第6話 疑似人格
===疑似人格【リュミエル】===
マーヤと別れてから、レオンは宿に戻った。
白百合騎士団の団員がいなくなったことは、まだ知られていないようだ。
町はいつも通りだった。
レオンは、セルヴァンナに復讐をするための策を考えた。
以前から、考えてはいた。
復讐をするにあたっての問題点、それと、対処法。
だが、それが上手くいくか分からなかったため、実行に移せずにいた。
「【疑似人格】」
『はい』
「復讐の計画を考えた。君の考えを教えて欲しい」
『それは構いませんが、あくまでも私はレオン様の中にある人工人格です。正しい判断が出来る保証はありません。それを分かっていただいていますね?』
「うん、勿論だよ」
レオンは疑似人格に対し、計画を話し始める。
「問題点は二つある。まず、実力差があるということ。正面から戦いを挑んだとしても、勝ち目はない。セルヴァンナのスキルの詳細を確認する必要がある」
『そうですね。リオンさんからその情報を得ようとしてはいましたが、有益な情報はありませんでしたね』
そうだった。
リオンが話すのは、いつもセルヴァンナがいかに凛々しく気高い存在であるかということだった。
その英雄としての側面であり、復讐に役立つ情報は得られなかった。
彼女は、本当にあの外道――セルヴァンナ・アウレに憧れていたのだ。
「だから、自らセルヴァンナに近づく必要がある」
『方法は?』
「餌をやればいい。彼女にとってもっともいい餌は、美しい女性だ。それは既に持っている」
謎のエルフ、リュミエル。
その容姿は美しく、多くのものを魅了していた。
セルヴァンナは同性愛者であるため、この姿で出向けば、彼女の目に留まることになるだろう。
「もう一つの問題は、セルヴァンナに近づいたとして、彼女に対してへりくだる態度を取ることが出来るか、ということだ。ぼくは、復讐心に捕らわれている。ぼくの中にある沢山の記憶や怨嗟が、セルヴァンナを殺せと暴れ続けている。セルヴァンナを前にして、冷静でいられる自信がない」
『それは由々しき事態ですね』
「だから、君を作り変えて、セルヴァンナに取り入ろうと思う。ぼくの中にある無数の意識を組み合わせて、セルヴァンナが最も好むようなものに、君を改造するんだ」
『成程。そちらが本題というわけですね』
「出来る?」
『結論から申し上げれば、可能です。改造された私は、全力でセルヴァンナに取り入ればいいのですね?』
「要所で指示は出す。でも、それ以外は全て君に任せることになる」
『問題ありません。疑似人格の名にかけて、見事セルヴァンナ・アウレを篭絡させて見せましょう』
「ああ、頼むよ――リュミエル」
『それを私の名とするのですね?』
「そうだ。それは、この姿をした古代エルフの名。君には、それを継いでもらう」
『お任せください。それでは、疑似人格改め、リュミエル――任務を開始します』
これで準備は整った。
この後、リュミエルは白百合騎士団の入団試験を受けることになる。
そして、最速で聖務部長となり、セルヴァンナに接近する。
そして――。
その刃を、セルヴァンナに突きつけるのだ。




