誓いと祈り
紫電が自宅に戻ると、いつもそうだったように、彼女が出迎えた。
雪を融かすような暖かな微笑みを浮かべて、彼女は彼を待っている。
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま、だ」
このやり取りに慣れるまで、紫電はしばらくかかったが、そんなことは口には出さない。
制服姿の彼女はエプロンをしていた。おそらくは料理を作っていたのだろう。
「晩御飯、できてるよ! 食べる?」
「いただこう」
短く返事をして、紫電は料理が並べられているテーブルに向かった。彼の隣に、イザナミが座る。
わずかに濡れている艶やかな髪からは、柑橘類の香りがした。
彼はもくもくと食事を口に運んだ。それは考え事をしていたからではなく、単純に美味いと感じたからだった。どうして、誰かに作ってもらった食事はこんなに美味しいのだろう。一人で栄養補給だけを考えて食事をしていた頃からは想像もできない。あの頃、食事というものは単なるローテーションだった。
「ご馳走様でした」
手を合わせて、紫電がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで
「お粗末様でした」
と返す。
ここは暖かい。外は冷たい。
人の形をした魑魅魍魎が跋扈する国で、この場所だけが彼の心を落ち着ける場所になった。
不思議だった。
この空間にいると時間がゆっくりと過ぎていく。
それもイザナミという不思議な少女が来てからだ。
そのイザナミは手際よく、食器の片づけをしている。
「ね、今日はどうだったの?」
エプロン姿で訊いてくる彼女の声は、やはり優しかった。
「ああ……任務自体は問題なかったが……やはり後味が悪いな」
「そっか……」
「今まで感じなかったが、貴様が死ぬことになれば……と想像してしまった」
幼い子供を人間爆弾として使う狂気に触れてから。
「私は死なないよ」
手を止めて、彼女は紫電に向き直る。
「私は死なない。私を助けてくれた人のために生きる。それが私の生きる意味なんだと思うから」
真面目な顔で、だからこそ彼女は一人の少女ではなく、女性の顔に見える。
「そうか」
うつむいた彼を彼女がそっと抱きしめた。
体温と鼓動が伝わってくる。
「あなたも死なせない。私にある、すべてをかけて」
こんばんは、星見です。
お盆休みが終わりましたーーーーーー。
仕事行きたくねえええええとダメ人間になっているところです。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




