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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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「そろそろ、魔物や魔獣に慣れる訓練をしないとな」


 数日滞在していたおばあ様が、ラヴァルディ公爵家の屋敷を去った次の日、パパがそんなことを言った。


「な、慣れる?」

「リディはラヴァルディの後継者だ。将来的には、魔獣の討伐をしなければならないからな」

「……慣れるって、何をするの?」

「そうだな……。小さめで温和な魔獣の巣が地下世界にあるから、リディはそこで……ピクニックでもしてくるか?」

「いや―――!!!!」


 何それ、全然楽しそうではない。


「ピクニックのお弁当って私!? 私が魔獣に食べられちゃう!」

「心配するな。ヤツらは草食系だ」

「草食系の魔獣って何!? 牙とかないってこと?」

「牙……は、あるな」

「やだぁぁあ」


 牙がある草食系って、なんだ。恐怖が和らがないんですけど。


「大丈夫だ。最初は俺も行くから」

「最初はって嫌……毎回、一緒に来て」

「考えておく。じゃあ、今から一度、行ってみるか」


 リディは全力で顔を振った。


「きょ、今日は止めよ! 今日はお天気も調子が悪いし」

「雲一つない青空だが?」

「わ、私のお腹の調子が悪い!」

「毎日食べすぎるからだろ。今日の昼食は少なめにするか?」

「うぐっ……。お、お腹良くなった……」

「じゃあ、地下世界に行くか」

「いやぁあ……」


 リディは涙目でパパに訴えた。


「パパ、お願い。今日はやめよ? 明日から頑張るから」

「……明日から、本当に行けるのか?」

「……ぅん」

「声が小さいな。……まあ、いい。では、明日から頑張るんだぞ」

「はぁい」


 そんなやり取りをした、次の日。


「お願い、パパ。明日から頑張るから、今日は止めよ」

「昨日もそう言っていなかったか?」


 だって、魔獣に慣れるって何。やっぱり怖い。


「だって……! 怖いもん!」

「俺がいるのに、何が怖いことがある」

「お願い、パパぁ!」


 必殺、駄目押しキスをパパの頬にする。


「……仕方ない。本当に明日から頑張るんだぞ」

「兄上、また、そこで折れるんですか?」


 実はずっと、同じ部屋にいたブリス。苦笑しながら、そう呟いた。


「そうだよ、兄上。これじゃあ、リディが魔獣に慣れるのは遠くなるよ」


 そして、同じく部屋にいたルシアンまで、呆れた声を出す。

 止めて。せっかくパパが折れてくれているのに。さらにルシアンが口を開く。


「リディ、地下世界の前に、屋敷の裏で魔獣に慣れたらどう?」

「……屋敷の裏?」

「俺が付き合ってやるから」

「え……?」


 パパの膝の上にいたリディは、いきなりルシアンに抱き上げられた。


「俺のペット。リディは何度も見ているから、もう近くにいても大丈夫だよな」

「だ、大丈夫じゃない―――!!」

「大丈夫、大丈夫。犬みたいなものだって」

「全然違う! 顔が怖い! おっきい!」

「大丈夫、大丈夫」

「やだっ! パパー! パパー!」


 パパはなぜか、リディから視線を逸らした。どうしてー!

 リディはルシアンにより、攫われてしまうのだった。


 屋敷の裏庭。

 ルシアンのペットの、犬にも見える黒の魔獣二匹の前に、リディはいた。ペットの体は馬の二倍くらいありそうだし、目は赤い。脱兎のごとく逃げようとしたら、速攻ルシアンに捕まってしまった。


「ふえぇぇん……!」


 怖い。怖すぎる。鋭い牙と爪が鋭利過ぎる。顔も怖いし大きいし、二匹がリディをガン見している。

 ぐずぐずとルシアンに抱きついて泣いていると、ルシアンがリディを抱き上げた。


「泣かなくていいのに。怖くないって。牙なんて、見掛け倒しだよ」

「顔が怖いぃぃ」

「顔は犬じゃん。わんって鳴くんだよ? ほら、お前ら、鳴いてみ」


 最後のは、ルシアンはペット二匹に言ったらしい。リディは、ルシアンの首あたりに付けて泣いていた顔を、少しだけ横を向いて、ペットを見た。


『……』

『…………ゥオン』

「ほら! リディ、聞いた? 犬だったでしょ」


 犬と言えば、犬かもしれない。犬より凄みはあったけれど。


「お手もするんだよ。ほら、お手」


 ルシアンがリディを抱えていない方の手をペットに出すと、ペットの一匹は、一瞬躊躇したように間を空けた後、ルシアンの手にお手をした。


「ほらほら! 犬じゃんね!」

「……」


 魔獣も芸ができるんですね。


「リディもお手してみ?」

「た、食べられる!」

「食べないって! 分かった、じゃあ、背中から触ってみるか。顔が見えなければ触れるでしょ」

「………………うん」

「よっしゃ!」


 ルシアンはリディを抱えたまま、ペットの背中に近づいた。


「ほらほら、背中、触ってみ。ふさふさだから」


 ルシアンがペットの背中を触る横で、リディはおずおずと背中に手を伸ばす。さわさわと、ペットの背中を撫でる。毛はふさふさとしていて、触り心地は良い。


「ほら、犬と変わらないでしょ」

「……うん」


 確かに、体の大きさをあえて見ないようにするなら、犬と言えなくもない。


「毎日まずはペットで慣れよう。俺もいるし、一緒に慣れていこう」

「……うん。毎回一緒にいてね。私を一人にしないでね」

「しないしない」

「……抱っこもしてくれる?」

「いいよ! 抱っこもしてやる!」


 一人じゃないなら、どうにか頑張れるかもしれない。

 リディだって、後継者にと期待されるなら、頑張りたいと思う。いつかパパたちの役にだって立ちたい。

 まだ始まったばかりの魔獣に慣れる訓練だけど、少しずつ、頑張ろうと思うのだった。

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