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検証と関係

「ケイくん、聞こえますか?」


吽形は今、狛犬像の隣に立つケイに声をかけておる。

その声に対して、ケイが頷くのが見える。


ワシのそばにある椅子には湊が座り、二つのお守りと結を両手に乗せて、ケイを見守っておる。


「湊。では、その二つのお守りと結をその椅子に置き、ケイのそばへと行ってくれぬか?」


「うん、わかった。」


てててと、ケイへ駆け寄る湊。


「ケイくん、吽形の声、聞こえた?」

「聞こえた、聞こえた。」

「湊くんには、私の声が聞こえていますか?」

「んふふ、僕はずっと聞こえてたでしょー!」


楽しそうじゃ。


「湊、ケイ、ワシの像を見て何かわかるかの?」


一時的に幽体となり、像の上あたりへと身を浮かせる。

…子供たちはワシの像を眺めたまま、やがて首を傾けた。

気を少し纏ってみたが、それでも反応は変わらぬようじゃ。


「結。おぬしはワシの幽体が見えておったか?」


ワシは像へ戻りながら、椅子に置かれた結にも聞いてみた。


「アタシ?見えてたよ。アンタの幽体と、それを気で覆うところ。…それ、アタシにもできるの?」


「同じ付喪神じゃし、見えて当然かのう。それ以外はどうじゃろう?境内を守るために頂いた力と思っておったが…」


結と話をしている間、吽形が子供たちへワシが何をしていたかを説明しておった。


―――


「結論として、ケイは湊と同じように我ら狛犬と結の声が聞けて、お守りがあれば気の流れと幽体が見れる、じゃな。」


子供たちを椅子へ座らせ、現状を伝えた。

既に二人の首にはお守りが下げられておる。


『主様は、私たち狛犬の思いを、ケイくんにも広げてくださったのでしょう。』

吽形の像は椅子から遠いため、力を込めたお守りから声と顔を出した。


吽形の話を聞き、ケイが嬉しそうに湊へと肩をぶつけた。

湊は眉を歪めながらケイを見て、ワシへと視線をずらした。


「ケイくんいなくて一人だけだったら、怖くてあの宿までは行けなかったよ…」


「えっ、オレも一人であんなところに行けって言われたら怖いって。」


「…あんなところ…」


そうじゃろうよ。二人いたから、我らもお願いしたのじゃ。

それとケイよ、結が思った以上に繊細じゃ。

気をつけぬと…む、気遣いなのか分からぬが、結を手のひらで包みおった。

まぁ、見守ろう。


「これからなんじゃが、ケイは連休でなければ、この地にはおらぬのであろう?」


「多分。盆と正月には帰るって、母さんとばあちゃんが話してたから…その時くらいかなぁ」


湊が嬉しそうな、寂しそうなそんな状態じゃな。

まったく会えないわけじゃないからのう。


「この地から離れると、お守りに込めた気の消費が大きくなる。

残念じゃが、お守りを通して我らと会話はできぬし、込めた気でその身を守ってやることもできぬ。」


「…ん。」


ケイはワシを見たあと、お守りの吽形、湊と順に目線を移し、寂しげに頷いた。


ケイが狛犬のおる神社へと参拝すれば、狛犬網を通じて幽体の湊と会うことはできよう。

じゃが、これは違うと思い、伏せた。


『湊くんとケイくんは、お互いに連絡をとる手段は持たないのですか?』


吽形。持たぬから、あらぬ形でケイを巻き込んだのであろうよ。


「持ってない…オレ、スマホが欲しいってお願いしたけど、まだ早いって言われた。

同じクラスで持ってるやつ居るのに…」


「僕は子供用携帯をもらったけど…おじいちゃんとおばあちゃんしか繋がらないから、家に置きっぱなしにしてる。」


うむ。狛犬網での連携は、まだ後じゃな。

その後、我らの話は電子機器へと移っていった。


「ミナトは動画とか見ないの?」

「おばあちゃんの使ってたタブレット使って、おじいちゃんと見ることはあるよ。

目が疲れた、とか言ってすぐにどっかいっちゃうけど…」

「ウチはタブレットも貸してくれないんだよなぁ」

『あれ、便利そうですけれど、私、テレビのニュースの方が世の中を知れて面白いですねぇ』

「今まで感じていたものを、目で再確認してゆくのは確かに面白いのう」


「なんだよ、お前らばっかり!!」


突然、ケイの手のひらに乗せられた結が大声をあげ、皆がそこへ向いた。

なんじゃ?結に、石に重なるように、女子の姿をした幽体が見える。


「お前らの話のどこにも、アタシがいないじゃない!アタシはここに置いて行かれるの!?」


驚く湊と我らとは異なり、ケイは微笑んでおった。


「ミナトには阿吽がいるし、結はオレと一緒にいてよ。」


またケイの手に包まれて撫でられた結は、幽体を潜めて静かになりおった。

…ケイの将来が垣間見えて、どうにかすべきなのじゃろうか…どうじゃろうか…


――――――――


この世界の狛犬

・お守り越しに、気を練って自身を模した姿を形成できる。

本作はフィクションです。

作中に描かれる神や出来事は、信仰や感じ方の一つの形を表現した創作です。

実在の宗教・信仰・人物とは関係なく、それらを否定・評価する意図はありません。

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