28 出発
アルシードの洞窟。
センテの町より南へ馬で半日と少し、馬車で一日の場所にあるアルシード山にある洞窟であり、洞窟としての規模は中の上ぐらいだとか。
つい最近、そのアルシードの洞窟の奥から新たな遺跡が見つかったので、その事前調査を行う間の護衛をお願いしたい、というのが今回の依頼だ。
まあ、俺とアレスの目的はここの依頼に出てくる土竜退治なんだけどね。
「へー、結構大勢で行くんだね。これみんな遺跡調査に同行する人なんだよね?」
「アルシードの洞窟はそれなりに大きいし、魔物も結構な数が住み着いているからね」
ヘンリーとの出会いから四日後の朝、俺とアレスとポーラのいつもの三人は町の南口に来ていた。ここがヘンリーの出した遺跡調査の護衛依頼の集合場所だからだ。
ちなみに、本来ならヘンリーのほかにもう一人の学者が同行する予定だったらしいが、その同行する予定だった学者が昨日急に熱を出して倒れたとのことでヘンリーのみやってくるらしい。アレスが教えてくれた。
南口には既に鎧を着込んだ騎士たちが八人ほど集合しており、二頭立ての馬車が三台停まっていた。荷台らしきスペースもあるし、ぱっと見だが四人から六人乗りといったところか。どうやら今回は馬車で行くらしい。
まあ、今回は洞窟探索からの遺跡探索がメインだしな。体力を温存しておきたいとか、朝から目一杯探索の時間を取りたいとかそういう理由だろう。
「いやー、お待たせしました。申し訳ない。今回の依頼をさせてもらったヘンリーです、どうぞよろしく」
俺たちより少し遅れてヘンリーが到着した。これで全員集合かな?
「いえいえ、我々も来たばかりですのでお気になさらず。今回の護衛部隊の隊長を勤めさせて頂いています、アーノルドです。こちらこそよろしくお願いします。ところで、もう出発してもかまいませんかな?」
「はい、大丈夫です」
ヘンリーが一人だけマントを羽織っている騎士たちのリーダー格らしき男へと近づいて頭を下げ、遅れたことを詫びる。
その男、アーノルドは笑ってそれを受け流し、ヘンリーから出発の許可を貰うと全員を見渡してから声を張り上げた。
「それでは、無事に全員揃ったようなので、我々はこれよりアルシードの洞窟へと向かう! そして、その奥に新たに発見されたという遺跡の調査を行うヘンリー氏を護衛する! それが我々の役目だ、いいな!」
「オー!」
アーノルドが声を張り上げ今回の任務についての再確認を行い、他の騎士たちも雄叫びを上げて同意を示す。元気だね。
「今回はアレス様たちも同行するので、見苦しいところを見せないよう気をつけろよ? 何かやらかしたら給料が減ってしまうかもな」
「ひゃー、ただでさえ安い賃金なんだからそれだけは勘弁だな」
「へへ、違いねえ」
アーノルドが冗談めかして言い、騎士たちから小さな笑い声が漏れる。どうやらこの隊長殿はお茶目らしい。
「よし、それでは行くぞ! ……アレス様たちはこちらの馬車をお使いください。では、私はこれで」
「ありがとう。……さて。ポーラ、ティア、行こうか」
「はいはーい」
「ん」
御者を務めるおじさんに挨拶しながら馬車へ乗り込む俺たち。
全員が馬車に乗ってからしばらくすると、アーノルドの出発の号令が響いて馬車が動き始めた。
「……しまったわね」
「ん? どうかしたのポーラ」
しばらくの間ガタゴトと馬車に揺られていると、俺の横に座っているポーラが真剣な表情をしながらポツリと呟いた。
窓から外の景色を覗いていた俺はポーラの方へと目線をやる。何か気になる事でもあったのかな?
「アレスの位置からだと、ティアのパンツが見放題じゃないの。……やらかしたわ」
「はぁ……」
心配して損したわ。こいつは本当にブレないな。……というか今日はセクハラしないよな? しないでくれよ? 御者のおじさんという赤の他人がすぐ傍にいるんだからさ。
「でもいいわ、そっちだと……お触りが楽しめないしね!」
「甘い!」
案の定、ポーラが俺の胸へと手を伸ばしてきたので、その両手をガッシリと掴んで受け止める。
ふはははは、どうだ見たか! 不意打ちされなきゃこんなもんよ。
「ぬ! ふふふ……やるじゃないティア」
「私は近接特化型だよ? あまり舐めないでほしいね」
両手さえ封じてしまえばこちらのものだ。んー、ポーラの悔しそうな顔を眺めるのは気分がいいなあ!
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ! ……ちぇー。仕方ないわね。降参こうさーん」
「仕方ないのはどっちだか。ほら、もう変なことしないでよね」
そのまましばらくの間悔しそうに唸っていたポーラだったが、どうしようもない事を理解したのか降参してきた。ふふふ、勝った! ポーラに勝った! ポーラに勝った!
