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リュカと昼食を一緒にした日の次の日、リディの魔法クラスでは、魔法の適性検査が行われていた。自分にどの魔法が適性があるのか、確認してもらえるのだ。
魔法クラスなだけあり、元々みんなが魔力を持っていることは、自分自身で分かっている。魔力持ちの子は、親もほとんど魔力を持っている場合が大半なため、これまで家で多少の魔法訓練をしている子もいるのだ。
そうはいっても、魔法の適性は一つとは限らない。これまで得意と思っていた属性以外の得意な魔法属性も見つかる場合がある。
教室の前には、魔法の適性検査用の石が数種類置かれていた。火属性用の石に反応があれば火属性、水属性用の石に反応があれば水属性、というような判定ができるのだ。ちなみに、光属性と闇属性は、使える家系が決まっているので、最初から適性検査の石の用意はない。
現在、シャリエル公爵令嬢のルルが判定をしているところだった。いくつかの石に反応があり、教室中が盛り上がっている。
「私は、火属性以外には風属性も適正があるみたい! あと、土属性も少し反応があったわ」
「お、風属性いいじゃん!」
「おめでとう、ルル」
上機嫌のルルに、マリオット侯爵令息のフェルナンと拍手を贈る。ルルの家系は、火属性魔法が得意な一族のようで、元々火属性の魔法は訓練していて、すでに使えるそうなのだ。
「今後は風属性を重点的に訓練して、火属性と合わせ技ができるようになりたいわ」
ルルは気合に満ちている。
ちなみに、フェルナンは土属性が一番得意な属性で、今回火属性も適性があると分かって喜んでいた。
リディの検査の番になり、リディも一つずつ属性を確認していく。そしてリディに適正があると分かった魔法の属性は。
「私は、水属性と雷属性が適正があったわ」
「お! 雷属性はすごい!」
「おめでとう、リディ!」
雷属性の魔法は、使える人が少ないらしく珍しいのだという。パパも使えるから、というより、リディは知らなかったけれど、リディの実父も雷魔法が使えたというから、遺伝的なものかもしれない。また、水魔法は実母が得意だったので、こちらも遺伝的なものかもしれない。水魔法は、生活魔法として使いやすいため、遠い記憶の中で、母がよく使っていた記憶があるのだ。
魔法適正の確認が終わり、講義が終わったため、ルルとフェルナンと一緒にリディは別の教室に移動していた。次の講義は、いつもとは違う別の建物の教室を使うため、渡り廊下を歩いていると、向こうから知った顔が歩いてきているのに気づいた。
「レオ!」
「リディ」
皇子で生徒会長でもあるレオは、リディを見て笑みを浮かべた。レオは複数人の人を連れている。
「学園内では初めて会ったね、リディ」
「そうね、レオ。でも、私は、何度も学園でレオを見たよ。生徒会長はとても忙しそうね」
「そうだね」
遠目でレオを見かけることはよくあるが、いつも誰かしらと忙しそうにしている。話しかけようか、いつも迷って、結局話しかけないでいたのだ。
「レオポルド殿下を呼び捨てなど、失礼ではないかしら」
レオの斜め後ろにいた女生徒が、少し前に出てそう言った。誰だろう。蜂蜜色の髪で青い目の、とっても綺麗な子だった。
「ローズ嬢、リディには俺がそう呼んで欲しいとお願いしていいるから、失礼なことではないよ」
「……レオポルド殿下が?」
怪訝な表情の女生徒に、レオは穏やかに笑みを返した。
「それより、君たち、先に行っていて欲しい。俺はリディと少し話があるから」
「で、ですが、この後、すぐに会議が……」
「うん、分かってる。すぐに追いかけるから、先に行っていて」
レオと話をしていた女生徒に、リディは一瞬睨まれたが、女生徒と他の人たちはレオを置いて先に去っていく。
「ルル、フェルナン、ごめんなさい、先に教室に向かっていて」
「分かったわ。失礼します、レオポルド殿下」
ルルとフェルナンはレオに対し少し戸惑いの表情だったものの、普段物怖じしないタイプの二人なので、空気を読んだのか、何事もなく二人とも去っていく。
「レオ、話って?」
「ん? 特別に何か話があるわけじゃないんだ。リディと少し一緒にいたかっただけ。最近、リディと会う時間がないから」
確かに、昔に比べて、最近はレオと会う時間が減ってしまっている。レオは公務があり、そして学生でもあり、生徒会長もやっている。リディも忙しいため、皇宮へ行く時間がなかった。
リディはレオの顔を窺う。なんだか、少し疲れた顔をしている気がする。レオの両頬を両手で包んだ。
「お休みって取れてる? 休日もお仕事ばかりなの?」
「そうだね。休日らしい休日は、もう何年も取れていないかな」
レオは、レオの両頬を包むリディの両手の上から、自身の両手を重ねた。
「リディ、少しの時間でいいから、俺に会いに皇宮に来てくれないかな?」
それは、週末の休日に来て欲しい、というお願いだよね。週末はパパに会いたいので、ラヴァルディ領に帰る予定なのだ。ただ、レオの体調も気になる。リディと話をして、少しでも気晴らしになるなら、会ってあげたい。
「……週末の休みの最後の日、夕方くらいにレオに会いに行こうかな」
「本当? そうしてくれると、嬉しい」
レオが嬉しそうにする。この笑顔にリディは弱いのだ。レオのことは、お姉ちゃんなリディが、守ってあげないといけない、という感情が、昔から抜けないのである。レオには弟ではなく兄の方がいい、と昔言われたのだが、やはり弟な気がしている。
忙しいレオをそこで見送り、リディも移動教室へ向かった。すると、途中でルルとフェルナンがリディを待ってくれていた。
「初めて行く教室だから、迷ったらいけないでしょ」
「ありがとう、ルル」
移動教室まで歩く間、ルルとフェルナンが口を開いた。
「皇子殿下とリディって、仲がいいのね」
「そうね。昔からの友達なの」
「そうなんだ。でもさ、さっきは一瞬、戦い勃発かと思って、ちょっとドキドキしたわ」
「俺も。まあ、リディはリュカ・ベルリエとも仲がいいみたいだから、ちょっとさっきのアレは混乱したけど」
「え? アレって? 何の話?」
「……リディって、まさか知らない? さっきの女生徒、ローズ・ベルリエでしょ」
「……そうなの?」
ローズ・ベルリエ。リュカの妹。リュカを小さい頃からいじめていた妹。
「知らなかったんだ? リディがリュカ・ベルリエと仲良さそうだから、ベルリエ公爵家とラヴァルディ公爵家の因縁? って、リディの代ではないのかと思っていたんだけど。違うの?」
「うーん、どうなのかな。私も分からないの。リュカとは仲がいいけれど、それはベルリエとして仲がいいとか、そういうことではなくて、リュカ一個人としてだから。ローズ・ベルリエとは、さっき初めて会ったのよね」
ただ、ローズ・ベルリエは、先ほどの感じを見るに、リディを良くは思っていなさそうだ。なんでだろう。やはりリディがラヴァルディ公爵家だからだろうか。因縁を感じられている?
面倒なことにならないといいな、そう思うのだった。




