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ダンジョンで嬲り殺しにされた少年は、異形の力【魔喰い】で英雄集団に復讐する  作者: こねこねこ
第3章 一人目――聖騎士セルヴァンナ・アウレ(後編)
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第9話 救世烈団

  ===緊急会議===


 救世烈団に白百合騎士団壊滅の報が届いたのは、セルヴァンナが敗北した次の日のことだった。

 団員全員が死亡したというこの事件を隠蔽することは出来なかった。

 更に、聖白院で行われていた“人狩り”や“地下での拷問”も表に出てしまった。


 それを受け、救世烈団は緊急の集会を行った。

 このままでは、救世烈団にまで影響が出てしまう。

 それを避けるために、アレクが緊急招集したのだ。

 彼が求めれば、それを断れるものはいない。


 もっとも――中には嬉々として参じた者もいる。


「まさか、セルヴァンナちゃんがあそこまでの変態さんだとは思わなかった」


 精霊族のオルディアは、面白そうに言った。


「あれは変態ではない。ただ、まっすぐ別の方向へ行ってしまっただけだ」


 ハムロックが言った。


「それで、どうする。アレク」

「まずは、セルヴァンナを見つけるところからだ。ノワール、探してくれるか?」

「既に探した。だが、見つからない」


 メンバーの全員がノワールを見る。

 彼の調査能力は、救世烈団の中でも随一のものだ。

 これまで彼は、ありとあらゆる“事件”を解決に導いてきた。

 あるいは、闇に葬ってきた。

 その彼が見つけられないというのだ。


「見つからない? お前ほどの能力を持つ者が?」

「今回の件は、おかしなことが多すぎる。地下にあった人間たちの死体――これについては、何の不思議もない。セルヴァンナの趣味は分かっていた。人族の女性と肉体関係を結び、最後には拷問した上で殺害する。これまで、死体は深穴に投棄していたのだろう」


 ノワールはそれをずっと前から知っていた。


「白百合騎士団に聞き込みをしようとしたが、その大半が死んでいた。事件の少し前に退団したものがいたため、話を聞いてみた。すると、セルヴァンナは最近になって『リュミエル』という名の女エルフに熱を上げていたことが分かっている」

「リュミエル。誰か、聞いたことはあるか?」


 アレクの問いに、誰も首を縦に振らなかった。


「その謎のエルフが今回の事件のカギを握っているはずだ。だが、その女がどうしているのか、行方を追えない。捜索には部下を当たらせているが、成果は期待しないほうがいいだろう」

「他に何か手掛かりはないのか?」

「今のところ、ない」

「では、そのノワールというのが、セルヴァンナに精神を錯乱させるような魔法を使い、異常行動をとらせたという理解になるのか」

「それもおかしい」

「何がだ?」

「そもそも、彼女には【神意不墜】というスキルあったはずだ。そのスキルを貫通し、彼女に精神干渉魔法をかけることが出来る者がいるとは思えない。逆に言えば、それをする方法を思いつきさえすれば、そこが突破口になるように思う」

「分かった。誰か、アイデアはないか?」


 オルディナが手を上げる。


「あの女を殺す方法なら、いくつか考えがあるけど」

「マジか……。俺でもてこずると思っていたのに」

「まず、スキルは精神に依存するものでしょ? だから、彼女の精神をズタボロにする必要があると思うのよ。それで、聖騎士セルヴァンナの精神をズタボロにする方法があるとすれば、それは一つしか考えられない」

「男か」

「うん。セルヴァンナは男を嫌っていた。だから、男に凌辱でもされれば、スキルは失われると思う。でも――」

「その凌辱自体をすることが不可能だってことだな」

「そう。だから、騙したんだと思う。そのリュミエルっていう女エルフ、実は男だったんじゃないかな?」


 アレクは目を開ける。


「女だと思って誘ったら、男だった。それが分からない程度の肉体関係を結んだ後に、それが発覚したとしたら、あのスキルを無効化することも出来ると思う」


 全員が、オルディナの意見に聞き入っていた。

 あり得ない可能性だと思えた。

 だが、セルヴァンナが殺されるというのもあり得ないはずのことだ。


「では、捜索の際に、可能性も考えておこう」


 ノワールが言った。


「あの、よろしいでしょうか?」


 セイレーン族のミリアが言う。


「今、セルヴァンナさんはどうしているのでしょう?」

「生きてはいないだろうな。他にアイデアはあるのか?」

「騙されて、どこか遠くに行っているということはないでしょうか? 現れたセルヴァンナさんは、そもそも偽物だった。スキルは破られていない。そう考えた方が自然なように思えます」

