表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女コミカライズ連載開始!
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/212

137話 わたしがソロンの力になれる!

 俺はもう一度、机の上の本を見つめた。

 その赤い本は、ルシルによれば魔導書なのだという。


 ルーシィの研究によって生まれた、偉大な魔法。

 それがこの魔導書には秘められている。


 ルシルはルーシィの弟子でもあり姪でもあるから、おそらく間違ったことは言っていないだろう。


 ただ、ルシルは、これを俺たちにとって必要なものだとも言った。

 その理由はわからない。


「ルーシィ先生ほどの天才が産み出し大魔法なら、俺には到底扱えそうにもないな」


「そうね。きっとソロンには使えないと思う」


 あっさりとルシルはうなずいた。

 魔術師としては平凡より少し上なだけの俺と、百年に一度の天才とすら呼ばれるルーシィでは、格が違うのだ。

 だから、俺にこの魔導書を使うことができなくても不思議ではない。


「それなら、どうしてこれが俺たちにとって必要なものなのかな」


「わからない?」


 じっとルシルは俺を見つめた。

 赤い瞳が、試すように俺を射抜いている。


 考えて、俺は一つの可能性に思い当たった。


「もしかして、フィリア様ならこの魔導書を使いこなせるってことかな」


 ルシルは黙ってうなずいた。

 俺とフィリアは顔を見合わせた。


 フィリアが首をかしげる。


「わたしには使えて、ソロンには使えないってどういうこと? わたし、ソロンに比べたらほんのちょっぴりしか魔法を知らないよ?」


「問題は魔法の技術ではなくて、魔力量なの。だから、普通の魔術師にはこの魔法を扱えない」


 そして、ルシルは魔導書の赤い表紙をつかみ、中身を開いた。

 そこにはやはり謎のうねるような文字が書きつけられていた。


 それぞれの文字の区切りが不分明で、しかもどの文字もかなり細かな線が交じあって出来ている。


「この文字は……」


「西方古代文字。二千年前にアレマニア・ファーレンで使われていた文字なの」


「へえ……」


 アレマニア・ファーレン共和国は、帝国の西方にある国だ。

 そして、大共和戦争において、俺たちの帝国と激しい戦いを繰り広げてもいる。


 この魔導書に書かれているのは、アレマニア・ファーレンの古代魔法かなにかの方法を用いた魔法なんだろう。

 ルーシィが敵国の古代魔法に通じている理由を俺は考えた。


 そのとき、フィリアが楽しそうに声を弾ませた。


「これ、すごい魔法が書かれてるんだよね!」


「ルーシィ先生の大魔法ですから」


 ルシルは戸惑うように答える。


「しかも、その魔法って、わたしにしか使えないんだよね?」


「はい……」


 フィリアはきらきらと目を輝かせていた。


「使ってみたい!」


 フィリアは好奇心旺盛だし、自分にしか使えない強力な魔法があると聞けば、飛びつくのも当然だ。

 フィリアがルシルの手の魔導書に手を伸ばす。

 が、ルシルはさっと身をかわした。


「……殿下に預けることはできない」


「えー、どうして?」


「まだ殿下は魔術師として未熟だから」


 未熟、と言われて、フィリアはうっ、と言葉に詰まり、少しへこんだ様子だった。

 しょげかえるフィリアの肩を俺はぽんぽんと叩いた。


 ルシルの言葉のとおり、フィリアはまだ魔術の初心者だ。

 だから、フィリアに膨大な魔力量があるといっても、魔導書に記された大魔法を教えるには不安が残る。

 ルシルは言う。


「だから、ソロンには、フィリア殿下がこの魔法を使えるように手助けしてほしいの」


「なるほどね」


 ただ、この魔法の中身とはいったい何なんだろう?


 ルーシィの扱っているような特大の炎魔法だったり、あるいは絶大な回復力を誇る治癒魔法だったりするのだろうか。


 だが、ルシルによれば、そのどちらでもなかった。


「支援魔法だって聞いてる」


「支援魔法?」


「そう。誰か別の人の力を高める支援魔法」


「具体的な効果は?」


「わからない。私もそこまでは聞いていないの。けど、ルーシィ先生はあなたたち二人に必要なものだって言ってた」


「わたしたち二人に必要なもの……」


 フィリアはルシルの言葉を繰り返した。

 たしかに、ルーシィの伝言の言い回しは意図的なものだろう。


 魔法を使えるのはフィリアなのだから、フィリアにとって必要なものと言っても良いはずだ。

 ただ、なぜルーシィがそう言わなかったのか、俺にはわかった。


 やがてフィリアもぽんと手を打った。


「そっか。わたしがこの魔導書を使えば、ソロンの力になれるもの!」


「そういうこと」


 ルシルははじめて、かすかに笑みを見せた。

 フィリアの支援魔法の援護を受け、俺が前衛として戦う。


 それはバランスの良い戦い方だ。

 ただ、俺はフィリアの冒険者としての相棒ではなく、師匠なのだ。


 弟子に支援魔法をかけてもらうというのも、少し変な気がする。

 俺がそう言うと、フィリアはくすっと笑って、俺の手を握った。

 

 どきっとして俺が後ずさると、フィリアも一歩前に出て、俺に近寄った。


「ソロンの力になって一緒に戦えるなら、わたしは嬉しいな。ソロンは違う?」


「ええと、嬉しくないとは言いませんが……」


「なら、いいでしょう?」


「ですが、フィリア様を危険にさらしてしまうかもしれません」


「大丈夫。ソロンが守ってくれるもの」


 そう言って、フィリアは花が咲くような綺麗な笑みを浮かべた。

 すでにネクロポリス攻略戦のときも、俺はフィリアの力を借りている。


 なら、ためらう理由はないかもしれない。


 ルシルがそんな俺たちを複雑そうな表情で眺めてた。

 だが、やがてルシルはふたたび口を開き、静かに言った。


「ルーシィ先生の伝言はまだあるの」

☆作者からのお知らせ☆

フィリアが可愛い! 続きが気になる!という方は、ページを下にスクロールしていって、ブックマークボタンやポイント評価欄で応援いただければ幸いです!


感想やレビュー等々も書いていただければとてもうれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ルシルはまだまだ隠してる事がありそう。 支援系ならまあ、と思わないでもないけどフィリアに力を持たせるのはちょっと怖い。
2020/02/25 10:12 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