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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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コイバナ

 頬を染めてウットリとした表情で話す女神は、どこからどうみても恋する乙女だった。


 「そうですか。とても綺麗な歌声だったのできっとお相手の方にも届いてますよ」


 先程、聞こえないように歌っていたという女神の言葉をスッカリ忘れて適当に話をあわせる。


 「そうかしら」


 うふふっと今にもハートが飛び出してきそうな女神を前に僕は冷や汗が背筋を流れていくのを感じた。

 これ、どういう状況!?

 もしかして、僕は今、女神とコイバナをしている!?

 白の領地の時のような戦闘状態を危惧していたのに、まったく違う展開に思考がついていかない。


 「そうだと嬉しいわ」


 浮き浮きと今にも踊り出しそうな口調で話す女神を見ていると、これは似ているけれど別の神様なのではないかという疑念さえ湧いてくる。

 いや、あきらかに僕のことを知っている風だから、あの日の女神で間違いないはず、はずなんだけどなあ。

 心の中で色々と葛藤していると、ふいに女神が真顔になって、


 「あら、ボウヤの保護者が捜し始めたわ。そろそろお部屋へ戻るといいわ。わたしくとお友達になったことは秘密ですよ。複数の神と知己を得ることは人として不自然に思われますからね」


 と、言い残して消えるようにいなくなった。


 なんだったんだ、一体。


 自分の身に起きたことが現実として実感がまったく湧いてこない。

 まさか、安全だと思っている城の敷地内でホラー映画みたいな怖い思いをするなんて予想外過ぎる。

 その上、まさかのコイバナ。

 そして、お友達認定。

 これが狐につままれたような気持ちってヤツだろうか。

 ポテポテと自分の部屋に向かって歩いていると、前方からリアが物凄い勢いで走り寄ってきて胸元に飛びついた。吃驚したけれど何とか受け止めるとその後からサニヤと良さんがやってきた。


 「ご主人様、ご主人様っ!」


 腕の中でフンフンと匂いを嗅ぎながらとても慌てた様子のリア。

 サニヤも珍しく落ち着かない様子だ。


 「何だか2人が急に部屋に飛び込んできたんだけど、何かあったのかい?」

 「え?どうして?」

 「だってだって!急に城内から気配が消えたもの!感知できる範囲にはいないし!どこ行ってたの?怪我してない?」


 興奮しているリアを宥めるように撫でながら、


 「僕はずっと庭にいたんだけど」


 と、自分が知っている限りでは嘘ではないので答える。

 リアやサニヤが城内から気配が消えたというのならば、先程の女神とであった庭はある意味隔離された特別な空間だったのかもしれない。

 女神本人も聞こえないように歌っていたと行っていたしね。


 「ええっ。無意識で変な場所に入り込んでたりしたんじゃないの?」

 「まあ、ありえるかもねえ」


 リアと良さんの言葉に、そうみたいですね、とは言えないので、


 「怖いこと言わないで下さいよ。オチオチ散歩も出来なくなるじゃない」


 と苦笑いを返す。


 「むぅ。ご主人様ならありえそうよ。もーっ、これだから眼を離せないわっ」

 「そんなに心配させちゃった?ゴメンね」


 未だに興奮が冷めないリアに誤りながら撫でていると正面からサニヤにガバッと抱きしめられた。


 「心配、した」


 ポツリと零したその言葉に、面映いような気持ちと本当のことを言えない罪悪感に苛まれつつリアを抱いていない方の手でサニヤをそっと抱き返した。

 簡単に黒の領土すべてから人1人を捜しだすことが出来る能力ちからを持っている原始種族のサニヤとリアでさえ、見失うような空間に自分がいたのか、と思うと女神の気持ち1つで自分がどうなっていたのかわからないことに気付いてゾッとする。

 きっと、大声で叫んでも無駄だったのだろうな。

 サニヤとリアを宥めながら自分の部屋に戻ると、人形は何事もなかったかのようにベッドの上に転がっていた。


 「城内に居る者が感知出来ないなんて前例のないことだからね、こちらでも調べてみるけれど、何か思いつくことがあったら教えてね」


 良さんは、そう言って僕の頭を優しくポンポンしてから出て行った。

 多分、僕が何か黙っていることは察していると思う。

 僕としても良さんにならば、教えることは吝かではないのだけれど、さすがに神様は神様でも、あの女神相手だ。

 怒らせて良さんに何か起こったら申し訳ない。

 誰か、あの女神相手でも対応出来る人っていたかな。と少し考えてシノハラさんのことを思い出した。

 白の領地でも、シノハラさんにあの女神を追っ払ってもらったのだ。

 どうにかして、シノハラさんに連絡を取って相談したい。

 明日は、巫女姫様たちと神事の練習と、昴の見送りだし、他の日の迷宮ダンジョン攻略のお供にお願いできないだろうか。

 自分の知っている予定を脳内に思い浮かべる。

 人形のこともあるから、暫くは暮さんが同行してくれることになっている。

 暮さんにシノハラさんへの連絡をお願いするのは気が引けるし、2人を会わせると落ち着いて相談していられなくなりそうだ。

 どうしたものか、と思いつつ、サニヤとリアにお菓子を振舞って隣の部屋へ帰した後、自室のバスタブにお湯を入れていたら、1つの案が思いついた。


 そうだ、今、シノハラさんの居る場所に飛べばいいんじゃない?


 サニヤとリアには、ちゃんと散歩してくると伝えておけば大丈夫だろう。

 良さんも、まさか、僕がさっきの今で出かけるとは思わないだろうし。

 我ながら名案だな、と浮き浮きとシノハラさんの現在地を能力スキルで捜索する。

 んー、この方角は、アルクスアっぽいな。

 貿易港の方角だ。

 ウロウロと動き回っている感覚があるけれど、走り回っている感じではなので夜の街でも散歩しているのだろうか。


 なら、お邪魔しても平気かな。


 僕はそう安直に考えて入れかけていたお湯を止めて直ぐに行動へ移した。

 後になって、駄目元でも思念通話出来ないか挑戦してから瞬間移動テレポートすればよかったと後悔することになった。


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