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恋する騎士  作者: 桜ありま
第四章 動き出し、動き出せない新人騎士
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25

 



「クライブ様。可愛いです、本当に可愛いです」


 休憩時間になり。

 この室内で、一番の美少女っぷりに、リーヴィは心の声をつい口に出してしまった。

 クライブからは一瞬、金の目をきつくして見られる。

 けれど、リーヴィの賞賛は止まらなかった。


「化粧も難しいのに完璧です。私も頑張らなくっちゃ……」


 嫌々な態度を取っていても、クライブは真剣に教えを受けていた。

 わからないことはすぐにでも助手の女性に質問して、知識を吸収していた。その貪欲さを見る限り、明日からでも一人でこなせるのは間違いない。

 隣に座っていたリーヴィも勉強になるレベルだった。

 だから、褒め言葉が止まらない。


「こんなに完璧なら通り魔達も、女性と思って狙って来ますよね」

「ま、まぁ……。やるからには全力を尽くす……だな!」


 照れ隠しなのか、少し怒ったようにクライブはまくし立てる。その姿は少女なので、ずいぶんと可愛らしいしぐさに見えた。

 リーヴィはその台詞に、前にサルキオス様と肥料小屋の作業について話したことを思い出してしまう。

 どんな仕事でも、全力で手を抜かず無表情でこなしていそう……と思った事が結びついて、自然と頬が緩んだ。

 そんな態度に、クライブは自分が笑われたのかと勘違いしてしまったらしい。また金の目を細めて、リーヴィを睨みつける。


「すみません、クライブ様のことじゃなくて……サルキオス様の事を思い出してしまって」

「なんでここで、サルキオス様が出てくるんだよ」


 クライブの疑問も当たり前だった。


「前にサルキオス様も、新人の頃は新人らしい仕事をしていたって聞いたことがあるんです。サルキオス様のことだから、どんなことでも真面目に全力でやってたんだろうなって。思ってた事があって」


 その答えを聞いて、意味がわからないというふうに、クライブが首をかしげる。

「だから全力で取り組んでるクライブ様と重なってしまって」

「そ、そうなのか? だろう!」

 常日頃サルキオスを尊敬しているクライブはお手本にしている人間に似ていると言われて、一転嬉しそうに顔が緩んだ。それがはにかんだ表情に見えて、さらに可愛くなってしまう。


「私もクライブ様みたいに、変装頑張らないとです!」


 自分でやってみると、本当に難しい。

 それを簡単にやってのける、フレデリカの侍女さん。

 そしてヴィオーラさんとその助手の女性たちは凄い。

 そして嫌々ながらの初めての女装にも手を抜かないクライブ様には女子力が低いリーヴィは感心するしかない。


「ま、まあ。お前にしては……それなりに、だな。出来ていると思うぞ」

「本当ですか、ありがとうございます」

 自分よりもはるかに完成度が高い、クライブ。

 正直クライブからダメ出しされると思っていたリーヴィは、素直に喜んだ。


「明日から、一緒に頑張りましょうね!」

「……せいぜい。俺の足を引っ張るなよ?」

「はい、気をつけます」


 休憩の終わりの合図を告げられて、二人の会話はそこで終わった。


 


 休憩後の授業は、化粧を落としてから、一人でまた同じように支度を出来るか試験を受ける。

 それもクライブは一度で、完璧にやり遂げた。

 私情を交えない、と宣言していたにも関わらず。試験の間中、クライブを見つめるヴィオーラの目が輝いていたのはリーヴィの見間違えじゃないだろう。


 あれは絶対……良からぬ事を考えている顔だ!


 試験後に、警戒したようなクライブの呟きが聴こえる。


 ……そんなに女装って、嫌なんだ。


 リーヴィが見て、彼がヴィオーラを苦手と思っているのは、女装を頼んでくるからに見えた。女性が男装することにはあまり抵抗がないが、男性にとっては他の新人騎士を見る限り、本当に嫌なものらしい。それには、似合っている、いないは関係ないようだ。

 実際に変装しているクライブを見て、ヴィオーラが色々な服装をさせてみたいと思うのも納得する可愛さだった。

 こんなに可愛いのなら他のお洋服も着てもらいたいと思っても仕方ない。

 ヴィオーラが何か企んでるはずというのも服装関係ででも、何か大変な頼まれごとをされるのかもしれないと、納得したリーヴィ。


 試験が終わった後、居残り追加授業のリーヴィと、試験一発合格のクライブ。


「そんなに嫌なのに、一番上手いのは凄いですよ」

「まあ、まぁこんなのは作業だと思ってやればいい。こんな事ぐらいでオレの足を引っ張るな、次こそ合格しろ!」


 合格するまで帰れない。

 逆にいうと、合格したら帰っていい。

 紅の騎士団に詰める為の準備があるというのに、クライブは残って教えてくれる。その指導は厳しかったが、手際の悪いリーヴィには有難い教え方だった。

 去り際に「オレの相棒ということは、くれぐれもみっともない姿を見せるな!」そう言う忠告も忘れない。うっかりしているリーヴィにはありがたい。


 クライブ様って、本当に親切だよね。

 せっかく教えて貰えたんだから、明日失敗しないように頑張ろう……。


 そんな風に嫌々ながらも教えてくれるようになったクライブと、明日からの任務が友好的に組めそうな雰囲気なったので、なんとか安心しつつ。

 ヴィオーラの変装の試験にやっと及第点をもらえて終わったあと、ドレス姿で襲われた時の防御術を習う。

 それが済み、一時帰宅が許されると外の雨はすっかりと止んでいた。






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