再度のセクハラを警戒しつつもポーラの両腕を開放してやると、意外にも素直にポーラは引き下がった。
……ふむ、てっきり、開放されたとたんにまた襲い掛かってくるものだと思ってたんだけどな。
まさかあのポーラがこうも素直に引き下がられるとは意外だ。……ちょっとだけ物足りないかも。
「あら? あらあら? どうしたのムスっとしちゃって。……もしかして、ティアはアタシにおっぱい揉まれたかったの? 癖になっちゃったの?」
ニヤニヤと嫌らしい笑いをしながら煽ってくるポーラ。
「は、はぁ!? そんな訳ないし! 別に揉まれたいとか思ってないし! いきなり変なこと言わ――ひん!」
「ふふふふふふ……隙ありよティア」
「あ……あぅ……ず、ずるい……ひゃあ! や、やめ……!」
俺が動揺した隙をつき、ポーラが素早く俺の胸に手を伸ばして揉んできた。
ああクソ、油断した!
助けを求めようとアレスに目線を向けるが、アレスはポーラに胸を揉まれている俺を見て、軽く微笑んだ後に魔法の袋から見覚えのある小さなベル型のマジックアイテムを取り出して軽く振った。
ちょ、何してんの! 防音とかいいから助けて! お願いだから助けて!
再度、目線で助けを求めてみると、アレスはそっと御者台と客室の間のカーテンを引いた。
違う、そうじゃない。確かに見られるのは困るけど、そうじゃないんだ。この変態を止めて欲しかったんだ。
「まだまだねえティア。うーん、やっぱりティアのおっぱい揉んでると落ち着くわねぇ。あるべきものがあるべき場所に納まった感じっていうか? なんか、そういう安心感を感じるのよねー」
「ふふっ……あははっ! ……ぐぅう……!」
「うふふっ、必死にこらえちゃってかーわいい。……ティアはこう揉まれるのが好きなのよねぇ? ほれほれぇ……」
勝手な事をほざきながら、いやらしい手つきでポーラが俺の胸を揉みしだく。
白くて綺麗なポーラの手の中で、ぐにぐにと揉まれて形を変える自分の胸を見ていると、嬉しさと気恥ずかしさが混ざったような妙な気分になってくる。
「ぐぅ……はな……せ……! んぅ…………!」
「ふふ、可愛い、本当に可愛いわティア。ほら、もっと可愛いところ見せてちょうだい?」
ポーラが俺にだけ聞こえるよう、顔を近づけて小さく呟く。
ポーラに褒められるたびに嬉しくなり、抵抗する気力が失せていく。……が、ここで流されてはいけないと自分に言い聞かせて踏みとどまる。
でもポーラも嬉しそうだし、ちょっとだけ……ちょっとだけなら別に……いや、流されちゃ駄目だって。流されちゃ駄目だから。
なんとかしてポーラを引き離そうとするのだが、力が入らないせいで上手くいかない。いや、それだけではなく、ポーラは俺が力を込めようとするたびに可愛い可愛いと囁いてきて抵抗する気力を奪っていくのだ。ずるい。
「ぐ……んぅ! 負けない……! 卑怯なポーラなんかに……負ける……もん、かぁ!」
流されそうになる自分に喝を入れる。そうだ、負けない。負けてなるものか。
たかが胸をちょろっと揉まれた程度で、この俺が、ガルム最強の兵器たるこの俺が行動不能になるなど認められない。
最後まで耐え抜き、ガルムの誇りを示してみせる!
強い決意を胸に、いまだ胸を揉み続けるポーラをキッと睨みつける。
「へえー、そんなこと言っちゃうんだ、ティア」
ふ、ふん。強がっても無駄だぞポーラ。決意を秘めた今の俺は、今までとは一味違うのだ。
そう、言うなれば……アルティメットティア! この程度の責めぐらいどうってことない! ……たぶん。
「よし、じゃあちょっと本気出すわよ。……アレスも止めないでよ? こーんなこと言われちゃったら、是が非にでも堕としてやりたくなるじゃない」
「……まあ、程ほどにね?」
不敵な笑みを浮かべ、アレスに手出し無用と言い張るポーラ。そして苦笑しながらその提案をを受け入れるアレス。
……あれ? これ、ちょっとやばくない? ていうかアレスもなんであっさり受け入れてんの? ピンチだよ? 親友のピンチなんだよ?
「あ、あの、ポーラ? ごめん、今のやっぱ無し。本気とか出さなくていいからさ、落ちつこ? ね?」
引きつる顔を無理矢理笑顔の形にし、大慌ててポーラを宥める。が……。
「あははははは! もう遅いわ! トロットロに蕩かしてあげる!」
「ひゃあぁ! あ、ちょ……やだやだやだ! ごめんなさい! ごめんなさい! 生意気言ってごめんなさい! ああぁぁ! 助けてアレスー!」
やはりというか、ポーラはやめてくれなかった。満面の笑みを浮かべたポーラが俺へと牙を剥いた。
それからしばらく時間が経過した後。
馬車の中にはポーラの宣言通り頭の中を完全に蕩かされ、涙と涎でぐちょぐちょになった情けない顔を晒して痙攣する俺の姿があった。
ごめんねみんな……ポーラには……勝てなかったよ……。
いつの間にか十万字超えてた、わーい(´・ω・`)
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