氷の国の呪われ姫-凍てつく心を溶かす者は-
最終回です!
“約束の場所で待っている”
「はぁっ、はぁ……、こんなに遅くなるとは思ってなかったわ……!」
数日後、ゆっくりと話をする為、エルマー殿下のあの思い出の約束の場所で約束をしたのだが、急に他国からの使いの方が来てその相手をしていたら、約束の時間をとうにすぎてしまっていた。
(殿下、もう帰ってしまったかしら……!)
と申し訳なさでいっぱいになりつつ、約束の場所に向かえば、そこに殿下の姿はなくて。
「……やっぱり、帰ってしまったかな」
私はとりあえず息を整える為にそびえ立つあの一本の木の下に座る。
(……ここに、エルマー殿下もさっきまでいたんだわ)
せめてエルマー殿下と同じ場所で過ごしたという余韻に浸っておこう。
そう思い目を瞑れば、トントンと肩を叩かれた。
「!?」
驚いて振り返れば、そこには大好きな、エルマー殿下の姿があって。
「っ! エルマー殿下!? 帰ったのではなかったの!?」
「えっ」
エルマー殿下は目を見開いた後、怒ったように言った。
「心外だな、俺がそんな不誠実な人間だと思っているの?」
「! ご、ごめんなさい、そうではなくて。
こんなに、約束に遅れてしまったから、もう、いないと思って……」
怒らせてしまった、心の中で泣きそうになりながらそう訴えれば、殿下はふっと笑うと「大丈夫、怒ってないよ」と笑って言った。
「いくらでも待つよ。 だって、俺はこんなに君を待たせてしまったんだから。
むしろ謝らなければいけないのは俺の方だよ。 ……それに、こうして君は来てくれた」
「!」
殿下はそう言って微笑むと、両手を広げて言った。
「……この前抱きしめられなかった分、君を抱きしめても良い?」
「っ、」
私はその言葉にたまらず、何も言わずにギュッと殿下を力強く抱き締めた。
「っ、はは、ローラはたまに、急に大胆になることがあるよね」
「!! ……か、からかわないで」
消え入りそうになりながらそうぎゅーっと抱きしめて呟けば、殿下はふふっと笑ってポンポンと頭を撫でてくれる。
「からかってなんかいないよ。 ただただローラが可愛すぎてどうにかなってしまいそう、ということかな」
「!! や、やっぱりからかってるじゃない!!」
私の反応を可愛い可愛いと言う殿下に、私は怒ってそう言えば、「だって可愛いから仕方がない」と甘えるような声で言う。
再度恥ずかしくて絶対に顔が赤い私に、殿下は「ねえ」と今度は何を言うかと思えば、真っ直ぐと私を見つめて言った。
「キス、しても良い?」
「!?!?!?」
突然のど直球すぎる発言に何も言えなくなる私に、殿下は拗ねたように言う。
「そんなに照れなくても。 以前、君に急にキスしたら“私の許可を取ってからキスをして”と言っていただろう?」
「っ!! そ、そんな昔のこと、まだ覚えていたの!?」
「? 忘れるわけがないだろう。
……私の、大好きな姫……いや、ローラの言葉なら何でも、覚えている自信があるよ」
「! エルマー殿っ……んっ」
そして私の許可は待てない、と言わんばかりに、殿下は私の唇を奪って……、長くて甘いキスの後、彼はふっと、妖艶に悪戯っぽく笑ってみせたのだった。
☆
「改めて、君を迎えに来るのが遅くなってしまってすまない」
「……寂しかった、けれど、怒ってないわ。
だって、それに、“こうして殿下は来てくれた”んだもの」
さっきの殿下の言葉を真似してそう言って笑って見せれば、殿下は少し驚いたような表情を浮かべた後、少し泣きそうになりながら言った。
「……君を、忘れる日なんてなかった。
だけど、君の国が四季豊かな国になった今、近隣諸国の興味や関心が一気にマクルーア王国に向いたことを知って、色々と裏から手を回しておいたんだ」
「? 手を、回す……?」
殿下は「いずれ分かるよ」と笑い、天を仰いだ。
「君の国の前国王様とも何度も話の場を設けて、これからの未来をどうするかを取り決めていたんだ。
君にもいずれ、その話をしなければならない。
……でもその前に、君に伝えたいことがあるんだ」
聞いてくれる?
そう少し緊張したような面持ちで問われ、私は微笑みながら「勿論」と頷くと、殿下は少し安心したように笑い、口を開いた。
「もっと、早く伝えられたら良かったのだけど。
遅くなってしまったね。 君をあの日から、ずっと待たせてしまって、言うのが遅くなってしまった。
……好きなんだ、ローラ。 ずっと、君を、君だけを幼い頃から思っていた。
好きだ、ローラ。 私と、結婚してくれないか」
「……!」
もう、何度目になるだろうか。
こうして、エルマー殿下はいつも、私を真っ直ぐと、あの青の瞳で見つめ、想いを伝えてくれた。
……私は、それに今からでも、答えられるのだろうか。
「……殿下……、いや、エルマー」
「!」
エルマーは驚いた表情をする。
そんなエルマーの顔に手を伸ばし、私も真っ直ぐと見つめ返して伝えた。
「私も。 エルマーのことが大好きよ」
「! ……それじゃあ」
私は顔を輝かせたエルマーに向かって大きく頷き、言葉を紡ぐ。
「はい、喜んで」
その言葉にエルマーは再度、私をギュッと抱きしめた。
そして気が付けば、そのエルマーの大きな肩が、小刻みに震えていて。
(! 泣いているの?)
そんなエルマーにつられて、私の目からも大粒の涙が溢れ落ちる。
しばらくそうして泣いていると、やがてそっと体が離れる。
お互いの目が涙で赤くなってしまっていることに気付き、おもわず笑ってしまっていると、エルマーは立ち上がり、私に手を差し伸べた。
そしてあの時と変わらぬ笑顔で、記憶が戻った今では、幼い頃とも変わらない笑顔を浮かべて言った。
「行こうか、ローラ」
「! えぇ!」
私はその大きな手に自分の手を重ね、笑みを返す……―――
後日、マクルーア王国初の女王の結婚式が行われた。
女王陛下の隣に立つのは隣国の第二王子、エルマー・ブラッドリー。
二人は三人の子供を授かり、マクルーアの守護獣の祝福を受け、生涯を仲睦まじく暮らしたという……―――
氷の国の呪われ姫―凍てつく心を溶かすものは…―END
ついにこのお話をもちまして、『氷の国の呪われ姫』、無事に完結致しました…!
思ったより長く更新に時間がかかってしまい、申し訳ございませんでした><
呪いをテーマに書かせて頂き、ハッピーエンドにさせて頂きましたが、いかがだったでしょうか?たのしんでお読み頂けていたらとても嬉しいです^^
最後に、評価やブクマ登録をして下さった皆様、お読み下さった皆様、本当に有難うございました!
また何処かで作者の作品をお読み頂けたら嬉しいです。




