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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第二章 少女編

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 動物か魔獣か、どちらを生贄にしているのかを確認しなければならない。パパの説明に頷いていると、パパが「それから」と続けた。


「生贄の話はこれまでとして、呪われているリディの血をどこで入手したのかを考えなければならない」

「……血?」

「そうだ。呪う相手の血が必要なんだ。リディ、誰かにリディの血をあげたりしていないか?」

「えぇ? さすがに、血は誰にもあげないよ?」

「そうだよな。さすがにないよな」


 パパはリディがほいほい他人に血をあげているとでも思っているのだろうか。リディの信用がなくて、悲しいんですけど。


「であれば、主治医か?」

「うーん、先生でもないと思うけど」


 ラヴァルディ公爵家には、お抱えの医師がいる。主にリディとパパの主治医である。二人とも聖女などの神聖力による治癒が効かないため、怪我や病気といったら先生が診てくれるのだ。


 また、先生はリディとパパ以外にも黒騎士団の騎士を診てくれることもあるが、黒騎士団は聖女の力が効くので、先生より聖女に診てもらうことが多いのだ。


 ちなみに、ラヴァルディ公爵家には、お抱えの聖女もいる。リディとパパではなく、主に黒騎士団の騎士を診てくれるのだが、時々ラヴァルディ領の住民を見てもらうこともあるので、彼女はなかなか忙しい。もう一人くらい、雇うのを増やした方がいいのではないかと思う。


 とにかく、医師の先生は、ラヴァルディ公爵家の敷地内にある先生用の家に住んでいて、リディとパパが健康な時は、その家で薬の研究をしている。だから、今は暇だろうから、とブリスに先生を呼んで来いとパパは言った。


 そして、やってきた先生は、まだ薬の研究で忙しくしていたのか、白衣を着ていた。無精髭が生えた、四十歳くらいの男性である。先生はコテっと顔を傾け、口を開いた。


「どうされました、閣下」

「リディの採血をした血は、検査で使った後はどうしている?」

「もちろん、処分しています。ラヴァルディの血を流出させるわけにはいきませんから」


 先生は、ラヴァルディ公爵家で働く時に、特殊な契約をしている。ラヴァルディにとって、不利益が生じることをした場合、殺される。そういう契約をしている。賃金は高いし、家も無料で住めるし、研究はし放題。昔、夢のような職場だと、先生が言っていたのをリディは知っている。


「最近、リディの血を売ったりしていないな?」

「するわけありません。僕の研究ができなくなると困ります。それに、お嬢様の採血をしたのは、一番最近で半年以上前ですし」

「……分かった。帰っていい」

「……? 承知しました」


 どうやら、先生はリディもしくはパパの治療に呼ばれたのだと思っていたに違いない。大きいバッグを持っていたから。


 先生が去ると、パパはまた考えるような顔をしながら、リディを向いた。


「主治医ではないな」

「うん。先生、売って得るお金で喜ぶタイプじゃないもの。とにかく薬の研究がしたい人だから」

「……リディは本当に誰にも血をあげていないな?」

「あげてないってばぁ!」

「であれば、怪我をして、血を拭いたハンカチを誰かに渡したとかないか?」

「怪我? ……うーん、最近怪我とかしてないと思うんだけどな」


 剣や体術の訓練で怪我はしていないはず。魔獣討伐でも怪我はしていない。リディが首を傾げながら唸っていると、ララも同じように首を傾げながら考えているようで、しばらくして、はっとした顔をした。


『リディ! そういえば、前に服の店で『痛い』って言っていなかった?」

「……ああ、そういえば。ドレスの仮縫い確認の時に、お針子見習いの人かな? が、私の首の後ろを刺して、痛いと言ったかも。でも、刺されたって、たぶん待ち針とかだよ? 怪我まではしていないと思う」

「でも、血が出た可能性はあるんだな?」

「可能性は……あるかも?」


 そういえば、過去の回帰の中で、いじめられていた時、わざと針で刺されて血が出たことを思い出した。ということは、待ち針でも血は出ていた可能性は否定できない。


 婦人服の店には、明日確認してもらうことになった。


「黒魔術の呪いは、生贄と呪う相手の血があればいいの?」

「あとは、契約陣の術式も必要だ。魔法陣と似ているが、悪魔と一時的に契約するものだな」

「悪魔って……ヴァルバス?」

『なんで俺サマだよ! 悪魔は他にもいるんだゼ! 弱っちいのがな!』


 ラヴァルディにも、ヴァルバス以外にも契約悪魔はいる。だが、基本的にパパの傍にいるのはヴァルバスで、それ以外の悪魔は必要な時にだけ呼ぶのだ。


 リディもヴァルバスと契約しているけど、リディには普段悪魔が傍にいることはない。なぜかといえば、光の妖精ララがリディの中にいるし、悪魔とララが相性が悪すぎることもある。ヴァルバスのような悪魔がリディのところに来るのは、パパによる依頼があった時だけだ。まだリディは後継者だし、悪魔の必要性はいまのところ感じていない。


 とはいえ。


「弱っちいなら、ヴァルバスから黒魔術の呪いをやめてって、その悪魔に言えないの?」

『あっちはあっちの契約だろぉが。いくら下位悪魔でも俺サマが他の悪魔の契約に干渉はできねぇ』

「そうなんだ……。その悪魔は下位悪魔なの?」

『普通の人間に呼び出せる悪魔は、下位しかいねぇ。ラヴァルディとは違うんだゼ!』


 悪魔同士でも、色々制約はあるらしい。コネでどうにかしてもらう作戦は無理のようだ。


「とにかく、呪いを解くには、さっき言った術式と呪った相手を見つける必要がある。リディは心配するな。俺がどうにかする。すぐに調査に入るが、さっきの服の店以外にも、何か血のことで思い出すことがあれば、俺に言え」

「うん」


 はぁ、と息を吐くと、パパがリディを抱きしめた。早く呪いを解かなければ、パパにこうして抱きしめてもらうこともできなくなってしまう。早く解決したいと思うのだった。

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