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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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 今回の帝都に滞在する日程は終了し、リディたちは帝都を発った。そして、前回のように地下世界を通り、数十分後にはラヴァルディ領の屋敷に到着した。


 ブリスが馬車を降り、パパに抱っこされてリディも馬車から降りると、パパを呼ぶ女性の声が聞こえた。


「レナート、待っていたわ」


 屋敷の玄関前、手を組み、すらっと立つ美女。そして、美女の横には、ルシアンがげっそりとした顔で立っていた。ルシアンがあんな顔をしているのは珍しい。

 パパは一瞬目を細めた。


「……なぜここに」

「あら、ずいぶんじゃない? あのような噂を立てておいて、説明のためにいつわたくしを呼ぶのかと思っていたのに。待てど暮らせど、いっこうに手紙一つ寄越さないのね?」

「……」


 パパが何も言い返さないなんて。この美女、誰なんだろう。そう思っていると、美女がリディを見てふわっと笑った。


「初めまして、小さな可愛いお姫様。わたくしは、あなたのおばあ様よ」

「……おばあ様?」


 あれ? おばあさんって、お年寄りのことではないのだっけ? どう見てもパパより少し年上くらいにしか見えない。


「そうよ。あなたのお父様の母よ」

「パパのママ……」

「あら、レナート、パパって呼ばせているの? 可愛いじゃない。わたくし、ブリジット・カルネと言うの。あなたは?」

「リディ・ラヴァルディ」

「リディ! 可愛い名前ね」


 どう見ても、パパのママとは思えない。まあ、おばあ様は、黒い髪に黒い瞳で、そこはパパと一緒だけれど。


 立ち話もなんだ、ということで、場所を応接室に移した。

 応接室のソファーには、パパの隣にリディ、リディの斜め横にブリスとルシアン、そしておばあ様がリディの前の席に着いた。


「リディ、良かったら、わたくしの隣にいらっしゃい」


 え。リディはそっとパパを伺う。パパの目は、少し投げやり気味でリディを見て頷いた。それは、行けってことですね。

 リディはそっと立って、おばあ様の傍に立つと、おばあ様に抱き寄せられた。


「やだぁ! 可愛いわぁぁ! やっぱり女の子は良いわね! もう、わたくしの子ったら、みんな男の子なんですもの! だんだんと可愛げがなくなっちゃって!」


 おばあ様は良い香りがする。顔を伺うと、おばあ様は優しく微笑んだ。


「これから仲良くしましょう、リディ。何か困ったことがあったら、わたくしが何とかしてあげますから、わたくしのところに飛んでいらっしゃい」

「……はい」

「ふふふ。そんなに畏まらないで。リディのような可愛い孫ができて、とっても嬉しいのだから」


 リディが頷くと、おばあ様は再びリディを抱き寄せた。


「本当に可愛いわ……。持って帰ろうかしら」

「止めてください」

「あら、冗談よ。レナート、そんな親のような顔もできるのねぇ」

「……」


 なんだか良い? 雰囲気なのは、ここまでだった。

 パパが口を開いた。ここでだけの内緒話。リディは本当はレナートの兄セザールの娘であり、セザールは亡くなったということを、パパはおばあ様に告げた。


 おばあ様は、ショックの顔で震え、涙を浮かべていた。


「ご、ごめんなさい、おばあ様」

「……っ、どうしてリディが謝るの? リディは何も悪くないわ」


 おばあ様は、自身の涙を拭う。


「ここが嫌で出て行ったセザールには、わたくしが接触するのは嫌がるかと、そっとしすぎてしまったわ。いずれ、あの子が落ち着けばまた会える日は来ると、そう思っていたわたくしがいけないの」


 おばあ様の父への愛は、とても深かったのだとリディは感じた。


 パパは、リディを実の娘として、ラヴァルディの後継者として育てることをおばあ様に告げた。


「分かったわ。わたくしも協力するわ。わたくしにできることは、何でも言って頂戴」


 おばあ様は、それから数日ラヴァルディの屋敷に滞在することになった。

 おばあ様は、とても優しくて強い人だった。パパを筆頭に、おばあ様に勝てる息子は、誰一人としていない。


 おばあ様が滞在中は、リディはずっとおばあ様と話をした。色々と面白い話を聞いた。


 おばあ様と亡くなったおじい様、つまり先代のラヴァルディ公爵は、従兄妹で幼馴染だったらしい。小さい頃から一緒にいすぎて、普段から喧嘩が日常だったらしいが、婚約者でもあったらしく、二人は成長すると予定通り結婚した。


 そして父のセザールとパパのレナートが生まれたらしいけど、結局おじい様とは喧嘩が絶えず、離縁した。そして、数年後、おばあ様はカルネ伯爵と再婚した。


 カルネ伯爵は温和な人で、おばあ様とも性格が合うらしい。とても仲の良い夫婦だという。そして、ブリスとルシアンが生まれた。


 父セザールが生まれて以降、女の子も欲しかったおばあ様は、毎度「女の子!」と叫びながら出産したのに、全員なぜか男の子で、「あんなに女の子を神に願ったのに! 元気な子が生まれたのは、嬉しいのだけれどー!」っと今も悔しがっている。


「ルシアンが生まれた時なんてね、股を五度見くらいしちゃったわよ。わたくしが見えているものが、幻想なんじゃないかって何度も確認したの。でも、何度確認しても、付いてたわ」


 おばあ様は、そう言いながら、溜め息たっぷりである。


「まあ、でも、可愛い孫娘ができたのですもの! 神に感謝しなければね! リディはとっても可愛いもの! 今度一緒にお買い物に行きましょう。わたくしが、何でも買ってあげるわ」

「うん!」

「うーんっ、可愛いわ!」


 誰がどう見ても、おばあ様はリディに夢中なのだった。

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