飲まされておりました!」
その答えにマーズはため息をついた。ダスティスはくすくすと笑っていた。
「そう。じゃあ仕方ないわね。ねえ、マーズ。私もお酒をいただこうかしら」
「そうですな。アオイ殿に無理矢理なら仕方ない」
そんなアオイは皆を見回しながら、ご機嫌だった。
「ところでアオイさん。うちのマルシムがアオイさんの侍女になりたいと言い出しまして」
「ああ、そうなんだよ。どうしよう、マーズ」
マーズの後ろでマルシムは小さくなっていた。
「その粋や良し!儂は常々マーズ騎士は外の世界を見なければいかんと思っていました!
マルシムは見どころのある若者です。アオイさんの下で学ぶことで、マルシムの世界は広がるでしょう!
マーズ領にとらわれていてはいかんのです!」
アオイはヒスイのことを考えていた。
(確かにヒスイはアルカディアとのダンスの件や、服のセンスはマーズ領の変な常識にとらわれているもんなぁ。
というか、それってマーズの所為なんじゃない⁈)
「お、おう。わかったよ。マルシム。本当に良いの?」
「はい。よろしくお願いします!」
元気に答えるマルシムへアオイは杯を渡した。
「よし、じゃあ乾杯だ!よろしくね。マルシム」
「アオイ、もう一人従者が増えているね。紹介してよ。」
ダスティスの言葉にアオイは目を泳がせた。この場にドラゴンがいると皆、引いてしまうのではないかと思ったからだ。
「あ、ああ。そうだね。これはフレイル。えー、古代竜です。私の僕になりました。皆さん、よろしくお願いします」
「なるほど。アオイ。これからは魔国のためにフレイルの力を借りられるということね。すばらしいわ」
ダスティスの言葉に会場がわいた。
「はい、私は最も古き竜の一人、炎竜のフレイルと申します。アオイ殿の従者として魔国のために努めます」
フレイルがアオイの足元へ傅きながら言った。
「アオイさんはやっぱりすげーぞ!」
「うおー、アオイ!アオイ!」
予期せぬアオイコールに当のアオイが戸惑っていた。ヒスイはそんなアオイの肩をポンと叩いた。
「良かったですね。アオイ」
「うん。そうだね!よし!」
やおらアオイは立ち上がるとダスティスとマーズの手を取って高々と差し上げた。
「三年前に敵として戦った相手がこうして手を取り合っている!必ず魔国は解放される!皆、力を貸してほしい!!」
「アオイ!アオイ!アオイ!」
鳴り止まぬアオイコールに皆、希望を見ていた。————必ず魔国は解放される…と。
◇
宴もたけなわ。
スサノはヒスイに話しかけたかった。だが、ヒスイはマーズの騎士達から二重三重に囲まれており、近づけもしなかった。
「はあ…」
スサノのため息をジルベルクが聞きつけた。
「嬢ちゃん。どうした」
「ああ、ジルベルクさん。ヒスイちゃんと話したいけど、なかなかきっかけがなくて」
「そんなこと」
朴訥なジルベルクはそう言うと、騎士達をかき分けてスサノをヒスイの元まで連れていった。
「ほれ。ヒスイ副隊長に話したいのは嬢ちゃんの武器のことだろ?」
スサノは何でわかるの?という顔をしてジルベルクを見た。そして、
「ヒスイちゃん。あのね」
「スサノ。渡したい物があるの。はい!ジルベルクにも手伝ってもらいました」
ヒスイはそう言うと中が空洞なパイプのような物をスサノに渡した。
「あ、ありがとう。ヒスイちゃん」
スサノはすごい武器がもらえるかとワクワクしていたが、意外な物を手渡されて戸惑っていた。
「ふ、ふ、ふ。これが電磁銃です!」
自信ありげなヒスイに周りは心配になった。
「あ、あれ?皆さん、驚くところですよ…」
「えっ、えーと。ヒスイちゃん。これは何?」
「だから電磁銃です!」
自信あり気に胸を張って、ヒスイは答えた。
「スサノは魔法が得意だから、魔法で攻撃できる方が良いかと思って、ジルベルクと作りました。あ、刻印はアオイにお願いしたよ」
スサノは手に持った電磁銃を見た。全然すごそうには見えない。ただの筒だ。
「これはね。この穴にこれを入れて」
ヒスイはそう言うと紡錘形の鉄の弾を取り出して銃の穴に詰めた。
「そして、魔素をこめると…。電荷に変換された魔素が爆発的な力でこの玉を押し出すの。でね。この筒に光の刻印を仕込んでいてね。爆発的に押し出された玉を三重で加速させるのよ…」
早口でしゃべるヒスイに誰も何も言えないでいた。そんな場の空気をアオイが一変させた。
「ヒスイ!試射しよう!」
アオイの一言で場が試射の流れになる。
「でも危ない…」
「よし、外でやろう!」
渋々という感じでヒスイは了承した。
「それでは皆さん、外で実演します」
ヒスイが則すため、スサノは外へ出た。その後を皆がゾロゾロとついて来る。
「それじゃあ、危ないからあの山に向けて打ちましょう。スサノ、先を火山に向けて」
スサノは電磁銃を火山に向けた。
「しっかり持って。魔素を込めて。発射!」
電磁銃はバチバチという音を発して玉を押し出す。玉は三重の光の刻印魔法によって加速され筒の先から飛び出した。その衝撃とスピードは凄まじかった。弾丸は山肌に着弾した。凄まじい閃光と少し遅れて爆音、それに続いて爆風が皆の頬を揺らす。
「ふふん!どうですか!!」
自慢げなヒスイに皆の視線が集まった。
「ヒスイちゃん、これは威力があり過ぎる…」
「あ、大丈夫。魔素量をコントロールすることで威力は調整できるから…」
「そ、そうなんだ…」
スサノの顔は引きつっていた。
「しかもスサノの魔素にしか反応しないので、スサノしか使えません。万が一、敵に奪われても大丈夫!!私は失敗から学びました!!」
ヒスイは得意げである。
「ちょっと!アオイ!どうするのよ!」
ダスティスの抗議にアオイはうろたえた。
「いやー、私に言われても…!でもね、守護獣の討伐にはちょうど良いんじゃないかな…」
ダスティスは小首を傾げて少し考えたが、
「それもそうね」
簡単に納得していた。面倒だったのはマーズだ。
「うおー!ヒスイ!!なんじゃあれはー!儂も打ってみたい!!」
「あれはスサノしか使えないので無理ですね」
冷たくあしらわれたマーズはスサノを振り返った。
「スサノ殿。少し見せてくれないだろうか?」
マーズはスサノから電磁銃を受け取ると撫で回すようにその構造を調べ出した。
「ほう。ミスリルでできているのか。爆発に耐えるように強化魔法がかけられている。この整形技術はすごいな。どうやって形作ったのだろう?」
マーズが電磁銃に夢中になっている間、マーズ騎士と魔国騎士はヒスイの電磁銃を褒めたたえていた。
「うおー、ヒスイさん!!すごいぜー!」
「封印の解呪も間違いないぞ!!」
「ヒスイ!ヒスイ!」
ヒスイは湧き上がった皆からの称賛に戸惑っていた。ジルベルクがヒスイの側に来て自慢げに宣言した。
「儂らの副隊長はすごいだろ!!」
「うおー」
交流会の会場には、今日一番の歓声が響き渡っていた。
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