怪物
「ちょっとこいつデカすぎますって!」
二人が相手取っている八岐大蛇。彼らが降り立った森そのものが八岐大蛇の一部だったのだ。まだ八岐大蛇の全貌を把握していない二人は八岐大蛇の一つの頭と戦っていた。
「ハッハッハッ!!でかいな!」
「笑ってる場合じゃないですよ!手伝ってくださいよ!」
「お前の実力を見せてみろ!!」
フツロは未来視を使ってなんとか回避できている。剣城はそのフツロを見て笑っているのだ。
「エクス!行けそう!」
「無理だろ。こんな巨大なの初めてだぜ。俺らの魔法は人間だから効くんだぞ。」
「エクスがこう言ってるから!剣城さん?!」
「まぁ人間相手に強いってんならそん時頼むわ。三天起きてるよな。」
「はい。」
三天を抜き構える。
「焔の龍。」
巨大な炎で出来た龍が放たれ八岐大蛇の頭を襲う。しかし火傷程度の傷しかついていない。
「ありゃ。こりゃ強えぇ。フツロ魔法でサポートしろ。」
「それは出来ます。」
「幸福の目開眼。」
フツロが幸福の目により八岐大蛇の攻撃が当たらないように操作する。その隙に剣城が次なる攻撃の準備に入る。
「我が身一つ。天からの愛に応えよ。分身魔法。奥義。親愛せし貴方。」
月近の奥義を再現する剣城。その隣にはもう一人の剣城が現れた。
「なんだー俺?」
「あれをやる。」
「了解よ。」
二人の剣城が同じ構えを取った。
『合体焔の龍。』
二人の剣城から放たれた焔の龍は混ざり合い一人の時とは考えられないほどの威力を持ち八岐大蛇に放たれる。
「ギャー!!」
ドガン!
見事に八岐大蛇のダメージを与え倒すことに成功する。
「すげぇ。」
幸福の目を開眼しているフツロでもこの未来は予想できなかった。一安心し幸福の目を解除する。
「おい。まだ終わってねぇから解除すんな。」
「え?」
分身の剣城が消えかかっている中フツロに警告する。
「そうだぞ。こんな簡単に終わるはずがない。」
「どういうこ、」
ガガガガ
フツロの声を遮るかのように八岐大蛇の体が動き出した。二人は今八岐大蛇の上に立っていることを忘れてはいけない。
先程倒れた首が再び起き上がり新たに七個の頭が地面から生えてくる。異変を感じ取った八岐大蛇がここに集結した。
「シャッー!!」
「フツロ!ここからが本番だぞ!」
「らしいですね!」
剣城は八岐大蛇の倒し方に大方の予想を付けていた。しかしこれを行うのは非常に困難であり時間を要する。一撃で仕留めるための作戦を考える。
「とりあえず逃げるか!」
「え??」
徐に走り出した剣城にフツロは理解が追いついていなかった。
「ちょっと!」
「シャッー!!」
剣城を追いかけるフツロ。そのすぐ後ろには八岐大蛇の首の大群が押し寄せていた。
「混乱層。」
フツロが八岐大蛇から逃げるために霧を展開させた。そこに入っていくや否や八岐大蛇は二人を見失う。
それもそのはず霧に入ると同時にフツロと剣城は透明になったからである。
「フツロ。奴を倒す作戦を考える時間が出来た。」
「そうなんですか?」
「あいつらから俺らの姿は見えていない。」
「そういうことですか。」
(この人強えぇ〜。最強かよ。)
実際剣城はフェリシダットの実質的なNo.2である。ハセリが創設した時に剣城と親しい関係があったということとその実力を評価されていた。屍奥の使用許可を出せる唯一の人物である。
「さてどう倒すか。」
「倒し方が分からないですしね。」
「いや分かるだろ。」
「分かるんですか?」
「八岐大蛇が初めから全部の頭で攻撃してこなかったのは俺らの実力を測るためか俺らの実力を舐めてて一個の頭で倒せると思ったか。まぁこんぐらいだろう。
けど俺とフツロの魔力を八岐大蛇が感知できてないはずはない。確実に前者だな。じゃあなぜそんなにも積極的にそれができるのか。分かるよな?」
「一個の頭が倒せれても本体は死なない。」
「当たり前のことだな。全部の頭を同時に倒しせばあいつは死ぬと、思う。そんで俺らの力が分かって後ろにいる主の元へ行かせる訳にはいかないと全部の頭が集合した。つまりここからが本番ってことだ。」
「確かにそうですね。本当の目的はこの後の膳藤家。八岐大蛇で消耗するわけにはいかない。だからこうして逃げたんですね。」
「そういうこと。で、あいつを倒す作戦だが、一撃で倒したい。」
「そうなりますね。」
「さっきよりも長い時間が必要になる。フツロに時間稼ぎができるかどうか。」
「舐めないでください。これでもフェルテフェリスですよ。」
「そうだぞ。剣城俺の主を舐めるな。」
「フッそうだな。悪い。でもどうするんだ?魔法じゃ無理なんだろ?」
「魔法以外で稼ぎますよ。」
「俺だけ透明化を続ける。まるべく離れずに戦ってくれ。」
「了解。」
フツロが霧から出ていき透明化を解いた。剣城は霧だけ解除し透明化を続け、準備に入る。
「来い。ヘビやろう。」
ドン!!!
