第39話
思い付きでルマロス帝国への旅行が決まった。
ルキアとのんびり朝食を食べた後、宿の女将に当分帰って来ない事、宿を引き払う事を伝えると『まだ十日以上残ってるじゃないか!』と残り日数分の宿代を返された。
子供の姿ってのもあるのだろうが、魔族相手だというのに良い人間だ。
ルキアと共に街で長期旅行用の食料を買い込み、荷車が壊れていないかチェックを済ませる。
「ここからルマロスへの定期便とかもあるんだろう?走鳥で行くのか?」
「ありますが自分のタイミングで休んだり進んだり出来ないのですよ。メリットは複数人で固まっていた方が野盗や魔物に襲われづらいのと返り討ちにしやすい、くらいですね。それに私たちは魔族ですし…」
「魔族だと何か不都合があるのか?」
「魔族がと言うより人間族以外が、ですね…。クレア王国にいると忘れそうになりますよね…、我々が剣聖様の関係者だと周知されているのもありますし」
「ああ、ルマロスの国境越えてからが問題なのか」
「ええ、そもそもシェクルト教団がクレア王国を拠点に選んだのも魔族へ対する忌避感が昔に比べ薄いというのがありましたから」
「ルドラ王国は?あっちの方が異人種に優しいだろ?」
「ドワーフ達のルドラ王国は異人種に優しいのでそもそも救うべき魔族やその被害者自体が少ないというのもありますね」
「あー、オレの前世でも人間との戦争中にルドラは中立だったしな、なるほどなぁ…」
二人で雑談しながら旅の準備を整えルマロス帝国へ向けて王都を発つ。
「あ、多分一月以上かかるだろうからジジイの家に寄ろうぜ」
「そうですね、次に戻って来られるのはどう考えても二週間以上先になるはずなので」
別に急ぐ旅でもなし、行きにジジイの家へ寄って不在なら手紙でも置いておこう。
夕暮れ、ジジイの森の家に着いた。
どうやら留守の様だ。まぁ大陸中を動き回ってるって言ってたし、事前に告げずに来れば出会えるはずも無い。
「今日はここに泊まろうか、次に屋根のある場所でいつ寝られるかわからないしな。おーい、クオン。お前も家の中に入れよ」
「よろしいのですか…?」
もう隣に立っていた。
相変わらず気配を感じない。
「付いて来てんのはバレてんだ、今更お前だけ家の外にいる意味なんか無いだろ」
「それもそうですね、ルキアさんはよろしいのですか?」
「構いませんよ?」
ルキアも了承している。
三人で夕飯を取りながら今後の事を話す。
クオンは口を挟まずもぐもぐしている。
「ルマロス帝国って魔族が入れるのか?」
「関所を通れば関所を通った証明がもらえると聞いた事はありますが、多分私たち魔族は通れないでしょう」
「試す意味も無い感じか?」
「門前払い、攻撃される可能性すらあります」
「どうせ攻撃されるなら関所通る意味もないか…」
「人権の無い獣人奴隷と言えど安い物ではないので、探すなら小さな町や村では無く帝都が良いでしょうね」
「ふむ、おいクオン」
もぐもぐしたままピタっと止まりこちらを見るニンジャ。
「銀髪の狐獣人って数が多いのか?」
「もぐもぐ…ごくん。いえ、かなり少数氏族です。獣人は猫か犬に別けられ、そこから枝分かれした犬系の中の狐族であり、そのごく一部が銀狐族なので」
「奴隷商人に接触して銀狐族探したら案外簡単に見つかりそうじゃねーか?クオンは今までルマロス国内で妹を探そうと思わなかったのか?」
「獣人がルマロスで活動するのは自殺行為です」
「今回はよくついて来られる事になったな?」
「普通に任務から外されそうになりましたよ?」
「外されそうだったのかよ…」
「獣人だから適任では無いとかなんとか。まぁ『私以外には務まらない』とか『ゼノに密偵の存在がバレたら不興を買う』とか言って押し通しましたが」
「押し通したのか…」
「どうせ誰にも見られずゼノの監視をするんだからそこがクレア王国だろうとルマロス帝国だろうと関係ありません」
「確かに?あ、オレとルキアも魔族な事隠さないとダメか?」
「どちらでもいいのではないでしょうか?」
「いいのか?」
「クレア王国内ではありませんし。ルマロス帝国内は人間以外全て敵という国なのでどうせ戦闘は避けられませんよ」
「ふむ、じゃあ隠さなくていいか」
三人で順番にシャワーを浴びた後、ロフトのベッドでルキアと眠る。
クオンは『床で良い』『どこの世界に密偵と同衾する監視対象がいるのか』と拒まれた。
まぁこのベッドに三人は流石に狭いか。
「クオン、妹見つかると良いな」
返事はなかったがいつ呼びかけても瞬時に現れるニンジャだ、ちゃんと届いているだろう。
ルマロス帝国編の決着3パターンくらい考えててどれにするか悩んでます
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