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21 ポーラとお出かけ(後編)

 ポーラの指差した店は武器屋というにはお洒落な外観をしていた。清潔感漂うベージュの外装に、店の前には花壇も置いてある。


「武器屋って割には綺麗だね。もっと無骨な感じの想像してた」


「まあ、ここは人も多いからね。じゃあ行きましょ?」


 ポーラに手を引かれて店に入ると、店の中にはさまざまな武器が置かれていた。今のところ、客は俺とポーラだけのようだ。


 店の中央にある棚にはナイフやバックラー、ガントレットのような小型の武器防具などが置かれ、刀剣類や斧、鎧などの大きいものは壁際のほうにあった。


「ティアは何か欲しい武器とかあるの? 立派な剣持ってたけど」


「んー、硬い相手用の打撃武器とか欲しいなって。硬鞭とかメイスとかそんな感じのが」


 俺のパワーとあの剣の頑丈さがあれば、全身鎧だろうがゴーレムだろうが無人兵器だろうが余裕で真っ二つにできるけど……やっぱ剣にはよくないしね。


 折れたら新しいのを貰えばよかった昔と違って、今は俺が持ってる一本しかないわけだし。あんまり負荷はかけたくないなあと思ったわけだ。ちょっとしたギミック搭載してるから、現代の鍛冶屋じゃ治せないだろうし。


 刀身の耐久とかをまったく気にする必要のない魔力式レーザーブレードも持ってるけど、今の時代でアレ使ったら目立ちそうだしなあ。人目があるところでも堂々と振るえる武器が欲しいのだ。


「まあ、あの剣ってすっごく頑丈だから耐久とかそんなに気にしなくてもいいんだけど……気分的に、ね」


「なるほど、メイスならあっちにあるし見てみましょっか」






「む」


 ポーラと一緒にメイスを物色していると、なかなかいいのを見つけた。

 柄頭に放射状に六枚のプレートが配置された、いわゆるプレートメイスというやつだ。

 プレート部分がカクカクしていてて格好いい。実に俺好みのデザインだ。色が黒なのもグッド。


 長さも俺の剣と同じくらいで丁度いいし、重さもまあよし。これに決まりかな?


「ポーラ、いいの見つけた」


「どれどれ? あら、カッコいいじゃないの」


「これはこれは、ポーラ様ではないですか。いらっしゃいませ」


 俺がポーラに気に入ったメイスを見せていると、前掛けをつけた店員らしきスキンヘッドのオジサンがニコニコと笑顔で近寄ってきた。捲り上げた袖から覗く筋肉が凄い。


「あら店長、久しぶりね。お邪魔させてもらってるわよ。調子はどう?」


「ははは、まあそれなりに好調ですね。それにしてもポーラ様がメイスとは珍しいですな」


 へー、店長だったのか。でもメイス欲しがってるのは俺なんだよな。まあ見た目が強そうに見えないからしょうがないけどさ。


「いや、アタシじゃなくてこの子のよ。こんなに可愛いけどすっごく力持ちで強いのよ?」


「ふふん!」


 ポーラが俺の両肩をつかんで店長の前へと移動させてきたので、とりあえずふんぞり返って強いんだぞアピールをしてみる。

 店長のオジサンは一瞬驚いたような顔をするものの、すぐに元の笑顔に戻って少し頭を下げる。


「これは失礼しました。本日はメイスをお買い求めで?」


「硬い相手用の打撃武器が欲しくてね。メイスや硬鞭みたいな、頑丈で持ち運びやすい奴がいいかなって。店長さんのオススメの品とかないかな?」


「なるほど……ところで、普段はどのような武器をお使いですか?」


「剣だよ。こんぐらいの長さのフランベルジュ」


 メイスを一度棚に戻し、両手を使って愛剣の長さを示す。持ち手は握りこぶし二個分で、刀身は十個分ぐらいだ。

 俺の示した長さを見て、店長は顎に手をやって何かを考える素振りを取る。きっと、商品を思い出してくれているのだろう。


「ほうほう。うーん、そうですなあ……。ああ、ありましたな。最近仕入れた品ですが、お嬢さんにお勧めできそうなものが」


「え、ホント? なら見せて見せて! あ、ポーラ。このメイスキープお願い」


「はいはい」


 さっき選んだメイスをポーラに渡してキープしてもらう。ポーラは苦笑しつつも俺の差し出したメイスを受け取ってくれた。


「了解しました。こちらへどうぞ」


 店長の先導に従い、会計机へと案内される。俺たちを会計まで案内して、店長は一言ことわったあとに店の裏に引っ込んだ。どうやら店内には置いてなかったらしい。これは期待してもよさそうだ。


 しばらくして待っていると、店長が黒い布袋を持って戻ってきた。おー、わくわくするなあ。


「お待たせしました、こちらになります」


 店長が布袋から油紙で包まれた武器を取り出し、丁寧にその包装を解く。そうして現れたのは黒い硬鞭だった。


 護拳がついていて一見すると剣のようだが、刀身にあたる部分は丸く棒状になっているので硬鞭だろう。

 大きさは握りの部分が拳一個ちょいに、刀身? 部分は拳八個ぐらいか。これは片手用かな?


