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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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43 ※レナート視点

 少し落ち着いてきたのか、リディがレナートの胸から顔を上げた。


「あのね、パパ。私ね、ちょっとくらいなら我慢できるよ」

「……何が?」

「パパを殺しちゃったから……指一本くらいなら、頑張る」

「……指一本だと?」

「うぇ!? ま、間違えた! ……指二本?」


 増えた。なんとなく、リディの思考回路が読める。


「その指はどうする気なんだ……俺はいらないぞ」

「い、いらない? 三本に増やす?」

「いらないって言っているのに、どうして増やす?」

「だ、だって……腕や足は痛いもん」

「指だって痛いだろうが。俺を殺した罰のつもりか? 自分の体だとしても、勝手に俺の娘の体に傷を付けたら怒るからな?」

「パパ、もう怒ってるぅ……! じゃあ、じゃあ、どうすればいい? 何をしたら、罰になる?」

「まずは罰という思考から離れろ」


 リディの偏った思考は、リディの回帰の中で、誰かの仕打ちから経験してきたのだろう。腹は立つが、これからレナートがその仕打ちを上書きしていくしかない。


 レナートはリディの両頬を両手で包んだ。


「リディが俺に何をしても、俺は許す。何かの罰も与えない」

「で、でも……」

「リディに何かされたからと、不思議と怒る気にもならない。リディをそうさせた奴には怒りは沸くがな。リディは俺に悪いと思うのかもしれないが、俺は気にしていない。それでも、リディがどうしても気になるなら、俺のためにずっと傍で笑っていろ。不幸になるな。そうしてくれたら、俺も満足だ」


 再び泣き出したリディ。


「どうして、パパは、そんなに私に優しいの?」

「さあ? 俺にも分からないが、リディが楽しそうに笑ってくれるなら、それでいいと思ってしまう。リディは、このままいつも通り、俺の傍で笑っていればいい」

「……うんっ」


 レナートがリディの額にキスをすると、リディは泣き笑いのような顔をした。それを光の妖精がほっとした顔で見ている。


「ヴァルバス」


 ――ポンッ


 ヴァルバスが空中に現れた。


『何だ』

「話は聞いていただろ」

『まあな』

「リディ、光の妖精も、これから回帰について話を聞かせてくれ。俺の場合との違いを知りたい」

「うん」

『分かったわ』

「……その前に、リディは何か飲んでおくか。水分を放出しすぎだ」


 泣いたリディのために、夜中だが使用人を呼び、リディにはハチミツミルク、レナートはコーヒーを持ってきてもらう。


「では、まずはリディがこれまで回帰した話を聞かせてくれ」


 リディが過去の回帰を話す間、レナートは大人しく聞いていた。殺されてばかりのリディに、毎度怒りが沸く。しかし、今はその怒りは横に置いておく。リディを殺されたレナートの怒りは、いずれ、殺した相手にきっちり報復はさせてもらう。


「……確かに、リディは毎回死んでから回帰しているな。俺とは違う。俺の場合は、死んでからの回帰は最初だけで、それ以外は突然の回帰だ。そして、俺の回帰は、不可解ではあるが、リディの死に合わせて回帰しているようだな」

「私の死に合わせて回帰?」

「今回の回帰、リディが回帰した時と俺が回帰した日時が同じだ。その前の回帰も同じ。……何故かリディの死が回帰の起点となっている」


 何故リディなんだ。考え込みながら、レナートは光の妖精を見た。


「光の妖精は、リディと契約しているから、回帰も一緒にしているだろ。回帰について、何か知っているか?」

『知らないわ。回帰に私が介入できるわけないもの。私はリディをいつも見ていることしかできなくて……』


 光の妖精は悔し気に顔を歪めた。リディの契約する光の妖精は、下級精霊だ。光ったり、リディの髪色を変えたり、そういったことはできても、高度な魔法は使えない。いつもリディが傷つけられたり、殺されたりする様を、何もできずにいることが悔しいのだろう。


「そうか。そう気を落とすな。ヴァルバスとて、何もできやしない」

『何を! 俺サマは、いつもレナートの役に立っているだろ!』

「回帰の話をしているんだ。ヴァルバスも回帰している俺と繋がりがあるから、回帰していることに気づけているんだろ」


 ヴァルバスはフンッと顔を横に向ける。


「回帰に限って、ヴァルバスも光の妖精も介入外の出来事というなら、やはり、世界樹が関係しているのだと俺は思っている」

「世界樹……パパ、前に皇宮に世界樹を見に行ったって言っていたよね。私も今度一緒に行きたい」

「ああ。リディも将来的には、連れて行くつもりだ」

「本当!? やったぁ!」


 世界樹を一度は見てみたい、と思っている人は多い。リディもその一人で、先日レナートが世界樹を見に行ったと言ったときも、散々羨ましがられたのだ。


『やったわね、リディ! ずっと行きたかったところだものね!』

「うん! 世界樹って、どのくらい大きいのかなぁ? 夢で見るような木と似てるかな!」

『リディが言っていた少し光っている木ってこと? そうね、世界樹なら、光っていてもおかしくないかも!』

「……ちょっと待て。リディ、その夢で見る木とは何だ?」

「……? 夢に出てくる木だよ。時々見るの」

「それはどんな木だ? 木の色とか」

「色? 枝は白色なんだけど、色が薄いというか、ちょっと透けているかも。葉っぱは黄緑色かな。なんかね、木自体が少し光ってる」

「……」


 それは世界樹だ。嫌な仮定がレナートの頭に浮かぶ。

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