「シャッー!」
「あんな芸当もあるのか。」
フツロの花火化がここで解放された。剣城は花火化の存在をもちろん知らない。
フツロは花火化したことにより八岐大蛇に攻撃ができるようになっている。剣城のことを考えさせないため自分に集中させる。
ボン!ボグン!
フツロが連続で攻撃を浴びせる。目的は時間を稼ぐこと無理に倒す必要はないのだが実質今行われているのは一対一ではなく一対八である。倒す必要な無くとも今の状況に置いて数秒の行動不能に陥れるのが大きい。
連続で攻撃を浴びせているフツロだが、攻撃に使用しているのは拳のみ彼に右足には徐々に魔力が集まっていた。動きながら撃拳花火の準備に入っているのだ。
フェルテフェリスになってからフツロはヌエボと神陽化について研究を進めていた。その時に撃拳花火の簡略化ができるほどにまで成長を成し遂げていた。
右足に溜まっていく魔力に八岐大蛇は違和感を感じるもこれに対応はできない。一方大技の準備中である剣城はその手を緩めるものは無いものの撃拳花火が放たれる時を静かに見届ける。
「撃拳花火。」
大きく飛び上がり大量の首に向かってその右足を振り下ろす。
「オラッ!!」
グチャ
見事に一つの頭を潰しその衝撃で隣の頭を戦闘不能にした。
「すごっ。」
(てかなんでフツロは最初消極的だったんだ?最初から使えよな。)
剣城は花火化にタイムリミットがあることを知らない。フツロは膳藤家に花火化を使うつもりでいた。しかし剣城が想像していたより大幅に強いことが分かり、彼が消耗するのをできるだけ抑えるために八岐大蛇に対して花火化を使用することを決めた。
完全に潰された頭はゆっくりと再生していく。これによりかなりの時間がかかると理解したフツロは再度撃拳花火を試みる。
剣城は三天を鞘に納めかなりの時間をかけて力を溜めていく。
「頼むぜ。フツロ。」
再び右足に魔力を溜めながら頭を殴り続ける。八岐大蛇の物理攻撃は今のフツロからすれば余裕で避けれる代物。
避けるフツロに苛立ちを覚えた八岐大蛇は攻撃のレベルを上げた。
ボウッ
八岐大蛇の口から火が放たれる。しかし未来視でこれを見ていたフツロはカスリもせずにその攻撃を避けた。その放たれた火はそのまま二人が勘違いした巨大な八岐大蛇の体に直撃する。これを見た剣城はもう一つの攻略が頭に浮かぶがそれは保留にする。理由は単純。溜めていた力が上限に達したからである。
「フツロ!戻れ!」
透明化を解除した剣城がフツロを呼び戻す。
「俺の後ろに回れ。」
「了解。」
フツロは溜めに溜めた剣城の気に鳥肌が止まらなかった。
「おいおい。こりゃやべーな。」
エクスが心の中でフツロに話しかける。
「独りになりしものよ。我が身に運命を託せ。孤独の白百合。極。」
とてつもなく巨大な光の筋が天を貫き宇宙にまで達していた。
その光の筋がどんどん三天に凝縮されていく。そして一気に解き放たれた光は八岐大蛇の頭を吹き飛ばした。
「これで一件落着、かな。」
「うわー。やっぱすげぇ。」
「これはすげぇわ。」
フツロとエクスカリバーが再び剣城の強さを目にし驚きを隠せない。
「これが最強の才器の力だぜ。」
「これで次に進めそうだな。」
「いきましょう。」
二人は倒れている頭を背に歩いていくが、そこは八岐大蛇の体の上。
ドクンッ!
