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魔族の将、二度目の人生を自由に生きます  作者: 灰銀朔太郎
第四章『ルマロス帝国』

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第40話



 走鳥を使う以上道の無い山越えや、深かったり幅の広い河越えなどは出来ない。

 渡りやすい道を選ぶとなると自然と関所の近くを選ぶ事になった。


 フードを被って走鳥で関所を迂回して国境を越え、道を少し進むと3人組の男に呼び止められた。

 ルキアに対応を任せる。


「よぉ、あんたら、どこから来たんだ?」

「…クレア王国からです」

「へぇ、何の用があってルマロスなんかに?」

「答える必要がありますか?」


 ルキアが突き放して返事をするが、このやりとりがすでに無駄だ。

 フードで顔を隠した女と子供に絡んでくるなんて()()()()用でしかない。


「女と子供の旅は大変だから手伝ってやるよ、へへ」

「結構です」


「相手しなくていいぞルキア、時間の無駄だ」


 うんざりしてきたのでフードを取り会話を遮る。


「っ!!ほぉ、魔族か。魔族がルマロスの地に来るなんて命知らずだなぁ、この国はな、人間以外に何の権利も無いんだぜ?」

「知っている」

「へっへっへ、魔族の女とガキの奴隷ならかなりの高値が付きそうだ!」


 そう言いながら碌に手入れもされていなさそうな(なまく)らな剣を抜いた。

 呆れて返事すら出なかった。

 こいつら魔族と戦った事はおろか出会った事すらないのだろう。


 マグナス(七星)みたいな人外は例外として、そもそも人間が魔族に勝つにはその5倍以上の数が必要というのが前世の時代の人魔共通認識だった。

 オレとルキアが()()()()()だったとしても10人居てもまだ心許無い。

 それほどまでに種族としてのスペックの違いが圧倒的なのだ。


「勝てると思ってんのか」


 短く答えて腰の裏に下げたナタを抜き打ちで投擲、ナタの行方を見るより早くもう一人の人間に飛びかかり額を素手で殴りつける。

 左拳は二人目の眉間に手首近くまでめり込み目玉が左右から飛び出していた。

 後ろでナタが胸に当たり肋骨と鎖骨を断って首を縦に裂き、下顎も砕き、その刃が上顎にまで到達した男がドサリと仰向けに倒れた。


「殺されたく無きゃこの国の事を教えろ」

「ひっ、ひぃぃ!たっ助けてくれ…!」

「殺すぞ、楽に死ねるかどうかしか変わらん、さっさと答えろ」




 ぺらぺらと喋った男を約束通り一撃で殺してやった後に話を整理する。


「10年ほど前に出来た国で、帝都に住んでる金持ちは略奪や奴隷を売って財を成した人間か、まぁ予想通りの国だな」

「中には良い人間もいるのでしょうけど…」

「かなり少数だろうな、こいつらはわざわざ顔を隠したオレ達が異人種だと当たりをつけて狩りに来た。多分そこらの村や集落でも表向きは優しくして夜中に村人全員に囲まれてるなんて事態は避けられんだろ」

