第9章その5 揺れる感情 芽生える友情
ーーー再びリヨの家
ルーシー 「ここに両親と住んでるって事でしょ?留守なの?」
リヨ 「うん、仕事に行ってるよ。今日は狩りに行くと言ってた」
ルーシー「今日は?他にも仕事があるの?」
少し微笑んで、リヨが答える。
「バムも言ってたと思うけどドライムは、自分達の事は自分でするからね。野菜を育てたり鉱山に採掘に行ったり道具を作ったり、日が出てる時間は何かしらしてるよ」
ルーシー「何もしない休みの日とかは、ないの?」
リヨ 「大雨で活動しにくい日は、休む時もあるけどね。一生いかに同じ日々を過ごせるかが大事なんだって」
ルーシー 「同じ日々かぁ…なんかわかる。私達も少し似てるから」
リヨ 「うん、あなた達が標準的な人間の感じはしないね。思ってたイメージと全然違うもの」
ルーシー「狩りは?リヨ達なら大きい動物とかも狩れちゃうんでしょ?」
リヨ「うん、本気を出して協力すればダガーくらいは狩れるよ」
ルーシーは目を見開いて驚いた。
「ダガー!?あのデカネコよね!?」
リヨ 「そう、あのデカネコ。でも狩らないよ。食べきれないから。多くても2日分までしか狩らないんだよ」
あまりの違いに、一瞬言葉を詰まらせた後にルーシーは思い出したかの様に聞いた。
「あ!そうだ。リヨ!兄弟は!?兄弟は居ないの?」
リヨ 「居ないよ。ドライムは両親に対してに一生子供1人に決まっているんだ。何人も生まれても守れないから」
これは、生物的な特徴などではなく彼らが掟の様な物を決め一生守り抜く覚悟で子を設ける様になっているのだ。
ルーシー「え……」
ルーシーは、言葉を詰まらせた。
自身は18歳で軍に入隊し、同世代の友人がボーイフレンドとダンスホールに行ったなどと聞いても前線に出て戦い、
友人が結婚しましたと聞いた時も実践演習で、血反吐を吐いて泥だらけになり過酷な環境を生き抜いて来た。
現在31歳。
女性として最も美しく輝ける時代を、泥と血にまみれて来て自分よりハードな女性など居ないと思って生きてきた。
自分が選んで歩んで来た道、後悔などあろうはずもない。
24歳と、言い続けて居るのは心のどこかで「女の子」と言う気持ちがあったからだ。
リヨの話を聞き、生活を見せて貰うと、自分より遥かに過酷な環境で暮らしながら、こんなに楽しそうにしている。
私には、休暇もある。地元に戻れば両親も友人も居る。
時には、部隊の皆で酒を飲む事もある。
そんな事を思いながら、リヨの顔を見ると優しい顔で微かに笑ってくれた。
どうしてなのか?どう言う感情かルーシー本人にもわからないが、一挙に涙が溢れ出てリヨを抱きしめていた。
リヨ 「ルーシー……?」
ドラゴノイドにはハグをする習慣は無いが、そこには確かな愛があった。
リヨも優しく抱きしめ返した。




