第4話
「ピカピカ。邪魔しないでよ」
太郎は父親とキャッチボールした時のことを思い出してピカピカに文句を言う。もちろん返事はない。ただの独り言だ。
ピカピカが邪魔でボールを見失った時、父親の顔はすごく怖かった。多分自分を心配していたのだと思う。ピカピカを振り払う動作をすると決まって両親は怖くて、悲しそうな顔をする。
頑張ってボールを上手くキャッチした。父親に喜んで欲しかったし褒めて欲しかった。掴んだボールを見せると父親は笑った。太郎も笑った。
でも・・・と太郎は考える。自分はまた両親を心配させる。ずっと前に病院に連れていかれた時のことが忘れられない。あの頃の両親の顔。
ピカピカが見えるというのはやっぱり悪い病気なのかな。病院の先生はどこも悪くないと言ってたし、それを聞いた両親は笑顔だった。自分はどこも悪くないはず。
道でつまずいて転ぶと血が出て痛いけど我慢できる。泣くこともあるけどすぐに立ち上がれる。壁にぶつかったり、木の枝に引っかかったりするのも平気だ。けれど両親が自分を心配して、なのに自分は何も出来ないことには悲しくなる。
悔しい。何でみんなにはピカピカが見えないんだろう?自分は悪くないのに。泣きたい。泣けば母親が心配して優しくしてくれる。父親がおやつを買ってきて笑いかけてくれる。
でもそれじゃダメだ。心配させちゃダメだ。
太郎は今までただ眺めて振り払うだけだったピカピカを、どうにか邪魔にならないように出来ないかと考えるようになった。
目の前のピカピカを手で払う。最初は眺めるだけだったピカピカはある日触ることができるようになった。触ると言っても感触があるわけではない。ただ手で払ったり、足で蹴ったりが出来るだけ。
口で吸いこむことも出来る。息を吹きかけて散らすことも出来る。おかげでピカピカに視界を奪われることが少なくなった。しかしピカピカはどこにでもある。突然現れたりもする。太郎がいくら手で払っても追いつかない。
太郎は幼稚園の帰り、公園で遊んだ時のことを思い出した。砂場で作った泥団子。上手く作れなかったけど土を固めて丸めた。あれをピカピカで作ってみよう。
包むようにそっとピカピカを集めてみる。するとピカピカは指の間からこぼれて、手で包むと弾けるようにバラバラになってしまった。
太郎は時間を忘れてそれに熱中した。




