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姉達の胸中3

スズside

 私は部屋から出て、センリン達の様子を見に行く事にした。

 あの牛女の所為で部屋の居心地が悪いったらありゃしない。

 別にビビってるとか、そういう訳じゃないけどね。


 サニャとあいつを二人にするのは、ちょっと後髪が引かれる思いはあったけどね。

 だけど、なにやらサニャは先程のやり取りであいつを随分と気に入ったようだ。

 正直言って何処にそんな要素があったのか、不思議でしょうがない。

 完全に因縁を付けられていたようなものだった。


 ……まぁこちらもあいつの言い分を、否定できる立場じゃないんだけどさ。


 私は顔を叩いて沈んだ気分を一新させる。

 いつまでも、あいつの言葉を引きずっていても仕方がない。

 あの女が攻撃的なのは今に始まった事じゃないんだから。

 いちいち真に受けてたらやってらんないわ。


 というか、そもそも出会った当初は気にしてなかったしね。

 気にしてなかったんだけどなぁ。


「アーもう! ダカラー!!」


 私は癇癪を起して両手で無造作に頭を掻いた。

 そもそもこれは仕事なんだ! だから仕方ない。

 今あいつの元に向かうのも監視をしなければいけないからだ。

 この前みたいに、誰かが襲い掛かってこないとも限らない。

 言ってしまえばあの子を守る事にも繋がるんだから。

 私はそう必死に自分に言い聞かせて歩みを進めた。


 宿屋の裏手に回ると、目的の連中が居た。

 しかし想像と違って、別段体を動かしているようではなさそうだ。

 私は不思議に思い彼女達に近づいていく。


「ナニ? ケンポーを教えてんじゃないワケ?」

「おぉう! え、えぇ今は休憩中ですよ」


 センリンは私の存在に気が付くと、あからさまに身構えた。

 この前ちょっと怒ったのをまだ気にしているらしい。

 長い両耳はまるで許しを請うように垂れ下がっている。

 背は高いくせに、変に気がちっちゃい奴だ。


 視線を動かすと、あいつは少し離れた所でソーラと何やら話し込んでいた。

 見た感じ雑談と言った感じではなく、少し真剣な空気を漂わせている。

 どう見ても休憩をしている感じには見えないのが気になった。


「ナニやってんのアイツラ?」

「はぇ!? え、いや、なんかソーラに魔法を教わっているとかで」

「ハァ? マホウ? ソーラじゃなくてアイツが教わってんの?」

「わ、私がさせたわけじゃないですよ! 自分から言ってソーラが了承したんですよ!」

「ベツに責めて無いから、ビクビク話すんじゃないわよ」


 私がそう言うとセンリンは安堵の息を漏らす。

 だけど信用ならないのか、疑わしい目を私に向ける。

 コイツもコイツでいい度胸よね。


「なんでも、ソーラの鼠が凄いとかで詳しく聞きたいらしいですよ」

「フーン」


 そう言えばちょくちょく、あの鼠を羨ましそうにしていた気がする。

 何というか、玩具を欲しがる子供の目とかあんなもの近かった気がする。

 今にして思えば、あいつはあんまり物を欲しがったりはしないのよね。

 違う世界に飛ばされてあちこち歩き周ってるんだから、そんな余裕もないんだろうけど。

 それでも不平不満すら口にしないんだから大したものだ。


 明確な我儘と言えば、それこそ今のこの時間がそうだろうか。

 拳法に関して言えば、私達に迷惑を掛けたくない一心によるものだろう。

 それに加えて魔法の勉強? 最近のあいつは少し無理をし過ぎな気がする。

 だけど今教わっているあれは、あいつが初めて羨んで臨んだものなのかもしれない。

 そう思うと、あまり注意する気が湧かなかった。


 同時に、私ではそれを与える事が出来ない事実に心がざわついた。

 どうにも最近の私はおかしい。

 なんだか直ぐ面白くない心持ちになる。

 

 魔法の研究か。

 ふと、あいつの真剣な表情を見てペルシア様の研究の事を思いだす。

 何をどうするなんて詳しい事は分からないし、知らされていない。

 だけどペルシア様が思い描く魔法技術の向上。

 それが目の前の光景と同じことで済むのだったら、どれだけ良かっただろうか。


 そうすれば私があいつに、あんな風に魔法を教わる事もあったかもしれない。

 あいつは私に物を言えることに、ちょっと得意気になるに違いない。

 だけど照れくさいから長くは続かなくて、いつもの調子に戻ってそれで私が―― 


「スズ? どうしました?」

「――ナンデモナイ。ジャマしたわね戻るわ」

「声はかけて行かないのですか?」

「ヤメとく。きっと口出ししちゃうカラ」


 もう嫌われ役は沢山だ。

 その時が来るまではせめて。


「……そんな気にせずとも、心配して貰えて喜ぶと思いますよ」

「あぁソウネ。ソーカモネ」


 あいつはきっと優しいからそう思うかもしれない。

 人の気も知らないで。

 のんびりと分かったような口を聞けるこいつが、少し羨ましかった。

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