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殺人事件と土人形1

少年side

 朝起きると、町が妙に騒がしい事に気付いた。

 どうやら常駐している騎士団の人達が、色々と動き回っているようだ。

 僕達の行方を捜しているのかと危惧したけれど、どうやらそうではないらしい。




「殺人?」


 ソーラはコクリと静かに頷いた。


「殺された、魔導士、港の」

「物騒ですねぇ。殺人なんて初めて聞きました」

「森に引きこもってりゃそうでしょうよ」


 センリンが僕を庇う様に肩を抱く。

 僕が怖がっていると思っているんだろうか?

 大丈夫だと言っても放してくれないので、そのまま続ける。


「港って、僕達が降りてきた所の?」

「そうなんじゃない? 他のは何処も遠いし」

「大忙し、騎士団、駆けまわってる」

「随分お詳しいですね? どこで聞いたのですか?」


 センリンが訊ねると、ソーラの服から鼠が顔を出した。


「放ってる、駐屯地、見張ってる」

「抜け目ない事」

「凄いなぁ、僕の学年だと使い魔って習わないんだよなぁ」


 魔法で疑似的な生物を作るのは、僕の世界でも結構高等技術だ。

 学年も結構上に行かないと授業でやらないし、選択の専門分野だったりする。

 この世界でこれだけ器用に操れるのは正直凄いし、うらやましい。

 僕がそう言うと、ソーラは得意げな顔で胸を逸らした。


 ソーラが鼠を通して聞いた話だと、一時的に通行の審査を設けるらしい。

 犯人を遠くに逃がさない措置の一つなんだろう。


「チッ、不味いわね」

「何か問題があるんですか?」

「要所に騎士団が控えてるのよ? ついでに私達がしょっ引かれる可能性がある」

「成程、そう言えば私達も追われてる立場でしたね」


 呑気に笑うセンリンにシスターは溜息を吐いた。


 陸路では各地に大きな門を設置してあるらしい。

 普段は特に通行の制限はないらしいけど、こういった場合に通行審査、制限を行うんだとか。


「へぇ。でも犯罪が起こるたびに通行止めなんかしてたら、常駐してるようなものじゃない?」


 僕は、素直に自分の疑問を口にした。

 僕の世界でも殺人までは行かなくても、軽犯罪はそれなりの頻度で起こっていた。

 こう言ってはアレだけど、ここの治安具合はそれに比べると多分悪いしね。


「そこまでしない、普通は」

「まぁ、魔導士だからじゃないかしら? 貴族程ではないにしろ、それなりの扱いだし」


 なるほど、国の与えた栄誉ある称号である魔導士が殺されたからか。

 ペルシアに仕えていたような、王族に重用されてる人もいるんだろう。

 そういう意味では、反国家勢力扱いとして犯人探しに躍起になるという事かな。


「その理屈だと、結局私達の件で通行審査されてたのでは?」

「……それもそうね」

「ま、まぁ事前に分かっただけでもいいんじゃないかな」

「大丈夫」


 地味に八方ふさがりになっていた所にソーラが口を挟む。

 彼女の方には鼠が乗っている。


「出てない、昨日から、駐屯地、一度も、話題、屋敷の」

「はぁ、本当に便利ですねその鼠」

「それが事実である保証は? 私達を油断させる罠なんじゃない?」

「そんな言い方しなくても、それだったら通行審査がある事自体言う必要ないよ」

「……そうね。悪かったわ」

「気にしてない、平気」


 シスターがぶっきらぼうに謝ると、ソーラは笑ってそれを許した。

 確かに元々屋敷ペルシア側の人間だし、警戒するのは分かる。

 けど、僕はどちらの事も好きだから、出来れば仲良くして欲しいなと思う。


「それでも、あまりここに居座るのも得策ではないわね」

「殺人の方を優先しているだけで、直ぐに情報が回るやもしれませんしね」

「まだ騎士団全域に話が言ってるわけじゃないみたいだし、案外普通に通れないかな」

「個人的には反対ね。幾らなんでも綱渡りに過ぎるわ」


 シスターの意見はその通りだけど、それだと身動きが取れなくなってしまう。

 そこにセンリンが名案とばかりに声を上げた。


「では私達が、殺人犯を捕まえましょう! さすれば審査もなくなりましょう」


 自信満々な彼女に僕達は視線を集める。

 三人はそろって溜息を吐くのだった。

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