表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

序幕

この社に祀られる御祭神を守護する狛犬。


我らはその狛犬に宿る付喪神、阿形(あぎょう)吽形(うんぎょう)


我らは宿し時から主様の御心を汲み取り、この社を守り続けておる。


現在では気の巡りが弱まり、土地の衰退とともに人が減り、信仰も減り、寂れ始めた。


主様と社の繋がりは細くなり、御威光も弱まってきておるのだろう。


「吽形よ…我らが仕えて幾年月か…参拝者の減る今、信仰を得る良い案はないものか…?」


「阿形…神主殿もここを去って数年。この社と主様との繋がりが切れぬかとハラハラしております…」


我ら付喪神は信仰による力の衰退は無い。

だが、狛犬でもある。


主様とのご縁を絶やさぬよう、ワシはただ考え続けていた。


「信仰を得ると、何か変わるの?」


「うーむ…この社と主様との繋がりが強まり、その神気が場に満ち、その影響で気が巡る。土地が気で満ち、邪気を祓い、人々が集いやすく整う…じゃろうか。」


その人々の心の安らぎや余裕から、また次の信仰へ繋がるじゃろう。


「今では、この土地は人も信仰も減り、邪気すらほとんどありません。」


「そうさなぁ…邪気すら、無いのぅ。ワシらが気を集めて巡らせ、人を呼び込む流れを作ることができれば良いのじゃが…この場所からは動けぬからのぅ。」


「僕が二人を連れて、他の土地に行ったら?」


我らを二人と数えて良いものか?

そもそも、社からは出れぬからなぁ…

いや、誰じゃ?


―――


「大変だったんだね…」


「そうなんですよ…こうして参拝者として一人でも足を運んでもらえるだけで、社と主様の御縁が保たれるのです。」


この子供が会話に加わっていることに気づき、ワシらはしばらく口を噤んだが…


「まだ居ますぅ」

「おいっ吽形…」


無言で居座り続ける子供に根負けした。




「小僧は…誰かと一緒のことが多かったな。今日は一人なのか?」


「おじいちゃんかな?おじいちゃんはねぇ…この石段がキツいって、一緒には来なくなっちゃった。手すりも無いし。」


手すりのぉ…確かにそれがあるだけでも、参拝客はまだ居たかもしれんなぁ。


「しかし、小僧は何故ここに?失礼かもしれんが、参拝が身につく年齢でもあるまい?」


椅子に腰掛けた小僧はこちらを向かず、足をぶらぶらさせている。

何じゃ?失言じゃったか?


「すまぬ、変な事を聞いたのう。」


「そうですよ、失礼ですね阿形。」

おぬしぃ…


「…ずっと仲の良かった友達が、引っ越ししちゃったんだ。一緒にここにも来たなぁ…って思い出して。」


そうか。そうか…

ここを訪れた参拝者からも、時折、別れに悲しむ声が届いた。

縁とは宝じゃからな。

失って何も感じないものはおらんじゃろう。


「そしたらね。話し声が聞こえて。珍しく参拝してる人いるのかな?って。」


珍しい?ちょくちょく参拝してくれる者たちがおるわ!

あぁ、そやつらからも手すりとか何とか声が届いておったわ…いつもすまぬなぁ…


「聞こえたのは、きっと阿形の声ですねぇ。困ったものです。」

おぬしもな。


「ご友人が引っ越されたのは、そのご両親のお仕事の都合なのでは?」


「え?すごいね!何でわかったの!?」


む、吽形…うん?何故今、一瞬こっちを見た?何じゃ!?


「…この町は人が減りつつあります。そのため、仕事も店も、お祭りも減っていくでしょう…」


「全部、人が減ったからかぁ…あ〜、お祭り…本当に小さい頃に、ここでお祭りがあった記憶があるよ…」


吽形、何故、祭りを混ぜた?関係ないこともないが。


「何とかして人を増やせれば、仕事も店も増え、お祭りも再開できるかもしれませんねぇ」


だから何でこっちを見るんじゃ吽形?何じゃ、ばちばちよく動く片目じゃの。


「えーっと?」

うーんと?


「お友達の両親も、増えた仕事のおかげで戻って来るかもしれません。そして、お友達と一緒に再開したお祭りに行く…あぁ…」


「…おぉ!?」


「私たちと協力して、この町に人を増やしましょう!」


いかん、これもう詐欺師では


――――――――


この世界の狛犬

・自力では社から出れない

・これまで声は聞いていたわけでなく、届いて居た。

本作はフィクションです。

作中に描かれる神や出来事は、信仰や感じ方の一つの形を表現した創作です。

実在の宗教・信仰・人物とは関係なく、それらを否定・評価する意図はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