五十三.見つからないなら探そう
「うっひょーー!!」
何進の断末魔は宮殿の城外まで響き渡った。
((あっ!今の叫び声は何進将軍!・・・ってことはやっぱり罠だったのか・・・やったぜ!))
青鎖門の外から中の様子を窺っていた諸大臣たちは何進が殺されたことがわかり喜んだ。
もうこれで何進の我儘につき合わされなくて済むと思ったのか、諸大臣たちの顔は晴れ晴れとしていた。
喜んでいる諸大臣たちに対して、十常侍のメンバーである趙忠と郭勝が城門の上に姿を現し、諸大臣を退けるべく演説を始めた。
「諸大臣方よ!何進は謀反の罪により我らが」
「今の叫び声は何進将軍だ!くっそーー!十常侍たちめーー!許さんぞーー!!(棒)」
「えっ?ちょっと?諸大臣方よ!落ち着いて我らの話を聞くが」
「ゴミ虫どもの話など聞く耳持たず!漢王朝の忠臣である何進将軍を暗殺するとは卑怯千万!許すまじ!十常侍覚悟せよ!!(棒)」
何進の腹心であった袁紹はわざとらしい怒りの声を上げ、全軍に宮殿突入の号令を下した。
「皆の者!何進将軍の弔い合戦だ!全軍突撃!!」
「「おーーー!!」」
何進の死体を直接見たわけでもないのに、諸大臣たちは何進が死んだと決めつけ突撃を開始した。
何進が死ねば諸大臣連合は解散すると思っていた十常侍たちは驚き慌てふためいた。
「こ、こんなはずでは!何進が死ねば奴らは自然と瓦解すると思っていたのに!なんということだ!」
「えぇい!グチグチと今さら後悔してもしかたあるまい!帝を連れて宮殿から脱出するのだ!」
十常侍の首領である張譲と段珪は新帝(=弁皇子)と帝の弟にあたる陳留王(=協皇子)の2名を引き連れ、馬車を走らせ宮殿から脱出したのであった。
2人を除いた他の十常侍たちは諸大臣たちの獲物の餌食となり、全員虐殺された。
「天に代わってお仕置きだ~!!」
「あいや~~!やられたアル!!」
彼らは首をはねられ、手足をバラバラにされ、死体は湖に放り投げられた。
悪政に次ぐ悪政を敷いた彼らの最期は残虐極まりない殺され方であった。
十常侍を成敗した諸大臣たちは次いで新帝と陳留王、何后の3名の捜索を始めた。
何后たちを見つけて保護しないと、諸大臣たちが反逆者扱いとなってしまうので彼らは必死に何后たちを探した。
何后は脱出に遅れたのか無事に保護することが出来たが、新帝と陳留王の2名を見つけることが出来なかった。
「!?新帝と陳留王の2名がおられぬ!それに張譲と段珪がいないとなると・・・マズイ!」
曹操は他の将たちよりいち早く彼らが宮殿から居なくなったことを察知し、幼馴染の袁紹にそれを報告した。
「袁紹よ!張譲と段珪が、新帝と陳留王の2名を連れて宮殿を脱出したぞ!」
「なにっ!それはマズイ!このままでは十常侍ではなく我らが逆賊扱いされてしまう!」
「わかっている!急ぎ奴らを探すよう指示を出すのだ!」
「心得た!!」
袁紹は諸大臣一同に事態を告げ、城外にて帝たちを探すよう命令を下した。




