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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第二章 少女編

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 リディは夢を見ていた。リディの目の前に、木がニ十本近くある。これが世界樹の新芽だと、リディは知っている。


 複数ある木の中で、一本だけ、他の木より背の高い木がある。この木が大きくなれば、いつかは今の世界樹の次代となるのだろう。


 大きくなれ、大きくなれ。

 この木が無事に大きくなれば、やっとリディは役目から解放される。


 もし、またリディが死んでしまったら、この中途半端に大きくなった木もまた、死んでしまうのだろう。


 残りの木も、そんなに多くない。残された機会も、そんなに多くない。


「……残された機会?」


 ふとそう思っただけなのに、なぜそう思ったのか分からない。

 パパに聞いてみよう。パパなら何か分かるかもしれない。



「お嬢様! そろそろ起きてくださいませ! 今日は忙しいのですよ!」


 リディはメイドに声を掛けられ、目を開けた。ここはリディの自室。すでに朝のようだ。


「……何か、パパに聞かなくちゃいけないことがあったような?」


 確か、世界樹の夢を見ていたのだ。いつもの夢。木の成長を見守る夢。でも、何か疑問があった気がするのに、それを思い出せない。


「お嬢様! 顔を洗ってくださいませ! その後、まずは朝食をなされてください。それから準備に取り掛かりますよ!」


 再度のメイドの声掛けに、はっとし、リディは慌ててベッドから出た。


 そうだった。今日はリディの誕生パーティーが行われる日。朝から準備に忙しくなると、昨日の夜、メイドに準備のスケジュールを確認されたのを思い出す。


 リディは、メイドの言う通り、顔を洗い、朝食をし、それから着替えて準備を始めた。今日のリディの朝食時間はいつもより早かったため、パパやブリスやルシアンはいなくて少し寂しかったけれど、仕方がない。食堂に向かっていると、今日のパーティー準備のため、すでに使用人たちが慌しく準備に動いていた。


 今日は昼食に合わせるために、昼前からパーティーが開始される。招待客の令嬢たちが到着する前までに、準備を終えなければならない。


 メイドたちに準備を手伝ってもらいながら、着替えて、髪を整えて、薄く化粧をして鏡を見た。


「とっても素敵です! 天使のようです!」

「可愛すぎです! うちのお嬢様が世界一可愛いです!」

「ありがと!」


 いつも褒めてくれるメイドたちに照れる。リディも、今日は可愛くなれている気がすると思っている。


 招待客の令嬢が来るまでまだ少し時間があるので、パパの部屋へ行った。パパもちょうど着替えなどの用意が終わったところのようだ。相変わらず、パパがかっこよすぎだ。どうみても、十三歳の娘がいるようには見えない。


「パパ」

「準備できたか。……とても可愛いよ」

「ありがと!」


 パパに可愛いと言ってもらえるのが、一番嬉しい。ニコニコと笑みが止まらないリディを、パパが抱き上げた。


「もう十三歳か。ここ数年が短く感じるな。これからも元気にいてくれることが、俺の願いだ」

「パパ、これまで一緒にいてくれてありがとう。これからも、ずっと私の傍にいてね」

「ああ。当然だ」


 パパの頬にキスをする。リディが初めて十三歳になれたのは、パパのお陰だ。大好きなパパ。これからも、ずっとずっと一緒にいたい。

 パパからも頬にキスを受けていると、部屋の扉がバンっと開いた。


「可愛いリディ~! 十三歳の誕生日おめでとう!」

「おばあ様! ありがとう!」


 パパの母であるおばあ様は、相変わらずおばあ様という言葉が違和感あるほど、まったくおばあさんには見えない。


 リディはパパ抱っこから床に降ろしてもらい、おばあ様に抱きついた。


「うーん! 可愛いリディ。顔をよく見せて頂戴」


 おばあ様から離れると、おばあ様はリディの目線に合わせるためか、膝を付いた。そして、リディの頬を触る。


「ますます可愛くなって! こんなに大きくなって、わたくし感動するわ……! これからも、元気に過ごして、わたくしに笑顔を見せて頂戴ね」

「うん!」

「いいお返事よ!」


 それから、リディがパパの部屋にいると聞いたのか、ブリスとルシアンもやってきた。


「リディ、十三歳のお誕生日、おめでとうございます」

「ありがとう、ブリス!」


 ブリスに抱きしめてもらう。


「リディ、十三歳、おめでとう!」

「ありがとう、お兄様!」


 ルシアンはリディを高い高いと抱き上げる。

 みんな、リディの誕生を心から祝ってくれているのが伝わって、とても嬉しい。


 その後、ラヴァルディ公爵家の敷地にあるパーティー会場へ向かった。招待した令嬢たちが次々にやってくる。


「ラヴァルディ公爵令嬢、お誕生日おめでとうございます!」

「皆さま、今日は私のために集まって下さり、ありがとうございます。ぜひ、楽しんでいらしてくださいね」


 今回招待した令嬢たちは、年齢がリディと近く、何度かリディとお茶会をした子たちで、みんな顔見知りである。とはいえ、みんな緊張の顔をしていた。ラヴァルディ公爵のパパと、こんな近場で会うなんて! と、少し興奮気味の子もいる。


 しかし、それも最初だけだった。令嬢たちがパーティーの雰囲気に慣れれば、あとはみんなで仲良くおしゃべりをする。


 パパたち、令嬢たちからは、誕生日プレゼントもたくさんもらった。

 十三歳の誕生日は、すごく楽しくて、みんなに祝われて、幸せな一日を過ごせるのだった。


 しかし。


 その日の夜、パーティーでの程よい疲れの後、リディはお風呂に入っている時に、背中を洗ってくれていたメイドが困惑の声を上げた。


「お嬢様……背中に青タンのようなものがありますが……まさか、誰かに暴力を振るわれたなんてことはありませんか?」

「ええ!? 暴力? ないない」


 リディは魔獣討伐もあるため、普段から剣の訓練や体術の訓練もしている。黒騎士団の騎士たちとも訓練をしている。もしかしたら、その時に気づかぬうちに何かが当たったのかもしれないが、ラヴァルディの後継者のリディに暴力を振るおうなんて人は誰一人いない。


 メイドが心配するので、体を洗った後、水気を拭きとり、リディは背中を鏡越しに見てみた。


「うーん……確かに、青タン?」


 左の背中の心臓あたりに、青黒っぽいものが拳大ほどの大きさでうっすらと広がっている。なんだか模様があるようにも見えるが、何だか分からない。


「その青タン、ちょっと押してみて?」

「良いのですか?」

「うん。痛いかどうか確認したいの」


 メイドが青タンを押してくれるが、特に痛いということもない。


「うーん、たぶん、気づかないうちに打ったりしたのかも。痛くないし、そんなに気にしなくてもいいと思うんだ。数日したら消えると思うし」


 そのようにして、放っておいた青タンが、数日後、色が濃くなっていたのである。

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