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リディは学園の庭園のパラソル付きテーブルセットで、クラスの子たちとおしゃべりに花を咲かせていた。ルルや他の女の子たちと、会話の内容は年頃らしく、誰がカッコいいなど、好きな男性タイプの話である。時々こういう話はしていた。リディも他の子達も、恋愛には高い関心を示している。
とはいえだ、皇宮のパーティーから数日、学園人気の皇子二人ではなく、なぜか話題はリディのパパだった。
「噂には聞いていたけど、リディのお父様って、かっこよすぎじゃない?」
「私もそう思いました! 鋭い視線で他の方と話されていたのに、リディ様には柔らかい笑みを向けられていて! 私にもその視線が欲しいと思いました!」
「私は、あの鋭い視線で睨まれるだけでも、ぞくっとしそうです! ある意味、ご褒美かも!」
「あ、ありがとう?」
パパがすごく人気だ。ラヴァルディ領でも熱狂的なファンがいるが、まさかリディと同年齢の子にも人気になるとは思わなかった。確かに娘のリディから見ても、カッコいいと思う。
ルルが興味深々の顔で口を開く。
「リディのお父様って、おいくつなの?」
「えっと、三十二歳?」
「さ、三十二歳~!?」
「ええ!? もしかして、今の私たちの年齢でリディ様が?」
あ、そういえば、そういう設定だった。リディはパパの十六歳の時の子の設定なのだ。
「うん」
「きゃあ! じゃ、じゃあ、もしかして、今の私でも立候補したら、望みはありますか?」
「……? 望み? 立候補って?」
「リディ様のお父様の後妻に私はいかがでしょうか!」
「えっ」
「そ、それなら私が!」
「私だって!」
パパが人気過ぎる。みんなの目が本気過ぎて、怖い。とはいえ。
「だ、駄目ー! パパに私と同じ年の奥さんができるなんて駄目! 私は反対!」
「そんなこと言わず!」
「駄目駄目! パパに私と同じ年齢の奥さんができたら、私、友達に『ママ』って言うの? 絶対嫌!」
「え、そこ? 友達なんだから、名前で呼べばいいじゃない」
「問題はそれだけじゃないもん……! 娘の私より奥さんのほうが大事で可愛いってパパが言ったら、私、泣いちゃう!」
「もしかして、少し想像してる? すでに、ちょっと涙ぐんでるけど」
「もう、リディったら~パパっ子め~」とみんなに笑われながら、ここで拒否っておかないと、本気で友達がパパの奥さんになったら困る、と牽制していると、後ろから声を掛けられた。
「リディ、少しだけ時間もらえないかな」
「……レオ? うん、いいよ」
クラスの子たちから離れ、リディはレオと庭園のベンチに座った。昨日のリュカのように、レオも寝不足なのか、少し顔色が悪い。
「……レオ、体調は悪くない?」
「ん? 大丈夫だよ」
「でも、顔色が……」
「……ああ、少し公務が立て込んでいたからかな。大丈夫。なんともない」
公務だけだろうか。もしかしたら、リュカが皇族になったことへの余波で忙しい、ということもあるのかもしれない。ただ、リディにそれについて口出しはできない部分だ。でも、レオが少し心配だった。
「友達と話していたところを、ごめん。最近リディと話すこともできなかったし、リディを見かけたら、話しかけずにはいられなかった」
「いいの。気にしないで」
レオはリディの手を取り、ぎゅっと握った。
「……人生って、思う通りにはいかないものだね」
そう言って、はっとした顔のレオは、苦笑した。きっと言うつもりのないことが口に出てしまったのだろう。リディは少し考え、レオの耳に手を添えながら、口を近づけた。
「今週末の夕方、レオのところに行くね。少しお話しよ」
「……本当に? 来てくれる?」
「レオがよければ。スケジュールはどう? 忙しいかな」
「絶対に予定は空けておくから、来て欲しい」
「うん」
レオの耳元から離れ、互いに笑みを向ける。レオはきっと悩んでいる。リディに言えないこともあるだろうけれど、何か愚痴でも話せれば少しはすっきりするかもしれない。
「楽しみができたから、少し元気になったよ」
「そ? なら、良かった」
そうやって、その後はレオと他愛もない話を楽しんでいると、リディたちに近寄る人がいた。リュカである。
「……リュカ」
「二人で何の話をしているの?」
ベンチの、リディが座っているレオの反対側のリディの隣に、リュカが腰を降ろした。そして、レオと繋いだリディの手に目をやり、リュカはリディの腰を引いた。お陰で、リディはリュカの方へ、ベンチを少しだけ横滑りする。
なんだ、これ。何がどうなってる?
「……リュカ、今リディと二人で話をしていたから、邪魔しないでくれないか?」
「……リディ、俺がいたら、邪魔?」
リュカー! 何でそれを私に聞くー? リディは、なぜか冷や汗をかきだした。
「じゃ、邪魔ではないよ?」
「レオポルド殿下、邪魔ではないそうですよ」
リディの頭の上で、レオとリュカの視線がバチバチしている気がする。なんで。
やっぱりあれか。水面下で皇子同士の後継者争いが始まっていたりする? 怖いから始まってないって言って! というか、リュカは、皇子にはなったけど、レオと争うつもりはないって言っていたのに。そのあたり、レオと話をしていないのだろうか。リディから何かを言えるわけないので、その件をリディとしては黙っているしかない。
「二人とも、少し落ち着こうか」
そう言ったが、二人は相変わらず無言で視線を交わしている。これはもう、実は仲が良いと思ってもいいのか。
「ちょ、ちょっと早いけど、そろそろ次の講義が始まるから、行こうか!」
リディは立ち上がり、二人の手を片方ずつ握ると、二人をベンチから立たせた。
「はいはい。行こうね~」
それから、二人の手を引っ張り、校舎まで二人を連れて行くのだった。
少し気疲れしたリディであった。