「確かに。いずれにせよ、セルヴァンナとリュミエルの捜索は続ける。真相がわかったら、教えてくれ」

「分かった」

「それじゃあ、セルヴァンナについての会議は、これで終了だ」


 あっさりと終わってしまった。

 これだけのために集められたのかと、不満そうにする者もいた。

 だが、そう言えるものはいなかった。


 もっとも、今回の議題はそれだけではなかった。

 アレクは隠し玉を用意していた。


  ===新たな八人目===


「皆に話しておきたいことがあるんだ。レオンっていう人族がいただろ? あれの次の人材についてだ」

「ポーター兼サンドバッグか」


 ドワーフ族のハムロックが言う。


「すぐに死ぬようなことがあれば、また騒がれるかもしれない。少し時間を置くか、今採用しても熟成期間を長くとる必要がある。まだ要らないんじゃないか?」

「それについてなんだが――。面白い素材を見つけた」


 そう言って、アレクは一人の女性を連れてきた。

 人族の女性だ。


「また、弱そうな人間だな」


 彼女をちらりと見て、ガロウが言った。

 その言葉に、ミリアが続く。


「待ってください。どうしてこの会話を彼女に聞かせたのですか? ポーター殺しは、人族には聞かせないはずです」

「こいつは、ポーターじゃない。人族のメンバーとして迎え入れる」


 アレクの言葉に、メンバーが驚く。


「そんなことが許されるか? そもそも、お前は人族を見下していただろう」

「そうとも言えない事情が出来たんだよ」


 アレクは照れ臭そうに言う。


「彼女のスキルは【誓約支配】という。誓約したものを強制的に執行するというものだ。その効果は、彼女の死後も有効となる。俺は、それに引っかかった」

「具体的には、どのような制約を?」

「この女が死んだら、俺も死ぬ」


 その瞬間、メンバーの一部は思考した。

 彼女を殺せば、アレクを殺すことが出来るのではないかと。

 だが、それがハッタリである可能性もある。

 むしろ、その可能性の方が高い。


「それで、何故救世烈団への入団が必要となる?」

「彼女の希望だ。是非入りたいそうだ」


 その意図が分からない。

 だが、その疑問はすぐに解決されることになる。


「ああ、それと。彼女はお前たち全員との間に誓約をすることを求めた。内容は『何があろうと全力で彼女を助ける』というものだ。それは俺の命を助けることにもつながる。勿論、受け入れてくれるよな?」


 その頼みを拒否できる者はいなかった。

 これを拒否すれば、アレクへの反抗の意思ありとみなされる。


「ありがとう。それでは、始めてくれ」

「スキル【誓約支配】発動」


 人族の女性がそう言うと、救世烈団のメンバーに得体の知れない魔力が入り込んできた。

 身体の中をぐちゃぐちゃにかき回されるような不愉快な感覚。


「皆様に誓約していただきます。『何があろうと全力で私を助ける』。それを受け入れる方は、この魔力を受け入れてください」


 メンバーたちは、その不愉快な魔力を受け入れていった。

 不本意ではある。だが、それを拒むことは出来なかった。


「……完了しました」

「これでOKだ」


 アレクは機嫌よさげに言った。

 これで、救世烈団の運命はその人族が握ることになった。

 そのはずなのに、アレクは何故そんな態度を取れるのか。

 それが分からなかった。


「それじゃあ、本番行くぞ」

「え?」


 人族の女が口を開く。


「『セルヴァンナ・アウレが引き起こした事件について、関わっている人は申し出てください。それがないのであれば、私は自害します』」


 そう言って、ナイフを自らの喉元に突きつけた。

 誰も言わなかった。


「では、次です。『アレクに死んでほしいと思っている方は名乗り出てください。一人でも黙っている人がいるのであれば、私は自害します』」

「俺だ」「私も」「私です」「俺も」「俺が」「儂だ」


 名乗り出たのは、六人全員だった。

 それをアレクは面白げに見る。


「本当に、便利だな。それで、今のはどういうことなんだ?」

「私が自害をしようとすると、皆さんは全力で私を守ろうとします。ですから『自白しなければ自害する』と言いました。私を守るために最も手っ取り早い方法は、自白をすることです」


 六人はとんでもない誓約をしてしまったことに、ようやく気付いた。


「ま、これが彼女を入れた理由だ。このメンバーには探偵はいるが、賢しい者がいない。誰もが強者であり、創意工夫は必要としなかったからだ。だから、そういう頭脳とそれを生かせる能力を持っている人間を見つけた。だから、仲間にした」


 アレクは愉快そうに言った。

 これまで、彼は力でメンバーたちを従わせてきた。

 だが、今回は策謀で彼らを出し抜くことが出来た。

 そのことに満足感を持っていた。


「アレクさん。彼女に、アレクさんまで操られてしまう可能性もあるのでは?」

「ああ、大丈夫だ。俺が騙されたっていうのは、嘘だからな。こいつも、俺には手を出せない」


 やはり、嘘だった。

 だが、今更どうにもできない。


「それにしても――嬉しいぜ。これではっきりしたな。この中に犯人はいない」

「私達を疑っていたの?」

「勿論だぜ、ミリア。セルヴァンナを殺すことが出来る者と言えば、真っ先にここにいるメンバーを疑うべきだ。そうだろ?」


 誰も否定はしなかった。

 この中には、彼女を殺したいと思った者もいるかもしれない。

 その疑いを、手っ取り早くはらしたのだ。


「それじゃあ、救世烈団に関しては、今後も変わらず活動をしていこう。もしかしたら、リュミエルとかいう女エルフがお前たちの前に現れるかもしれない。その時は、必ず報告をしてくれ。以上だ」


 こうして、会議は終了した。

 セルヴァンナがいなくとも、救世烈団は止まらない。

 それどころか、新たな力を手に入れていた。


 だが――。

 レオンの復讐もまた、止まることはない。

 彼の牙は、着々と次の獲物に向けられつつあった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

一人目が終わったところですが、ここでいったん終了とさせていただきます。

二人目以降については、未定です。

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