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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第三章 アオハル編

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「聖女狩りが始まったかもしれない?」

「まだ、疑惑の段階だがな」


 パパの執務室で、リディはパパの横に座り、今日のおやつのチョコレートを口にしていた。リディの腰には、パパの腕が回っている。


 パパの斜め前のソファーに座るブリスが、パパの返事に続くように、書類を見ながら口を開いた。


「疑惑というのは、死因や行方不明など原因がバラバラだからです。一人は飛び降り自殺、一人は失踪して行方不明、一人は毒の誤飲による事故での死。リディの前回の回帰の時は、全員が行方不明もしくは殺されたはずです。前回とは少し違います」


 リディの前回の回帰では、聖女狩りというのがあった。リディもそれが原因で殺されたのだ。


「……でも、前回とはずいぶん日時が違うね。前は、私が十二歳の頃だったのに」

「はい。それと、人数もまだ三人なので、聖女狩りではなく、たまたま死亡時期や失踪の時期が重なっただけ、と言えなくもないため、疑惑の段階といったところです」

「三人の死亡や失踪した日の間隔はどのくらい?」

「一人目から三人目までの間隔は、十日ですね」

「十日か……。それは、怪しいね……」

「はい」


 十日で三人というのは、偶然にしても多い。

 前回の回帰の聖女狩りについては、今のところ犯人が分からない。だから、代わりにこれまで聖女が死んだら状況を確認する、ということを秘密裏に行ってきた。だから今回も気づけたのだ。


「しばらく注視して、聖女狩りかもしれない黒幕は探ろうと思いますが、リディもしばらく気を付けてくださいね。今回は聖女と認識されていないので、大丈夫だとは思いますが」

「うん」


 今回のリディは、最近ではほとんど光の魔法を使うことはないし、聖女狩りに巻き込まれることはないだろう。


「リディが不安なら、リディが今度参加する狩りに俺もついて行こうか?」


 リディの斜め前に座るルシアンがそう言った。


 リディは、今度、皇家主催の狩りを行う催し物に参加予定なのだ。聖女狩りとはまったく関係のない、動物狩りである。


「ううん。皇家主催の狩りって参加者が多いんでしょ? 大勢がいる場で聖女狩りなんて起きないと思うよー。私は一人でも大丈夫」

「そうか?」


 リディはルシアンの口元にチョコレートを持っていくと、ルシアンは口を開けてチョコレートをモグモグした。


 皇家主催の狩りは毎年行われている。家門からは一人は出す必要があるので、ラヴァルディ公爵家からは、ルシアンが毎年家門代理として出席していた。しかし、今年はリディが学園に入った上に、パーティー等にも参加して表舞台に出るようになったので、リディが代表で参加することにしたのだ。男女関係なく参加できるので、女性も数人参加すると聞いている。


 そんなことを話していると、パパの部屋にパパの部下が入ってきた。少し険しい顔をしている。


「閣下、罪人聖女エミリーが何者かに殺されました」

「えっ……!?」


 みんな顔を険しくするのだった。



 罪人聖女エミリーとは、リディを聖水で殺そうとしたエミリー・カリエのことである。罪状が決まってから、ラヴァルディ領の指定の場所に住み、普段は聖女として力を発揮してもらっていた。


 ラヴァルディ領に住まうようになったエミリーは、死刑を免れたからか、抵抗することなく素直に聖女の仕事をしていると聞いていた。


 また、罪人として、ラヴァルディ独自の契約を施していたため、悪魔の目の監視付きだったのだが、監視は監視なだけで、殺される時にエミリーの身を守るわけではない。だから、エミリーは殺されてしまった。


 まさか、エミリーがこんなことになるなんて。死刑を免れて、真面目に頑張ってもらおうと思っていた矢先の出来事でショックだった。


 監視の目の悪魔によると、犯人はフードをかぶった全身黒色の服を着た男。朝方寝ていたエミリーをあっという間に殺害したという。顔も目しか出ていなかったので、犯人の目星も付かない。


 しかしその後、犯人らしき人物がラヴァルディ領にある森で殺されているのが見つかった。どうやら、その犯人も、口封じで殺されたのかもしれないという見解だった。


 エミリーの裁判はラヴァルディのリディを狙ったことで注目されていた。刑罰のため、ラヴァルディ領に移されたエミリーに悪魔の監視付なのも知っている人は知っていたはずだ。それを分かっていても、危険を冒してまでエミリーを殺さなくてはならなかった理由が、何かあるのではないか。


 エミリーが殺されたことで、聖女狩りが疑惑ではなく、確実に始まったのだと今は確信していた。


 ただ、前回の回帰ほど、大々的に聖女狩りが行われているわけではなさそうなのだ。前回は、聖女がほとんど全員殺されたのだ。聖女が殺されていると一般人でも知っているくらい有名だったので、リディも殺されないために隠れて生活していたのに、結局殺されたのだから。


 今回の聖女狩りで狙われた聖女には、何か共通点があるのかもしれない。


 そう思っていると、共通点が一つ見つかった。全員が金髪だったのである。


 金髪、それは、リディが何度も回帰する中で、光の妖精ララに変えてもらっていた髪色だった。


 もしかして、前回も今回も、聖女狩りの最終ターゲットがリディなのではないか。確信はないが、そんな感覚がリディをゾッとさせるのだった。

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