プロローグ 心霊対策課
秋の夜長は、静かすぎてかえって耳が痛む。
そんな時は、私の元に嫌な事件が舞い込むものだ。
私の名前は紅翔太。表向きは祖父から受け継いだ『アンティーク紅』の二代目鑑定士として、この古びた店のカウンターに座っている。だが、ショーケースに並んだ銀器や時計が微かに発する歴史の鼓動よりも、今の私の耳は別の音を拾っていた。
店の奥、事務机の上で震えるスマートフォン。
画面に映し出された『心霊対策課』という名前を見て、私は静かに通話ボタンを押した。
「もしもし、紅です」
『私『心霊対策課』の清水です。紅さんに緊急の依頼です』
電話の向こうから聞こえたのは、『心霊対策課』所属の清水という女性だ。『心霊対策課』とは警察の部署の一つに刑事部がある。その中で三年前に設立された新しい課なのだ。
近年、動画投稿サイトの影響で心霊スポットや廃墟へいく若者が増加しており、その分何かしらの事件が起きている。しかし、捜査を行っても証拠はあるが、現実的では起こりえない現象ばかりなので結局、未解決事件になってしまう。
そこで、心霊関係の事件に対して捜査を行う『心霊対策課』を発足したのだ。
ここに配属される条件とはたった一つ、霊能力者であること――なのだが、都合よく霊能力者が警察にいるわけもないので、当初は警察で許可された団体に事件の捜査を委託する形で事件を解決していた。
現在では、少しずつ警察に霊能力者が集まっているものの、起きる事件の数に対して人員がまったく足りないでの、団体への依頼が年々増加している。
ちなみに私は友人に誘われて『心霊現象並びに都市伝説調査組織』に入っており、霊能力者でもあるのでよく『心霊対策課』からの依頼を受けていた。
本来は『心霊現象並びに都市伝説調査組織』へ話が行くはずが、直接『心霊対策課』が指名してきたということは、かなり火急の事案なのだろう。
『K地区の廃病院でまた行方不明者が出ました。心霊動画の撮影に行った若者三人が、そのまま消えたようで、我々もそこまで手が回らない状況です』
「K地区の廃病院と言えば、かなり有名な心霊スポットだったような……」
スマホをスピーカーにして、パソコンで検索すると――出るわ出るわ、一万件以上がヒットしてしまった。
とりあえず、最初にヒットしたサイトへ入って調べてみる。
「主な噂は、五百三号室に現れる謎の男、屋上に現れる血まみれの女性、それと――」
『手術室の医者です』
彼女の言う通りだ。




