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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第二章 少女編

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52 ※ルシアン視点

 年月が少し進み、ルシアンの妹リディは成長して十二歳になっていた。


 ここはラヴァルディ領の屋敷から離れた街の近郊、山の下部である。魔獣の大量発生ということで、ルシアンとリディは他の黒騎士団の騎士を複数人連れてここにやってきた。ルシアンは魔獣のペットも二匹連れている。


「ごめんね、お兄様。座標が少しずれちゃった」

「誤差範囲だよ、問題ない。魔獣も見える距離だ。リディ、今日は剣縛りだけど大丈夫か?」

「うん。大丈夫。今日は魔獣の大量発生といっても、十匹ちょっとくらいだもの。……うぅ~ん、でも、あの牙! やだなぁ」


 相変わらず、リディは魔獣が苦手だ。特に、牙や角や爪が鋭くて怖い顔の魔獣が苦手なのだ。

 剣縛りとは、魔獣を討伐するために、剣をメインに使って討伐する、ということだ。今日はそういう訓練も兼ねているのである。


「守護天使様ー! 頑張ってくださーい!」


 遠く離れたところから、そんな声が複数聞こえた。ラヴァルディ領の住民で、リディの魔獣討伐の追っかけをしている奴らだ。いつも男女数名ずつ、なぜか頻繁にいる。リディはそんな奴らに、手を振って応えている。


 リディが初めて魔獣を討伐してから数年。ラヴァルディ領では、リディの討伐は有名になっていた。長い髪を一つに結び、短いスカート付きのズボン姿の騎士服を可愛らしく着こなしている。


「じゃあ、お兄様、行ってくるね」

「ああ。今日はここで見てる。他の騎士たちも待機している。もし危なそうだったら、俺たちが入るから、好きなようにやっていいよ」

「うん」


 リディの頭を撫でると、リディは嬉しそうに笑う。

 リディは剣に闇魔法を纏わせると、魔獣に向かって走り出した。ルシアンはペットに寄りかかりながら見物する。


「ひやぁっ! 気持ち悪い!」

「あ! 寄ってたかって、大きい癖に卑怯!」

「こっち見ないで! ストーカー!」


 リディはそのように独り言を叫びながら、次々と魔獣を討伐していく。


「相変わらず、可愛い顔して容赦ない」

「泣き言を叫びながら、バッサバッサ倒してくなぁ」

「小さいのに、切味半端ない。俺ら、出る幕ないな」


 ルシアンと同じくリディを見物している騎士たちが、そう感想を述べる。今日の魔獣の討伐は、リディで十分対応が終わりそうだ。


 最後の一匹を討伐し終えると、リディは辺りを見回した。


「終わりかな?」


 リディは、たたたとルシアンの元に走って来て、ルシアンに抱きついた。


「怖かったぁ!」

「お疲れさん」


 怖かったのは魔獣の方だろう。途中からリディから逃げたそうな素振りを見せていたから。

 顔だけ上を向いたリディの頭を撫でてやる。褒められた、とニコニコしているリディが可愛い。


「守護天使様ー! 今日もありがとうございましたー!」

「今日もとっても可愛いですね!」


 リディはルシアンに抱きついたまま、追っかけの奴らに手を振った。追っかけの奴らは、喜んでいる。


 リディは十二歳といいながらも、体は平均より小さめだった。体格は今は十一歳くらいに見える。元々可愛いリディは最近すっかり有名で、可愛いのに魔獣も討伐する人気者である。いつもニコニコとしており、愛嬌もあるから惹きつけられるのだろう。そして、ちまっとしていて泣き虫で、泣きながら魔獣を討伐する姿も、どうやら住民の心を奪うようだ。


「さ、帰るか。後始末は任せるな」

「はい」


 部下にそう言い、ルシアンはリディとペットを連れ、リディの闇魔法で一度地下世界に入った。これも、リディの闇魔法の訓練のうちなのだ。そして、地下世界を歩いて少し移動する。リディはルシアンの手を握っている。地下世界を一人で歩くのは、リディは苦手なのだ。


「今日の討伐は、問題なさそうだったな。十匹程度なら、剣だけでもリディは無理なく討伐できそうだ」

「うん。今日の魔獣はあまり強くもなかったもの。でもねー、顔がねー、怖いよねー」

「そうか? ちびっちゃったか?」

「ちびってないもん! 牙がいけないの! ヨダレも気持ち悪かった! 怖い顔を可愛くする魔法ってないかなー?」

「もしあったとして、そうするとリディは剣で討伐しにくくなるんじゃないか? 可愛くて倒せないーって」

「……そう言われると、そうかも!? やっぱり怖い顔でも我慢する」


 リディの闇魔法で地下世界から、黒騎士団の訓練場に戻ってきた。そして、リディとそのまま兄の執務室へ向かう。

 執務室に入ると、リディは真っ先に兄の元へ走っていく。


「パパ! 討伐終わった!」

「お疲れ。怪我していないか?」

「うん! 今日は剣縛りで頑張ったんだよ。全部討伐できた!」

「よくやった」


 兄に頭を撫でられ、ニコニコとするリディ。


「着替えて汚れを落としてこい。その後は糖分補給」

「はぁい」


 リディは執務室を出ていく。ルシアンは、兄に近寄った。


「問題は?」

「特にはないよ。座標が微妙にずれたけど、まあ、誤差範囲。魔獣討伐は完璧」

「そうか」


 リディは、ラヴァルディ公爵家の後継者として、兄の娘になってから、ずっと頑張って訓練している。その訓練の成果が、ちゃんと討伐に現れている。


「頑張っているようだから、何か褒美をやるか」

「リディの事だから、褒美なら兄上と出かけるのがいいと思うよ」

「そうするか」


 大きくなったとはいえ、未だリディは兄が大好きであるし、兄もリディが可愛くて仕方ないのだ。リディとの仲だけ見るなら、兄はかなり丸くなったと言える。他には容赦がないのは、今でもそうだが。


 ルシアンはまだ仕事があるため、黒騎士団の訓練場に戻っていくのだった。

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