『!!!』
八岐大蛇の心臓の鼓動を感じた。
「まだ生きてるのか。」
後ろを振り向いた二人。先程倒したはずの八岐大蛇が起き上がっていた。
孤独の白百合によって倒した八岐大蛇だったが、フツロの潰した頭がそれと同時に復活し奇跡的に助かっていたのだ。
ゴゴゴゴゴ
二人の足場が動き出す。
八岐大蛇が彼らを振り落とそうとしている。
「まずい!次恒!」
「はい。」
「周りの人間を避難させろ!」
「了解。」
八岐大蛇はとてつもなくでかい。その体が動き出した時周りの人間への被害は大きくなる。剣城は自分たちの被害ではない周りの被害を考え次恒に避難させて欲しいと要求する。
一般人は急に周りの景色が変わったことに驚くがジャポーニャの人間がこれに対応する。
「フツロ!俺に捕まれ!」
「はい!」
「瞬動。」
剣城の力でその場から一瞬で移動し八岐大蛇の全貌を捉えることに成功していた。
『シャッー!』
その巨大な体から飛び出る頭たちが二人を見て威嚇する。
「おいおい。こりゃ聞いてねぇって。」
「流石にこれは、、、」
八岐大蛇が二人を見ている。その頭の数は数え切れないほどだった。
「別にさっきのが全部ってわけじゃなかったのか。」
「俺たちが勘違いしてたってわけですか。」
「確かに頭の数と体の大きさは合っていないと思ったが、ここまでとはな。フツロ!やるしかないぞ。」
「作戦あるんですかっ!」
「あるさ!なぁ三天!」
「あぁ」
「フツロ時間稼ぎ頼む。」
「はい。」
「幸福の目開眼」
フツロが全身全霊で八岐大蛇に立ち向かい剣城が再び準備段階に入った。
「行くぞ!」
「行こう。」
『才器解放スサノオ。』
三天の中から人間の姿をした人物が現れる。白い長髪が美しく光り輝きかなりの長身、大人しい顔をしているが凛々しい顔でもある彼こそスサノオ。剣城の手に残っている三天そのものであり彼の相棒。
才器解放で三天の力を残したままスサノオを顕現させた。
これによりスサノオと剣城の最強タッグが完成する。
「天羽々斬。」
スサノオの手に新たな刀が顕現される。スサノオが顕現している時にだけ使用できる。三天の上位互換の刀である。
「剣城。」
「おうっ!」
その手に顕現された天羽々斬を剣城に与えるスサノオ。そしてスサノオが剣城と背中合わせになり二人が詠唱を唱え始める。
「狂乱に落とされし我が身。この羽を広げた先にあるのは幸か不幸か。、、、、、、、」
***
(あの人誰?!)
大量の頭と戦っているフツロは剣城の背中にいるスサノオを見て驚いたがそんな余裕はなかった。
「フツロ!やばいぞ!」
「ガゥ!」
一瞬の隙を突かれたフツロが飛ばされる。それを剣城が気に留めることはない。
同じぺカードクラスの使い手。自分と同じ実力を持てる可能性があるフツロにかまっているほど剣城は大人ではなかった。
「天にまで上り詰めて姫君。森羅万象ですら表せれないこの激浪。騒乱、番子、この上なき爆蘭。微塵の欠片。、、、」
(このレベルにまで上がってこい。)
口には出してはいないがそう言ってるであろうオーラが漂っている。フツロはそのオーラを感じ取り戦いに挑む。その時背中にいたスサノオは静かにフツロとエクスカリバーを見ていた。
(お前なのか?)
