百三十七.襄陽の戦い その一
「皆恐れるなーーー!勇猛果敢に攻め入るのだ!!」
「「うっしゃーーー!!」」
孫策は父の本軍よりも先に鄧城流域の沿岸部に着いていた。
そして今、彼はわずかな軍船を率いて敵と戦っているのだが、陸上より放たれる無数の矢にて、敵に近づくことが出来ずにいた。
劉表は孫堅軍が攻めてくるのを事前に察知していたため、沿岸に防備を固めていたのだ。
そして、その第一線の大将は江夏城の城主『黄祖』であった。
彼はよく守り、孫策を全く寄せ付けなかった。
諦めずに勇猛果敢に攻める孫策隊であったが、やはり多勢に無勢。
いくら頑張っても彼らは全く敵に近づけなかった。
(くそーーー!やはり数が少なすぎたか!攻めきれない!!)
初陣ということで気持ちが急く孫策であったが、彼は状況を良く把握し、今自分が出来る最善の一手を打った。
(・・・落ち着け。落ち着くんだ。ここは少し引いて、本軍と合流するのが得策だ。)
孫策は自分の非を認め、部下たちに号令を下し、孫策隊は敵の矢が届かぬ距離まで下がり、本軍が来るのを待つことにした。
単純かつ出来て当然の一手であったが、これにより孫策隊の被害は最小限に止めることが出来た。
矢が届かぬ距離まで孫策隊が下がると、ちょうどそれに合わせたように本軍が到着した。
「孫策!早まるな!本軍に合流するのだ!!」
「合点です!父上!!」
孫堅の小舟を使った伝令により、孫策隊は本軍へと合流した。
その後、本軍は船陣を布き、戦いの準備を整え始めた。
各楼船にいる指揮官の元、船に備え付けられている楯(=木の盾)の陰に弩と射手を配備して、孫堅軍は戦闘態勢を整えた。
※楼船とは、船上の周囲に矢石を防ぐ楯が並べてある大型の船のことです。
良くわからない人は映画『レッドクリフ』を見よう!!
「準備は出来たな!・・・よしっ!進め!!」
「「行く行く行っちゃうよ~!!」」
各楼船は白波を上げながら敵のいる陸へと迫った。
弩より矢を放ちながら陸へと近づく楼船集団。
そして、ある程度まで近づくと、各楼船より小舟を降ろし、上陸部隊をそれに乗せた。
「上陸部隊!上陸開始!!」
「「了解であります!」」
合図の銅鑼とともに、上陸部隊を乗せた無数の小舟は敵のいる陸に向かい進み始めた。
しかし、ここで敵の黄祖は見事な采配を見せる。
「慌てるな!十分に近づかせろ!それまで矢を放つな!!」
近づく小舟に動じることなく指示を下す黄祖。
そして、十分に矢が届く距離まで小舟が近づいたのを確認した黄祖は射撃命令を下した。
「よしっ!今だ!撃て撃て撃て~い!撃ち続けろ!!」
黄祖の号令と共に黄祖軍は無数の小舟に矢の嵐を浴びせた。
陸上に組んである数多くの櫓の上から、そして岸に並べていた楯と土塁の陰より矢を放ち続けた。
その矢の数は凄まじく、日の光を遮るほどのモノであった。
「うひゃーーー!矢だ!とんでもない量の矢が飛んでくるううううう!」
「矢だ!矢だ!矢だ!矢だ!嫌だーーー!!・・・なんちゃって!」
「刺さる。刺さる。見事に刺さる。ほら、この通り。私の胸に刺さってしまった。あはははは!・・・無念。」
上陸部隊の乗せた小舟に向かい、凄まじい数の矢が飛んでいき、乗っている兵たちを次々と射殺した。
その様子を見た孫堅は「こりゃいかん!予想以上の激しい攻撃!まいっちゃ~う!!」と、慌てて上陸部隊に引き揚げ命令を下した。
そして、上陸部隊の引き揚げに成功すると、矢の届かぬ距離まで軍を退却させたのであった。