 太すぎず細すぎず、うん、シンプルで格好いい。さっきのメイスよりもいいなこれ。


「こちら、ウルカより仕入れた硬鞭です。見た目はシンプルですが、頑丈さはかなりのものですよ。……ただ、欠点としてですね。まあこれはウルカ製の共通の欠点なんですが、対魔法性能が高すぎてですね。属性付与魔法や強化魔法の通りが悪くてねえ……」


 確か、魔法剣を主体とするルドラ王国の騎士に対して、ウルカ帝国の騎士は身体強化寄りなんだっけな。

 だからルドラと仲の悪いウルカの武器は魔法剣とカチ合えるよう、対魔法性能を高めてあるんだとか。


 ほう、性能まで俺とぴったしじゃないか! 気に入った! 完全に気に入った!

 隣でウルカ製と聞いて眉をひそめているポーラには悪いけどね。ていうかどっから仕入れたんだこの店長は。


「いいね、いいね! ちょっと持ってみていい?」


「ええ、どうぞどうぞ」


 苦笑する店長から硬鞭を受け取り、そのまま周りに気をつけて軽く手首で振ってみる。

 うんうん、持った感じもいいな。重い分には問題ないんだけど、軽すぎると問題だからね。


「ほう……さすがはポーラ様が認められるだけのことはありますな。かなり重いはずなのですが。……というか身体強化も使わずこれとは、いやはや凄まじいですな」


 店長が軽く冷や汗を流しながら賞賛の言葉を述べ、そこに慌ててポーラがフォローを飛ばす。


「ああ、ティアは特殊なの! 特殊な強化魔法なの! 周りからは見えないけど、ちゃんと身体強化の魔法使ってるの!」


「ああ、そうなのでしたか! ですよね、流石に身体強化はしてますよね。いやあ、この華奢な見た目で重いコイツを振るから驚いてしまいましたよハハハ」


 納得した様子で頷く店長にほっと胸を撫で下ろす俺とポーラ。


 そうそう、強化魔法を使うと薄く発光するから、魔法を使ってるか使ってないかは外からわかっちゃうんだよね。それで俺みたいな美少女が素の状態のまま超身体能力を発揮すると奇異な目で見られちゃうのだ。

 まあ特殊な強化魔法って言えば大体の人が納得してくれるけどさ。


 この言い訳、アレスが考えてくれたものなんだけどポーラはいつの間に聞いたんだろうな。まあいいか。ポーラ、フォローありがとう。


「いいね、これ。気に入ったよ! いくらなの?」


 店長に硬鞭を返しながら値段を聞く。さてさて、払える金額だといいんだけどな。


「こちらは金貨五十枚ですね」


「流石にするわね。ティア、大丈夫? アタシが出してあげよっか?」


 他の売り物の武器が金貨十枚から二十枚の間だという事を考えると、確かにちょっとお高いな。

 でもこれ気に入ったし、払えない金額じゃないし。


「大丈夫だよ。じゃあこれください」


 ポケットから金貨の入っている袋を取り出し、代金を支払う。一気に軽くなったな。


「まいどあり! 点検や修復の際にも際にもうちの店をよろしくお願いしますよ」


 店長から再び油紙に包まれ、布袋に入れられた硬鞭を受け取る。

 おーよしよし、これからサブの武器として可愛がってやるからな。


「この背負い袋もどうぞ。可愛いお嬢さんにサービスです」


「ありがとう!」


 オマケとして持ち運び用の背負い袋まで付けてもらった。うーん嬉しい! 喜びを隠し切れずについニヤけてしまう俺。

 そして、そんな俺を見て店長とポーラが顔を見合わせて微笑みあう。

 や、やめろ。そんな微笑ましい顔で俺を見るな!


「あ、ポーラ様。そちらのメイスですが、こちらで戻しておきましょうか?」


「じゃあお願いするわ。はい」


「はい、確かに。それではまたのお越しを!」






「ごめんね、結局私の買い物だけで終わっちゃってさ」


「別に気にしなくていいわよ。ティアはこっちに来たばかりなんだし」


 武器屋から出た俺たちは屋敷に戻ろうと歩いていた。硬鞭を抱えたままでは歩きにくかろうというポーラの判断だ。

 その提案はありがたかったのだが、せっかくのお出かけが中途半端なところで終わってしまって申し訳ない気分になる。


 うう……失敗したなあ。硬鞭に関しては武器屋の店長にキープしてもらって、最後にまた買いに来るって手もあったのに。次は気をつけよう。


「それよりもよかったわね。気に入ったのがあって」


「うんうん。いいのが手に入ったよ。まあこの大きさだと常時持ち運ぶのは辛いって欠点もあるんだけどね」


 気持ちを切り替えてポーラの質問に答える。

 できれば両方持ち歩きたいんだけどね。普通の相手には剣を、硬い相手には硬鞭をって感じで使い分けれたら最高なんだけど……。


「普通に背中に背負うんじゃ駄目なの? なら馬に括り付けとくとか、アレスに預けとくとかは?」 


「アレスに?」


「そう。魔法の袋に仕舞っといてもらうの。ティアはマジックアイテムを使えないけど、アレスなら問題なく使えるからね。必要な場面が来たら出してもらえばいいじゃない」


 一見すると普通の袋だけど、中が魔法で拡張されてて物が沢山入る袋だっけな。アレスに聞いてみて、問題ないのなら入れてもらおうかな。


「じゃあ、屋敷に帰ったらアレスに聞いてみようかな。ありがとポーラ」


「どういたしまして。まあ打撃武器が必要になるほど硬い相手ってそうそういないし、普段は家に置いといて必要なときだけ持ち出すって形でもいいような気もするけどねー」


 そうやって油断してるときに限って、何故か硬い相手が出てくるんだよねえ。

 まあ、あくまで念のためというか、気分的な問題で欲しかっただけだし……アレスに聞いて、駄目だったらそれでいいかもだね。

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