幕間:ダキシン=オフミⅣ ~心を亡くした者~
Interlude in
魁聖高校の男子トイレで、女子生徒の悲鳴が聞こえた。その悲鳴に交じって、ダキシン
オフミの興奮した声がする。
「ぬふふ……中々だぞ、気持ちがいいぞ」
高校で一二を争う美貌を持つ女子生徒は腰を振りながら、誰か助けてと悲鳴を上げるが、誰も来ることはなかった。
そして、数十分の間、悲鳴は終わることがなかった。行為が終わった後
「ふ~、なかなかだったぞ、お前。妊娠したら、ボクの妾にしてやる。ボクは次の宇宙総裁とも呼ばれている男だ! ついているぞ!」
と満足げにトイレが出ていく。
女子生徒はそれから、のろのろと保健室まで這いずるように歩き、養護教諭に事実を伝えた。その出来事はすぐに職員室に情報として伝わったが
「金で解決できないか」
と校長が提案した。
何しろ、彼の父はダキシン=ポコツン。元内閣総理大臣にして、現厚生労働大臣だ。その気になれば、学園全体を葬り去ることなど容易い。そして、それをやりかねない。
半数の教師がその提案に反対した。ダキシン=オフミのしたことは犯罪行為そのものであり、これを放置しては教育機関としての名誉に関わるという理由だった。
翌日、被害にあった女子生徒の両親が学校に乗り込んできた。当然、ダキシンを退学にし、法的処罰を受けさせるよう学校側に申し入れる。しかし、校長は首を縦には振らなかった。校長は最悪なことにダキシン=ポコツンに連絡を入れ、オフミとともに被害者の保護者と話し合いの場を設けることにした。
「なんだ、この茶番は?」
ダキシン=ポコツンは呼び出されるなり、唾を校長室の床に吐き出した。そして、ソファにどっかと座る。その対面には怒りの表情を湛えた被害者の両親が座っていた。
「貴様たち、私が誰か知っていて呼び出したのか? オフミが何をしたというのだ?」
「……口にするのもおぞましい行為です。元総理ともあろうお方がこれを見逃していて、秩序が保たれるとお思いですか?」
被害者の父親は怒りを抑えて、ポコツンに返答する。
「なんだ、オフミがお前の娘に何かしたのか? 下民どもに何をしようと、我ら特級国民は許される。まさか、法の下の平等などという戯言を言いに来たのか?」
ポコツンは悪びれずに相手を見下した。そこに、息子のオフミが校長室の扉を蹴って入ってくる。
「なんだ、校長! ボクは今、ゲーセンで遊んでいたんだ。どうしてもというから来てやったんだぞ! お前、死刑にするぞ!」
校長はオフミにペコペコして、ポコツンの隣に座るよう促した。
「君が……私の娘を汚した、ダキシン=オフミか」
ありったけの憎悪を込めて、被害者の父親はソファに座ったオフミを睨みつける。オフミは彼がなぜそんな目をしているのか分からなかった。
「何を言っている? ボクが何かしたのか?」
被害者の両親は黙った。このダキシン=オフミという人間は普通じゃない、と認識した。
「あれはお前たちの娘が、中々の巨乳でスタイルもいいし、見た目もいいから起こった出来事だ。ボクに責任はない。ボクが揉みしだきたくなるくらいの胸をしていて、スカートから見える太ももが実にボク好み、可愛い女の子だったからトイレに連れ込んで、交わっただけのことだ! つまり、お前たちの娘がボクを誘惑したからいけないんだ! ボクに責任はないッ!」
被害者の両親は絶句した。
狂っている。
何かがおかしい。
この少年は人間の形をした別のモノだ、と実感させられた。
「……君のしたことは立派な犯罪行為だ。法と社会の裁きを受けてもらう。私たちは自分の娘のために、君を許すわけにはいかない」
被害者の父親がつとめて冷静にオフミに言う。
「犯罪行為? お前たちの娘はボクの子どもを授かることができるかもしれないんだよ? 何を言っているんだ? それは素晴らしいことじゃないか? 世界最高峰のボクの遺伝子を受け継ぐことができるんだから」
「黙れ! もうお前は更生不可能だ! 警察を呼ぶ! よろしいですな、校長先生?」
被害者の父親は憤怒の表情で立ち上がり、スマートフォンを操作した。
「もしもし、警察ですか。ここに強姦の現行犯がいます。すぐに……」
ダキシン=ポコツンは面倒くさそうに校長に命令した。
「もういい、校長よ。この愚物を始末しておけ。始末しない場合は、我々がお前を始末する。良いな?」
どこからか現れた黒服の男たちが拳銃を構えた。銃口は被害者の両親を捉えている。
Interlude out
おはようございます、星見です。
胸糞展開が続きます。次からはもう少し明るい話にしたいなあ……と思います。
イザナミちゃんが出てくれば明るくなるんですけどね。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




