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成年後見制度申請奮闘記  作者: 貫之
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後見開始までの道のり

 ここで審判手続きの流れをご紹介しておきましょう。

 まずは申立の準備。後見センターなどに相談して管轄地域を確認の上、必要書類を入手、あるいは地方家庭裁判所のホームページからダウンロードします。


 書類に記入し、各証明書や添付するコピーなどの準備ができたら、すべての書類を管轄の裁判所に連絡、問い合わせの上、持参、あるいは郵送します。


 この申立をすると、いかなる事情があろうとも裁判所の許可なく取り下げることはできません。途中で自分が望んだ人が後見人に選任されそうもないからと言って、取り下げることは原則できないのです。十分にご注意ください。


 その後調査に入ります。調査と言っても要は面接です。申立人と、候補者と、本人を交え、面接官が面接をします。ただし、本人が裁判所に来られない、面接をしても内容が理解出来そうもないなど相応の理由があれば、本人不在で面接が行われます。同意書の提出がない場合、親族について書面による照会が行われることもあります。


 この時申請した診断書から裁判所が必要と判断した時、さらに鑑定が行われる場合があります。その時は診断した医師に相談が必要で、鑑定費用も十万円ほど必要になります。


 そして後見・保佐・補助開始の審判がされます。本人の財産状況などによっては、申立人の候補者ではなく、弁護士、司法書士などを選任したり、そうした人に後見人支援信託と言う特殊な資産管理法で運用させたり、さらに監督人と言う後見人を監督する人を選任する場合があります。


 これは本当に悲しいことですが、身内の後見人が資産を勝手に使いこんだり、職業後見人が報告義務を怠ったり、ごまかしたりして横領してしまうことがまれにあるのです。(もちろん犯罪です)


 ですから資産運用の必要性が認められるときは、裁判所が監視する下で行われる後見人専用の信託、「後見人支援信託」と言う特殊な運用方法を行います。その知識を持ち、責任を負える弁護士や司法書士などが、選任される場合があるのです。


 そして、その後見人が確実にその責任を果たしているか監督するのが、監督人です。毎年職務を正しく行っているか、事務に問題がないか裁判所が確認します。そして後見人の財務状況とそれを裏付けるコピーの提出が求められます。


 これはたとえ親子であろうとも、利用者と後見人と言う立場となったからには、同様に行われます。後見人は利用者本人の財産と、自分の財産を、金額の大小にかかわらず別会計で記録しておく必要があります。家計簿気分は通用しません。これが出来ないようでは後見人として選任するわけにはいかないのです。


 こうして様々な要素を判断して、後見開始の審判は下されます。しかし、すぐに後見開始となるわけではありません。審判が告知されてから二週間の猶予期間があります。

 この猶予期間内に後見人の決定に不服がある、審判内容に納得がいかない場合などは、裁判所にその旨を訴えます。


 二週間の猶予期間が何事もなく過ぎると、初めて審判は確定します。この時点で後見人は正式に就任したことになります。しかし、これですぐに仕事にとりかかれるわけではありません。これから登記が必要になります。


 まずは裁判所から東京法務局に対しての登記に約一週間。そして法務局での登記に約二週間かかります。さらに裁判所から後見人に登記番号が通知されるまで一週間かかり、この番号を受け取って初めて後見人はその職務に当たることができるのです。


 責任がとても重いだけに、そう簡単に許可も下りないのでしょうね。


 申立人が直接かかわって動く事が出来るのは、基本面接までです。審判に不服があれば別ですが、なければそこから先は裁判所にゆだねるほかにありません。


 そして申立人が裁判所と連絡を取り合う必要も無くなります。しかし後見人はそこから裁判所との長いお付き合いが始まります。就任後一カ月以内に初回の財産目録を作成し、裁判所への提出が求められます。


 それからは毎年定期的に財産目録の提出を求められ、職務内容を報告します。これは本人が死亡するか、奇跡的に判断能力が回復するまで続けられるのです。


 他人の財産を預かり、管理するというのはこれほどのことなのですが、後見人の報酬は月々およそ二万円から四万円程度と言われています。


 これは裁判所が公正な立場から決定している額なのですが、利用者本人の財産から支払われるため、財産や収入が少なければさらに配慮された金額になります。生活困窮者であれば市町村から支払われる場合もありますが、当然少額です。ほとんどボランティア感覚ですね。


 申立にかかる費用は、申立人が負担します。負担と言っても、一万円ちょっとに各郵送代くらいですが。特別な理由があれば「費用上申」の手続きをして、認められれば本人の財産からの支払いが認められます。


 ただし、弁護士や司法書士の代行手続き料などは認められません。これも注意が必要ですね。


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