フツロの腰にいるエクスカリバーは三天を見て彼が誰かというのを理解した。
フツロはそんなことにも目も暮れず突撃する。その時にはすでに花火化しておりその先の領域神陽化にまで達していた。
幸福の目と神陽化の同時併用によるフツロ単体で繰り出せる最強の合わせ技。フェルテフェリスになったフツロはこの合わせ技を試みるのはこれが初の事だが感覚で三分以上の使用はやめておこうと決めていた。三分稼げばなかなかの時間稼ぎにもなり何よりも第六感がこれ以上の使用は禁止と言っている。
攻撃してくる大量の頭だがその攻撃を幸福の目で操作その操作した隙に神陽化された拳での打撃。この威力に八岐大蛇も口から火球を繰り出し近づかない攻撃に変更する。しかしフツロはそれすらも操作している。瞬時に頭にそばに移動し反撃する。
「溜まってんだよ。」
「日花!」
右足に貯められた魔力が解放される。その攻撃により一つの頭が塵と化していく。このままでは体を伝って他の頭も塵となってしまうと感じ取った八岐大蛇は体に辿り着く前にその頭を切り落とした。
「ちっ。体に向けてやればよかった。」
咄嗟の判断を見誤ったフツロ。日花は一日に何度も撃てない。ましては連続で撃てるような代物ではない。唯一の機会を逃したがこれは時間稼ぎ。なんの問題もない。
『シャッーー!!!!!!』
八岐大蛇がフツロを危険因子だと判断する。しかしもう遅かった。
「なんだ案外早かったですね。」
そこにはスサノオを背に詠唱を説き終える剣城の姿があった。
「我を超える者。それこそ万事を統べる王。」
詠唱を説き終えたと同時に解放されるとてつもなく巨大なオーラ。それはもう視認できるほどだった。
『奥義。TO BE A KING。』
八岐大蛇は二人の声を聞き自分の死を確信した。目で視認が可能になったそのオーラが二つの刀に吸収されていく。
トンッ
地面を蹴り宙に浮く剣城、そしてスサノオが剣城の足を全力で押し出し剣城がとてつもない速さで八岐大蛇に向かっていく。それを見たフツロはその場から離れ剣城の奥義を見届ける。
死を確信している八岐大蛇はその場から動かない。
ザシュ。
八岐大蛇の巨大すぎる体を三天で一刀両断する。そして逆の手で持っている天羽々斬で大量の首を切り下ろしていき、それを粉々に切り刻んでいく。
三天の持つ能力はぺカードクラス以外の才器の能力が使用できること。それの上位互換である天羽々斬は全ての能力を同時に使用ができるというもの。
剣城の奥義 TO BE A KING 三天に一つの能力を最大限の出力にまで引き上げ、天羽々斬には全ての才器の能力が使用できるようにするもの。
粉々になったその残骸を三天で消し去った。
「潔く逝け。」
『えぐ〜。』
フツロとエクスカリバーはずっと驚いてばかりである。
「あれが私の主だ。」
剣城の活躍が嬉しい三天はその我慢できないニヤケ面を押し殺しながら自慢げに話す。
「これで流石に大丈夫だろ!」
剣城がてくてくと歩いて3人の場所に戻ってくる。
「三天も一旦戻れ。」
「了解。」
スサノオが消えていき3点に戻る。その戻るときフツロとエクスカリバーに向けてあるメッセージを込めた視線を送る。
「じゃ!次行くか!」
「そうですね。」
ゴゴゴゴ
再び地面が揺らぐ。しかし今回は八岐大蛇ではない。
「はぁ?!」
八岐大蛇がいた場所の地下からとてつもなくでかい屋敷が現れた。膳藤家の本家である。
「デカすぎでしょ。」
「大蛇を倒すかっ!」
屋敷からひとりの男が現れる。その男は着物を着用しており綺麗な真っ黒の長髪。どこかスサノオと似ている雰囲気を醸し出している。
「誰だ!」
「膳藤家当主。膳藤晴明だ。」
「膳藤晴明、、、、」
「お前が悪の親玉か。」
ついに膳藤家の当主が姿を表す。陽国で暴れまくる悪の組織のトップにしては少しイメージとは違うその姿。
「貴様らは何者だ?」
「お前らを壊すヒーローだよ。」
「ジャポーニャの連中か。それにしてもかなりの手練れのようだ。」
「悪者でも俺らの強さは分かるんだな。まぁ正解だよ。」
「将軍の奴隷どもが。虫けら以下のゴミが陽国を牛耳るな。」
「じゃあお前らは汚物でいいか?」
「黙れ!調子に乗るなよ。来いお前たち。」
その合図を皮切りにずらずらと膳藤家の人間が屋敷から姿を表す。その誰もがかなりの実力を持つことを二人は感じ取っていた。
「二対不明ですね。」
「やりがいしかないな!」
「ゴミの処分だ。いけっ。」
『了解!!』
襲いかかってくる膳藤家を迎え撃つ。
***
「なんでこんなのに負けたんだよ〜。」
泣き喚く人物の隣には倒れているエスパシオとセルカ。
「嶽ちゃ〜ん!!」




