縁の先
――とある神社の境内――
「こんにちはー」
この場にいる子供達の中では頭ひとつ背の低い子が、境内の裏からゆっくりと現れた。
前髪は揃えられ、おかっぱ。ただ後ろ髪だけは長く、括られて腰まで伸びている。
境内に届いた抑揚の少ないその声に、その場に居た2人の子供が反応した。
「あれ、xxくん? こんにちはー」
「ようxx。…なんかxxの体の周りが歪んで見えるんだけど?」
境内の子供達は黒髪の子が手にのせた石を見ていたようだ。
もう一方の茶色掛かった髪の少年が返事を返し、黒髪の子も続いた。
〔いい、いいね。色とりどりの気で溢れてやがる! ここでなら思いっきり――〕
黒髪の子が言う“歪み”が声を発した。
暗く禍々しい“歪み”。
「…なんかここ長く居ると具合が悪くなる…おじさんも居ないし、帰るねー」
最初に挨拶を発して現れた子供の顔色が悪い。
…この短時間で彼に何があったのか分からない。
〔ちょっ、はぁ!? 何言ってんだお前? まだ何もしてないだろ!〕
「えー? だってボク、別に困らないし」
〔それはそう? いや、馬鹿か! あっ、本当に帰るのかよ…〕
“歪み”は顔色の悪くなった少年を気遣いながらも、持っている目的に後ろ髪を引かれているようだ。
「xxx〜、xx〜。またね〜」
「んふふっ、来たばっかじゃん! またね〜」
「いやホントに何しに来たんだよ…」
来たばかりの子供が別れを告げ、境内にいた子供達も返事を返す。
迷いなく歩き去る子供に引っ張られるように、“歪み”も境内の裏へと消えていく。
〔えぇー、本当に帰るんかよ…また来る〕
境内にかろうじて届くほどの声が残された。
「よくわからんが、おぬしは来なくてよいわっ!」
「…なんと禍々しい。鳥居の結界も反応したようですが、侵入を許してしまったようですね…」
少し間を置いて、境内で本殿を守るように在る狛犬達が声を発した。
これまで静かだったのは、警戒をしていたためか?
「いや、ほんとに何しに来たんだよ…誰かアタシに説明して?」
黒髪の子供が手に乗せた石あたりからも声が聞こえる。
その後は他愛のない会話と、手水舎を流れる清水の音が境内に響いていた。




