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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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 黒騎士団の訓練場で、今日のリディは闇魔法の訓練をしていた。


「やっ! やっ!」


 狙ったところに影を出す訓練で、訓練場の地面のところどころに置いてある石を目掛けて、影を出す。すると、石は地面に現れた影に沈んで消える。


「できた!」

「よくやった」


 パパが頭を撫でてくれる。嬉しい。

 リディが出す影の先は、地下世界に繋がっている。だから、影から魔獣がでてきたらどうしようと、影を出すのはいまだに苦手だけれど、魔法が上手く使えるとちょっと楽しくもある。


 その時、一人の黒騎士が訓練場に入ってきた。今日は剣の訓練はなかったが、リディの闇の魔法の訓練も傍で見ていた、剣の師匠の副団長のアランに用事があったらしい。


「失礼します。副団長、街に魔獣が出たと報告がありました。対象は青ウサギ。一匹です」

「そうか。それなら、二人、討伐に向かわせてくれ」

「……待て」


 魔獣の大量発生ではない限り、討伐指示はいつも副団長のアランが出すのだという。なのに、そのアランにパパが待ったをかけた。


「青ウサギ一匹なら、リディの訓練にちょうどいい。リディが討伐しよう」

「ふぇ!? パパ! 無理!」

「青ウサギは、そこまで狂暴ではない。リディでも討伐できる。俺も一緒に行って、見ていてやるから」

「ヤダ! 私の闇の魔法、まだ初心者!」

「さっきの訓練の調子でやればできる。最初は誰だって初心者だ。難しそうだったら、俺がいるから問題ない」

「えぇぇぇ……」


 行きたくない。魔獣一匹でも、すごく怖い。


「リディは動物好きなんじゃなかったか? 猫やウサギやリスなんかは好きだと言っていただろ」

「う、うん……」

「魔獣といっても、青いだけのウサギだ。青ウサギも逃げたりするが、逃げ先を予想して、闇魔法で地下世界に引きずり込んでやればいい。簡単だろ?」


 そう言われると、簡単な気もしてくる。リディはしぶしぶ頷いた。


 そして、リディはパパに連れられ、青ウサギがいるという街にやってきた。


「ほら、あれが青ウサギだ。的がでかいから、やりやすいだろ?」

「……」


 確かに青いウサギだ。しかし、普通のウサギと大きさが違う。クマのように大きいし、なんだか目つきが悪いし、イラついているのか、片足をダンダンとしている。なんだかガラが悪いし、青色の体と赤い目の組み合わせに、なんだか目がチカチカして痛い気がする。


「パパ! あれ、普通のウサギじゃない! ……あれ? パパ、遠っ」


 後ろにいたはずのパパが、少し離れたところまで、いつのまにか移動していた。


「頑張れ」


 パパの応援が、小さい。


「あの小さい子、誰?」

「公爵閣下のお嬢様だってよ。初めての討伐だとさ」

「えぇ~! 小さいのに、さすが魔獣が討伐できるんだね!」


 街の人たちが集まっている。リディがなぜか注目を浴びている。ここでリディが失敗すれば、パパが悪く言われたりしないだろうか。


 えーい、女は度胸だ。涙目だけれど。


「……っや!」


 あ、失敗した。地面に影を出したのだが、位置が微妙に青ウサギからズレてしまった。青ウサギは、リディが出した影を警戒し、移動を始めた。


「足が早いぃぃ」


 ぴょんぴょんと青ウサギは跳んでいく。リディも影を次々と地面に出すが、青ウサギがそれを避けていく。


「ふえぇぇん! 青ウサギのいじわる!」


 すでに半分泣きながら、影を地面に出す。どれだけ影を出しても、青ウサギは避けるばかりだ。どうしよう。やはり、リディには、まだ無理なんだ。ふぐふぐと泣きながら、急にパパの言葉を思い出す。「逃げ先を予想して、闇魔法で地下世界に引きずり込んでやればいい」とパパは言っていた。


 青ウサギは、リディの影を警戒して逃げている。ということは、影を避けた後、青ウサギはどこに逃げる?


 リディなりに青ウサギの逃げ先を予想し、一度影を出して青ウサギが避けるであろう先に、また影を出した。すると、後から出した影の上に青ウサギが降り立つ。


「あ!」


 青ウサギは、影の中に沈んでいった。


「……できた?」


 わあっと歓声が上がる。街の住民たちが、笑顔でリディを讃えている。


「初討伐おめでとうございます! お嬢様!」

「すごかったですよ~」

「さすが、公爵閣下のお嬢様だな! 将来が楽しみだ!」


 リディは、顔を赤くした。なんだか褒められている。嬉しい。


 パパがリディに近づいてきた。


「よくやった。さすが、俺の娘だ」

「えへへ!」


 パパがリディを抱き上げると、より一層、住民たちの歓声が大きくなった。手を振る人もいて、リディははにかみながら手を振り返す。


 一人、男の子が走ってリディたちに近づいてきた。手には花を持っている。


「初めての討伐、すごかったです! これ、お祝いの花です。貰ってくれますか?」

「あ、ありがとう!」


 リディは地面に降ろしてもらい、男の子から花を受け取った。嬉しい。


「あの! 僕、お嬢様が好きです!」

「ありがとう!」


 そう言ったところ、リディはパパに再び抱えられた。


「そういうのは、まだ早い」

「そういうの?」


 パパは歩きだした。副団長アランに口を開く。


「後処理は任せた」

「承知しました」


 そう言うと、リディとパパは、影を使って街から消えるのだった。


 黒騎士団の訓練場に戻ったリディたちは、今日のリディの闇魔法の訓練も終了ということで、屋敷に戻った。ブリスに会って、お花を見せる。


「ブリス、見て! お花貰ったの!」

「それは、良かったですね」


 パパが部屋の奥に行くのをブリスが横目で見ながら、リディに近寄った。


「ところで、兄上はなんだか機嫌が悪そうですが、何かありました?」

「え? うーん、もしかしたら、私だけお花を貰ったから、拗ねてるのかな?」

「……はい?」

「そうだ、このお花、花瓶に入れてもーらお!」


 リディはメイドにお花を渡しに行くのだった。

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