「ずっと野宿で帝都まで行く事になりそうですねぇ」

「帝都内でも観光は出来なさそうだな。てかもうフード被るのやめないかルキア?」

「え、揉め事に巻き込まれまくる事になりますが大丈夫ですかね?」

「返り討ち返り討ち」

「えぇ…」

「シェクルト的にも先に敵意向けられたら反撃していいんだろ?」

「それはそうですけど…」


 そんなやり取りをしながら殺した3人の荷物を漁る。

 金はほとんど持っていなかった、そりゃそうか。

 国境の近くで顔を隠した異人種らしき相手を襲っていたような奴らが金を持っている訳がない。


「とりあえずこいつらの住んでた村とやらへ向かおうぜ」




 殺す前に男に聞いていた村へと夕方に辿り着いた。


 村の人間達がこちらを見てヒソヒソしている。

 当然もうフードで顔を隠してはいない。


 村の中へ進むと高年の、しかし足腰はしっかりした男が近づいて来た。


「魔族がこの村に何の用だ?」

「旅行客だよ、この村出身だとかいう若者3人に村の位置を教えてもらってな」

「あいつらか…それで?この村に何の用だ?」


 名前も聞かずに殺したから察してもらえて助かる。


「今晩泊めて貰おうかと思ってな、空き家か何か借りられないだろうか?」

「余所者を、ましてや魔族を泊められるような家は無い」

「あー…この村を紹介してくれたあの3人の誰かの家でも構わないんだが。『オレの家に泊まればいい』ってあいつらも言ってたし」

「あいつらが?自分の家に魔族を…?……わかった、泊めてやる、ついて来い…」



 かなり訝しがられたがどうやら泊まれそうだ。

 着いていくと一軒のボロ小屋に案内された。


「夜は出歩かないでくれ、村人が不安がる。明日の朝イチで出てってくれ」

「わかった、わかった、朝になったら出て行くよ」


 そう言って村の代表らしき男と別れて小屋へ入る。


「正気ですかゼノ様?あの感じだと今晩中にでも襲われかねませんが?」

「返り討ちにすればいいじゃん」

「そうですけど…」

「ちょっくら水汲んでくるわ、売り物だから流石に殺されはしないと思いたいが異種族憎しで何があるかわからんからな」


 小屋を出て水を汲んで戻る間も、もう日も落ちかけているというのに村人がオレの方を見てヒソヒソしていた。


「凄いぞ、外の村人。こりゃ全然落ち着けないな、はは」

「笑い事じゃないですよ、もー」

「来るならさっさと来てくれねーかなー」




 ───────────────────────────────────




 深夜、目を閉じて休んでいると小屋を取り囲むように複数人の気配を感じた。


「…おい、ルキア、あいつらヤる気らしいぞ」

「あぁ、ゼノ様が気まぐれでこの村へ寄ったせいでまた命が…」

「あいつらが仕掛けてこなきゃ普通に明日の朝に大人しく出て行くつもりだったぞ?」

「こうなるって分かってましたよね?」

「まぁな」

「もー…」


 ルキアは最近よく『もーもー』言うようになった。

 だがその言葉に続くのは『しょうがないですねー』だ。




 息を潜めているとどうやら火を放つ事にしたらしい。

 小屋の周りに油を撒いている様だ、窓に松明の明かりが見え、それが近づいて小屋に火を点けた気配がした。

 小屋の周囲が一瞬で炎に包まれ窓の外が明るくなる。

 どうやら寝起きに燃えながら出てきたところ村人で袋叩きにする計画のようだ。

 あの村長らしき人間、流石は数十年生きてるだけはあるな、魔族は奴隷として捕らえる事は困難と判断したか?

 もしかすると出てきた所を殺さない様に痛めつけて捕まえる気かもしれない。


「どうするんですかゼノ様?」

「とりあえず小屋を吹き飛ばすか、ルキアはそのまま床に伏せてろ」


 そう指示した後、魔力と闘気を込めてクリヴァールを振るう。

 強めに振られたクリヴァールにより発生した衝撃波と爆炎が背にした小屋の壁1面だけを残し、残りの壁3面と屋根を吹き飛ばした。

 周囲に火が付く板がバラバラと散る。

 取り囲んでいた人間達は突如爆発した小屋に驚き尻餅をついている者までいた。


「おぉ!村の人間達よ、こんな夜更けにお揃いで。一体何の御用かな?」

「…お前が日中出会ったという、この村を教えた若者はどこへ行った?」

「んん?まだ戻っていないのか?」

(とぼ)けるなッ!」

「…死んだよ、ははは。当然だよな?先に剣を抜いたのはあっちだぜ?」

「こ、ここっ、こいつ(魔族)らを殺せぇぇぇ!!!」


 村長が村人達に号令をかけると女や老人、子供も関係無く村人達が包丁や鎌、手製の槍、(クワ)など思い思いの武器を手にこちらへ襲い掛かって来た。


「うーむ、こうなってしまっては仕方ないな。なぁルキア?」


 と彼女へ視線をやるとジト目でこっちを見ていた。




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